日本滑り軸受標準化協議会(PBSA)は6月16日、東京都千代田区のTKP 東京駅セントラルカンファレンスセンターで「2022年度 第1回総会(通算 第35回総会)」をハイブリッド形式(集合&ウェブ配信)により開催した。
当日は、開会の挨拶に立った林 洋一郎 会長(オイレス工業)が、「本総会は、コロナ禍にあって2年半ぶりのリアル開催となる。中国のゼロコロナ政策やウクライナ情勢など今後の経済に与える影響は計り知れず未だ過渡期にあるといえる厳しい状況が続いているが、状況を注視しながら、日本機械学会ISO/TC123平軸受国内委員会の標準化活動をできる限り支援できるよう、取組み方・進め方について熟慮していきたい。今回のリアル開催のように対面での情報交流は非常に重要で、いろいろな切り口で意見を交わすことのできる重要な機会である懇親会も早い時期に復活させられればと考えている。すべり軸受メーカーとそのユーザー企業、大学・研究機関のアカデミアという三者で育んできた当会の交流を維持しつつ、それぞれにメリットのある標準化作業を進めるとともに、引き続き、特別講演や懇親会などを通じて、標準化以外の活動・情報交換も拡充していきたい」と述べた。
続いて、日本機械学会ISO/TC123 平軸受国内委員会 森下 信 委員長(横浜国立大学 名誉教授)が、「引き続き、PBSAから標準化に関する提案をいただき、それらを積極的に取り入れ規格制定につなげていく流れを整備していく。当委員会としては今後も、ISO/TC123国際会議の場において、日本としての立場を明確にするための活動支援をいただいている責任をきちんと果たしていく」と語った。
総会ではまず、日本機械学会ISO/TC123平軸受国内委員会の2021年度の活動報告と2022年度の活動計画について、国内幹事の橋爪剛氏(オイレス工業)から報告がなされた。2021年度の活動計画としては、新規規格制定議案である①発熱・変形を考慮した軸受計算技術の国際標準化、②回転機械の安定問題に関する国際標準化、③MoS2を応用した表面改質技術の国際標準化、④DLCを応用した表面改質技術の国際標準化に関する進捗状況などが報告された。また、2022年度の活動計画として、省エネルギー等に関する国際標準の獲得・普及促進事業委託の1テーマである「環境配慮型の水潤滑用軸受材料に関する国際標準化」への取組みや、本年10月あるいは11月にフランスで開催を予定しているTC123国際会議への参加について報告した。
続いてPBSAの2021年度の活動報告と2022年度の活動計画について、PBSAでは会計を務める橋爪氏より報告がなされ、2022年度の活動計画として、第2回総会を来年3月に開催し理事会を必要に応じて開催する予定のほか、本年10月~11月にフランス・ポアティエで開催予定のISO/TC123国際会議の支援や、日本機械学会ISO/TC123平軸受国内委員会活動の支援、PBSAおよび同会員に寄与する講演会・研究・調査などの実施、標準化作業を円滑に進めるための会員が活用しやすいホームページの更新・整備、さらには新規規格開発のために参考となる他TC規格などの購入などの予定について報告された。
総会終了後には、「医療機器マテリアル」と題して東京医科歯科大学 塙 隆夫 教授による特別講演がなされた。講演では、人工股関節を中心とした材料・表面改質技術について紹介。人工股関節のコバルト・クロム合金製あるいはセラミックス製の骨頭と超高分子量ポリエチレン製のライナーとの摩擦に伴う摩耗を抑制する表面改質技術や、人工股関節のステムと大腿骨をセメントレスで結合させるプラズマ溶射などの表面改質技術などが紹介された。