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bmt主催の講演会・交流会「カーボンニュートラル実現に向けた歯車システムとトライボロジー」が開催

 メカニカル・テック社『bmt ベアリング&モーション・テック』編集部は3月4日、東京都千代田区のTKPガーデンシティPREMIUM東京駅丸の内中央で、「カーボンニュートラル実現に向けた歯車システムとトライボロジー」を開催した。コーディネーターは東京理科大学 佐々木信也教授で、当日は歯車システムの関係する電動車や建設機械・鉱山機械といった領域でのトライボロジー課題と取り組みについて、以下のとおり4件の講演が行われ、また、講演の合間にトライボロジー関連の測定評価機器メーカーによる2件のショートプレゼンがなされた。

bmt講演会 講演会のようす bmt ベアリング&モーション・テック
講演会のようす

 

講演1「総説:カーボンニュートラル実現に向けた歯車システムとトライボロジー」佐々木信也氏(東京理科大学)

 トライボロジーは摩擦損失の低減や耐摩耗性向上という観点から機器の省エネや環境負荷低減に寄与してきたが、カーボンニュートラル(CN)社会実現に向けて環境性能の向上につながるトライボロジーの役割に期待が寄せられている。CN実現に期待される電気自動車(EV)の話題を取り上げ、システム小型化のためにモーターの高速回転が求められるe-Axleの減速機の課題として、高速回転に伴うギヤや軸受のピッチング寿命低下への対策とともに摩擦損失の低減による効率向上が求められていると説明。この課題を踏まえて実施したマイクロピッチング試験や電圧印加試験などの評価結果やメカニズム解明に向けた取り組みなどについて述べた。現在EV化は階段の踊り場にあるとされるが、この先もHEVの普及やEVの低価格化に向けて関連するトライボロジー技術のさらなる向上が重要であり、特にギヤトレインにおいてはこれまでにないしゅう動環境に対応し基礎メカニズムの理解をもとにした合理的かつ効率的な技術開発が必要、と総括した。

bmt講演会 総説講演を行う佐々木氏 bmt ベアリング&モーション・テック
総説講演を行う佐々木氏

 

講演2「コマツリマンビジネスの状況と今後の展望」櫻井直之氏(コマツ)

 同社の主要な建設機械・鉱山機械・部品・アタッチメントなどの主要製品について紹介した後、カーボンニュートラルに向けた製品開発ロードマップを示しつつ、リマン事業は、ユーザーのライフサイクルコスト低減、サプライチェーンの収益向上、離宮環境に対しては省資源・CO2低減、コマツにとっては価値向上につながる、循環型社会実現のための共創であると説明。同社のリマンは、鉱山機械のエンジン・トランスミッション・モータ等を対象とし、新品同等の高い品質で安価に再生し、プロダクトサポートの一環として低いライフサイクルコスト×高い機械稼働率を実現するとして、加修部品・再利用部品・新品部品の組み合わせで組み立されることを特徴とする同社リマンプロセスの事例や、摩耗などの損傷部を溶射肉盛によって再生する加修技術、リマン新品質の管理技術、さらにはリマンコンポを用いた新車生産など今後の展開について紹介した。

bmt講演会 講演する櫻井氏 bmt ベアリング&モーション・テック
講演する櫻井氏

 

ショートプレゼン1「PI-1000の紹介―油中粒子計測器―」阿部泰尚氏(東陽テクニカ)

 潤滑油中の摩耗紛の大きさと量を高精度に捉えることで軸受やギヤなどのしゅう動部品や摩耗状態を把握し交換時期を最適化できる自社開発の油中粒子計測器「PI-1000」を紹介。PI-1000は、細かな粒子および非磁性の粒子でも測定可能な「レーザー遮光法」を採用、演算処理機能の内臓により、常時オイル粘度によって変化する流速を計算しつつ、摩耗粉の油中の落下時間によって摩耗粉の粒径をその場で演算する。振動や熱、濁りといった外的要因に左右されず、μmレベルで粒子の大きさ、数を測定できる。さらに、独自の減圧による脱泡手法を用いて、摩耗粉と誤認される可能性のある油中の泡の誤検知をなくし数μm単位の高い精度で測定が可能。潤滑油中に放出される粒子の大きさと数によって、部品の状態を判断することができ、機械全体の性能劣化を早めに把握できる。

bmt講演会 ショートプレゼンを行う阿部氏 bmt ベアリング&モーション・テック
ショートプレゼンを行う阿部氏

ショートプレゼン2「カーボンニュートラル実現に向けた歯車システムとトライボロジー試験機」國井卓人氏(Rtec-Instruments)

 歯車システムのトライボロジー試験では、ギヤの実際の動き(転がり+すべりの複雑な相互作用)をどれくらい再現できるかが課題となる。こうした歯車のトライボロジー試験に関して、同社の多機能トライボロジー試験機「MFT-5000」および「MFT-2000」にミニトラクションモジュールを付加した試験機や、二円筒試験機「TRT-3000」や三円筒試験機「MPT-3000」などを紹介。二円筒試験機・三円筒試験機による歯車試験の代替ソリューションを紹介した。

bmt講演会 ショートプレゼンを行う國井氏    講演3「E-Axleにおける要求 bmt ベアリング&モーション・テック
ショートプレゼンを行う國井氏

E-Axleにおける要求性能と試験・評価技術~当社のE-Axleの取り組み」花野雅昭氏(ニデック)

 カーボンニュートラルへの高まり、EVの普及によりモビリティ産業が国際的に水平分業化すると予想されており、新技術への挑戦と生産実績により低コストで競争力あるトラクションモーターの開発、環境対応と安定供給を実現する「磁石フリー:省資源(レアアースフリー)のトラクションモーターの開発が必須。ここでは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) のグリーンイノベーション基金事業/次世代蓄電池・次世代モーターの開発について紹介、①低コスト②省資源③高性能を具現化する3万rpmを超える超高速回転を実現した誘導モーターを開発したことを報告した。また評価装置として、高速回転(3万rpm)での試験を可能とするギヤベンチと、高速回転(3万6000rpm)での試験を可能とするモーターベンチをニデックグループ(ニデックアドバンステクノロジー)内で作製していることを紹介した。

bmt講演会 講演する花野氏 bmt ベアリング&モーション・テック
講演する花野氏

 

講演4「電動車用超低粘度トランスアクスルフルードの開発」白石 有 氏(トヨタ自動車)

 E-Axleユニットの潤滑油にはギヤ等の潤滑とモーターの冷却の両機能が求められる。潤滑油は高速で回転するモーターやギヤに直接供給されるため、オイル起因(粘度依存)の損失が大きな割合を占める。これに対し潤滑油を低粘度化することで、トランスアクスルでの損失を大幅に低減することが可能となる。低粘度化のターゲットとして、鉱油で、引火点がモーター最高温度以上の範囲で低粘度化の限界に挑戦、他社OEMを凌駕する超低粘度な電動車オイルを開発した。引火点限界までの低粘度化を実現、従来油同等以上の潤滑性と絶縁性を両立した新電動車用潤滑油を完成した。同油により、ATF比で電費効果:1.2%以上、またモーターの冷却性向上で電動車ユニットに貢献。同油はまた、添加剤処方の改良・油膜形成ポリマーの配合により、低粘度にもかかわらず従来ATF以上の信頼性(耐疲労・耐焼付き・耐疲労)を実現している。本技術は今後のトヨタにおける電動化技術の柱であり、CN(CO2削減)に大きく貢献するもの、と総括した。
 

bmt講演会 講演する白石氏 bmt ベアリング&モーション・テック
講演する白石氏

 

 講演会終了後は、講師と参加者による交流会が催され、トライボロジー分野の横断的な情報交換と人的交流が、和やかながら活発に執り行われた。