製鉄所や製紙工場などの過酷な環境下で使われる軸受は定期的な保全作業が不可欠だが、労働力不足にあって保全に携わる人員も十分ではない。
こうした中、木村洋行では、軸からの引き抜き不要でダウンタイムを削減できるTimkenの「二つ割れローラーベアリング」や、ミスアライメントと熱膨張の両方に対応するTimkenの連続鋳造機向け「ADAPTベアリング」など、過酷な環境下で使用される軸受の保守作業を軽減するソリューションの提案を強化している。ここでは、これらの軸受技術について、その一端を紹介する。
軸からの引き抜きが不要でダウンタイム削減に寄与する二つ割れローラーベアリング
製鉄や製紙などの過酷な環境下では、巨大な回転軸を支える重要な軸受のハウジング「プランマブロック」が多用される。プランマブロック自体の分解は二つ割れ構造のため簡易ながら、軸受の交換では、軸から引き抜き、さらに軸受周辺の駆動機器の取り外しなどが必要になる。
これに対しTimkenの「二つ割れローラーベアリング」(図1)は内輪、外輪、保持器を含む軸受構成部品すべてが二つ割れ構造のため、軸から軸受を引き抜くことなく、また軸受周辺の駆動機器の取り外しやシャフトの吊り上げ作業を必要とせずに、軸受を交換できる。プランマブロックなどのハウジング付きベアリングと置き換え可能で、通常の一体型ベアリングユニットに比べ交換・保守時間を最大で90%短縮可能なため、交換時間の短縮による設備のダウンタイム削減によって逸失利益を低減できる。


斜め分割構造の「ペデスタルベース」(図2)により、シャフトの下部へ滑り込ませて交換できるため、シャフトを吊り上げることなく、既存のプランマブロックからの置き換えが可能となっている。

また、ハウジングの球面で調心し調心時に隙間が生じないため、一般的なプランマブロックよりも高いシール性能を有するほか、シールの種類が豊富で仕様・環境に沿った適切なシールの選定が可能となっている。クリーンな環境向けのフェルトシールから、水中での使用に適した防水シール、セメント工場のようなアグレッシブな環境下での使用に耐えるケブラー製シールも用意されている。
製鉄所や製紙工場、セメント工場、砂糖精製工場、製粉工場、発電所、埠頭設備、水処理場、船舶などで採用実績を持つが、「トラップド・アプリケーション」と呼ばれるような、軸受が他の部品に挟まれて取り外しが困難な箇所などに最適な軸受技術となっている。
装置としてはコンベアやバケットエレベーター、スクリューコンベア、ファン、ブロアー、クレーン、クラッシャー、キルン、圧延機、連続鋳造機、大型モータ、船舶推進用シャフトなどの軸受で実績が多い。
木村洋行が2019年ごろの展示会で出展した際には来場者の反応が芳しくなかったのに対し、本年7月1日~3日に開催された「ものづくり ワールド [東京] 2026 機械要素技術展」(図3)で出展したところ、製鉄・製紙分野などを中心に多くの引き合いを得た。コロナ渦を経て、いよいよ労働力不足が顕在化し保守作業の軽減、ダウンタイム削減の要求が高まり、一体型ベアリングユニットに比べ耐荷重性は低くなるものの、従来の軸受がオーバースペックで使われている場合もあり耐久実働時間としては影響がないと見る。木村洋行ではすでに、水の侵入による軸受の腐食に伴う交換作業で課題を抱えていた下水道のポンプ向けなどで採用が決まっているという。
![木村洋行 製鉄・製紙向けティムケンベアリング 図3 第38回 ものづくり ワールド [東京] 2026 機械要素技術展」での展示のようす bmt ベアリング&モーション・テック](/sites/bearingmotion.mechanical-tech.jp/files/inline-images/%E5%9B%B3%EF%BC%93.jpg)
ミスアライメントと熱膨張に対応する連続鋳造機向けADAPTベアリング
一方、高温の鉄を扱いロールに溶鋼の高荷重がかかる製鉄所の連鋳機では、設備の安定稼働と鋳片の品質に関わるミスアライメントへの対応に加えて、熱膨張による摩擦トルク増大、さらには焼付きへの対策が求められる。
これに対しTimkenの「ADAPTベアリング」(図4)は、内輪が円筒ころの構造を、外輪が自動調心ころの構造を有している。内輪で熱膨張による軸方向の移動を逃し、外輪の球面構造で軸の傾きを吸収する(±6mmの熱膨張による軸方向のずれと、±0.5°のミスアライメントを許容)。
また、ころの脱落を避けるため、ころと保持器が一体型の設計で、ISOの自動調心軸受とのサイズ互換性を有する。
高温・高荷重環境下での連続運転が必要な場合や、軸の熱膨張やずれが発生する装置、取り付け・交換作業を簡易化したい場合、メンテナンス人員不足の場合といった使用環境でメリットを発揮、製鉄所では連続鋳造機のサポートロール支持部などの、製紙工場では抄紙機のプレスパート・ドライヤーパートなどの自由側軸受として多用されている。


内輪および外輪の構造(下)

技術商社・木村洋行による最適ソリューションの提供
木村洋行は技術商社として、TIMKENなどメーカーとの情報交換を密に行い、定期的にトレーニングを受けるなど、製品・技術・アプリケーション情報のアップデートを常に実施している。例えば、二つ割れローラーベアリングを製造するTimken英国ウルヴァーハンプトン工場でのトレーニングでは、二つ割れローラーベアリングの製造方法や検査項目を学び、重点的に見ているポイントから、訴求すべき製品の特長を把握した。二つ割れとするためのカット方法でも特殊な治具を使って高精度にカットされているほか、ユーザーが懸念する割れ目の段差に関しても、割れ目を斜めにカットすることで段差の影響を限りなく低減していて、この部分の断面検査が徹底的に行われていることなどを理解することで、ユーザーの懸念の払拭につなげている。
木村洋行では引き続き、製品・技術・アプリケーションに関する知見とノウハウを蓄積しつつ、ユーザーとの対話の中でニーズを的確にとらえることで、ユーザーのアプリケーションに最適なソリューションを提供していく。

