日本精工(NSK)は、必要な時だけ素早く油圧を生み出す油圧発生装置「電動ハイドロブースタ」を新開発した。開発品は、ボールねじを用いて油圧を発生させる業界初の方式を採用することで、従来の油圧発生装置で課題だった省エネと高速動作の両立を実現した。工作機械・油圧プレス機・産業用ロボットなどの省エネ化と生産性向上に貢献する。NSKが長年培ってきたボールねじ技術によって開発した高速性能と長寿命を両立したボールねじを適用することにより、高速動作が可能な電動の油圧発生機構を実現したもの。
NSKでは、本開発品を本年10月26日~ 10月31日に東京ビッグサイトで開催される「JIMTOF2026(第33回日本国際工作機械見本市)」に出展、2027年度の市場投入を目指す。
ボールねじ駆動の省エネ・高速動作の油圧発生装置「電動ハイドロブースタ」
一般的に油圧システムは、油圧を発生させる油圧発生装置と、油圧シリンダなど油圧を力に変換する装置の二つで構成、大きな推力が必要な工作機械・油圧プレス機・産業用ロボットなどで使用されている。
製造業では、カーボンニュートラル実現に向けて設備の省エネルギー化が求められており、これまで油圧発生装置として用いられてきた歯車などを回転させて油を加圧する油圧ポンプや、圧縮空気でピストンを押して油を加圧する空圧式油圧発生装置などの装置では、省エネと高速動作の両立が課題となっていた。油圧ポンプは常に回転させ続けることが多く動作待機中も電力を消費する一方、空圧式油圧発生装置は空気圧を利用するため油圧が発生するまでに時間がかかるといった状況から、省エネと高速動作を両立した油圧発生装置が求められていた。
油圧発生装置の比較
開発品は、ボールねじを用いてモータの回転運動を直線運動に変換し、その力で油を加圧して油圧を生み出す業界初の方式を採用、この油圧を配管経由で油圧シリンダに送ることで、油圧シリンダが推力を発生させ、省エネと高速動作の両立を実現する。
ボールねじ駆動により油圧を発生させる仕組み
製品の特長は以下のとおり。
1.消費電力を大幅に削減:必要な時だけ油圧を発生させることで、従来の油圧ポンプと比較して消費電力を大幅に削減。結果、設備全体の省エネルギー化とCO₂排出量削減に貢献する。工作機械の主軸に保持されている工具を取り外す役割を持つ「ツールアンクランプ機構」を例にすると、油圧ポンプを使用した場合は、ツールアンクランプ機構が停止している間も運転を続けるのに対して、本開発品を使用した場合は、油圧が必要な時だけ作動するため、ある試算では電力消費を約89%削減できる(工作機械1 台あたり年間約815kg-CO₂の排出削減効果)。
ツールアンクランプ機構の仕組み
2.高速動作による生産性向上:応答性に優れたボールねじで駆動することで素早く油圧を供給できるため、設備の生産性向上を実現。従来の空圧式油圧発生装置では空気の圧力が油圧に変換されるまでに時間を要するのに対し、本開発品はモータとボールねじで直接油圧を発生させるため、より素早く油圧を供給できる。工作機械のツールアンクランプ機構を例にすると、本開発品を使用した場合、空圧式油圧発生装置では約1 秒かかる油圧の発生・作動時間を約0.2 秒に短縮できる場合もあり、その結果、ツール(工具)の交換時間を短縮できる。
3.コンパクト:一般的な油圧ポンプよりもコンパクトなため、設備の省スペース化に貢献。設置スペースが限られる、油圧・空圧配管を設置しにくいなど、従来は油圧の導入が難しかった装置にも搭載できるようになり、油圧の用途拡大につながる。
本開発品は、NSKが長年培ってきたボールねじ技術によって開発した高速性能と長寿命を両立したボールねじを適用することにより、高速動作が可能な電動の油圧発生機構を実現した。