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SEMICON Japan 2024

 

NTN、自然エネルギー商品事業を推進、2027年度に売上高300億円を目指す

 NTNは先ごろ、貨物輸送用コンテナに風力・水力・太陽光の3種類の自然エネルギーによる発電装置と蓄電池を格納し、短時間で発電・電力供給が行える次世代のコンテナ収納移動型の独立電源「N3 エヌキューブ」を開発、本年7月24日~26日に東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された「第6回事前防災・減災対策推進展」で披露した。

 N3 エヌキューブは貨物輸送用コンテナに装置一式をコンパクトに収納できるため、災害時に電力供給が困難となった被災地等に複数の手段(トラック・貨物船・ヘリコプターなど)で移動し、迅速に少人数で設置できるのが特長だが、今回の展示ではコンテナ内に各種家電製品を設置し発電した電力を用いた災害時の活用方法を紹介した。

「第6回事前防災・減災対策推進展」における出展のようす「第6回事前防災・減災対策推進展」における出展のようす

 同社では2016年に、災害時に停電が発生した場合にも風力と太陽光という自然エネルギーで発電し、電力を供給できる独立電源「NTNグリーンパワーステーション」を開発、LEDライトによる明かりを提供するほか、AC電源やUSB端子も備えているためスマートフォンやラジオなどの情報機器の電源としても活躍している。

 自然エネルギー商品事業を強化・拡大する同社に、N3 エヌキューブおよびNTNグリーンパワーステーションといった商品の概要と事業の現状、今後の展開などについて聞いた。

N3 エヌキューブ:機動性により防災対策を強化


 今回開発したN3 エヌキューブは、同社がこれまで開発してきた自然エネルギー商品を組み合わせただけでなく、コンテナ利用で様々な輸送形態に対応することで「機動性」を加え、停電した被災地等に容易に移動・設置、電力供給を行うことを可能にしている。

商品の展開例商品の展開例

 6月から受注を開始している12ftコンテナを活用した小型N3 エヌキューブでは、2名×1時間で設置・展開、発電を開始できる。近年、大規模災害が頻発しているが、こうした非常時での速やかな電力確保が可能になる。発電装置は、風車0.5kW、水車1.0kW、太陽光0.9kW、蓄電池8.6kWh(標準仕様の場合)で、USBポートを利用したスマートフォン等の充電(2000台/日)や小型家電製品(AC100V対応)の利用が可能だ。

 同社ではN3 エヌキューブについて、防災・防犯向けに自治体、学校、病院をターゲットとして導入の提案を進めている。

NTNグリーンパワーステーション:通信機能の拡張で防災・減災に取り組み

 一方、NTNグリーンパワーステーションは、昼間は風力と太陽光、夜間は風力で発電できるハイブリッド設計によって、電力供給の途絶えた災害時にLED自動点灯による灯りと電源(携帯電話5台の同時充電が可能)を供給できる。独自の翼形状と長年蓄積したベアリング技術の融合によって発電中の音が小さいため、夜間でも周囲の住宅に迷惑をかけることがない。

NTNグリーンパワーステーションの構成NTNグリーンパワーステーションの構成

 太陽が出ず、風のない状態でも約1週間は蓄電した電力で灯りを確保できるが、個別の要望から一層の発電能力の向上や大型化に取り組んでいる。NTNグリーンパワーステーションおよびN3 エヌキューブの風力発電装置や水力発電装置の回転支持部には軸受を使用しているが、発電能力向上に際しての軸受技術の独自開発などは現時点では行っておらず、使用に当たっては軸受の事業部と協業して既存の軸受製品から選定を行っているという。

 発売開始からすでに150機以上を設置、当初は一般企業での導入が多かったが、現在は自治体問い合わせが増えていることから、同社では防災・減災への取組みとして自治体への提案活動にも注力している。

 NTNグリーンパワーステーションの機能拡張では、LED照明のほか、見守りカメラ、Wi-Fi搭載の要望が多く、個々に対応を行っているが、今後は防災・減災の観点から通信機能を拡張していくため、大阪大学をはじめ関連団体との共同研究に参画している。

 たとえば、大阪大学が産官社学連携で取り組む「ITを用いた防災・見守り・観光に関する仕組みづくりの共同研究」の実証試験機として、NTNグリーンパワーステーションが採用。NTNグリーンパワーステーションに防犯カメラやWi-Fi通信機器を取り付けた実証試験機を用いて、災害時の情報収集・発信や、日常における住民の安全確認および観光情報の発信を行うものだ。

自然エネルギー商品事業の増強で、さらなる持続的成長へ

 自然エネルギー商品事業について同社では、2027年度の売上目標を300億円としてビジネスの拡大を進めていく。防災・防犯向けに今回小型N3 エヌキューブを投入したが、さらなる商品展開として20ftコンテナを活用した大型N3 エヌキューブの開発を進めている。大型N3 エヌキューブでは災害時の被災地支援に加えて、未電化地域や離島などの電力インフラの脆弱な地域へ展開することで広がると考えている。

 NTNは、2018年3月に創業100周年を迎えたが、次の100年も持続的な成長を続けていくために、これまでに培った技術や外部との連携を通じた新領域への展開を進めており、自然エネルギー事業はそのうちの一つと位置付けている。今後大きな成長が見込まれる自然エネルギー分野で、地球に優しい商品を提供することで、低炭素化社会の実現に貢献するとともに、地域の自然エネルギー活用のニーズに対応していく考えだ。