ジェイテクトは、ハイブリッド車(HV・PHV)や電動車(EV・FCV)の変速機や、エンジン車の無段変速機(CVT)などで主に使用される「クリープ摩耗抑制玉軸受」を開発した。開発品は、変速機のハウジング内で起こる軸受の「クリープ」によるハウジングの摩耗を抑制、次世代自動車の信頼性と快適性の向上に貢献する。国内外の完成車・変速機メーカーなどに販売を展開していく。
軸受のクリープとは、内輪もしくは外輪が運転中に軸またはハウジングに対して回転する現象をいう。この現象は、摩耗、変色、かじりなど様々な軸受損傷が起きる原因となる。
クリープが発生すると、軸受とハウジングが擦れ合うことでその双方が摩耗して軸の芯ずれや傾きを引き起こす。その結果、ギヤのかみ合い不良による変速機の機能低下や異音などの不具合が発生する恐れがある。
従来は、クリープによる不具合を避けるため、軸受の外輪を厚くしたり、固体潤滑皮膜を使用するといった策も取られてきたが、どちらもサイズ・重量やコスト面での課題があり、最適な製品の開発が必要だった。
こうした背景のもと、ジェイテクトでは、2016年に「新構造のアンチクリープ玉軸受」を開発した。これは、外輪の外径中央部に円周方向の溝を作ることで、「ひずみクリープ」によるハウジング摩耗の抑制に貢献する技術。今回は、この円周溝に加えて、外輪全体に特殊皮膜を施すことで、「連れ回りクリープ」によるハウジング摩耗に対しても効果のある軸受の開発に成功したもの。
開発品は、従来の外輪厚肉品や固体潤滑皮膜などのクリープ対策品と同等のハウジング摩耗抑制効果を実現しつつ,軽量で低価格であることから、自動車用だけでなく、クリープによる摩耗が問題となる様々な産業機械への応用が可能となっている。