NTNは、二輪車のスイングアーム用「ポリルーブ針状ころ軸受」の量産を拡大する。固形潤滑剤「ポリルーブ」の適用によるメンテナンスフリー(グリース給脂不要)の実現や、組み付け時の取り扱い性に加え、二輪車の設計の多様化に対応する耐高温性などが評価され、欧米メーカーを中心に採用が拡大しているのに対応するもの。
二輪車のスイングアームは、タイヤ(車軸)と車体(フレーム)をつなぐリアサスペンションの部品の一つで、走行時に路面からの衝撃やタイヤの振動に応じてフレームの連結部を軸に上下に動くことで、衝撃や振動を吸収し、二輪車の安全性や快適性を支える役割を果たす。
フレームの連結部に使用される軸受には耐荷重性と小型化が求められており、一般的にはシェル形針状ころ軸受(総ころ形)が使用されるが、この軸受は定期的なグリース給脂や、ハウジングや軸への給脂穴の設置を必要とするほか、軸受の取り付け時にころが外れやすいなどの課題があった。
今回同社が量産を拡大する針状ころ軸受は、潤滑剤に固形の「ポリルーブ」を用いた商品。ポリルーブは独自に開発した、グリースと樹脂を加熱・冷却処理して固めた固形潤滑剤で、軸受使用時に生じる熱や遠心力を用いて、潤滑剤の油分を軸受に供給する。強い振動や遠心力、水分などが伴う環境でも軸受から漏れにくく、長期にわたって優れた潤滑性能を発揮するため、グリースの給脂および給脂穴の設置が不要となる。また、ポリルーブは、ころを保持する機能も持つため、組み付け時にころが外れる心配がない。組み付け時のグリース塗布も必要なく、組み付け時の取り扱いが容易になる。
近年、二輪車の設計が多様化する中、マフラーとスイングアームの位置が近くなり、スイングアーム部が高温となることがある。メンテナンスフリーや優れた取り扱い性に加え、こうした高温環境に対応可能なポリルーブ商品もラインアップしていることなどが評価され、趣味性の高い中型・大型バイクを製造する欧米メーカーを中心に採用が拡大している。