メインコンテンツに移動
カーボンニュートラル実現に向けた歯車システムとトライボロジー

 

mst配信ニュース 表面改質&表面試験・評価の情報サイト

JAST自動車のトライボロジー研究会など4研究会が加賀で合同研究会

1週 ago
JAST自動車のトライボロジー研究会など4研究会が加賀で合同研究会

 日本トライボロジー学会(JAST)自動車のトライボロジー研究会(主査:豊田中央研究所・遠山 護氏)とJAST日本海トライボロジー研究会(主査:小松大学・粕谷素洋氏)、JAST機能性コーティングの最適設計技術研究会(主査:岐阜大学・上坂裕之氏)、東海トライボロジー研究会(会長:岐阜大学・上坂裕之氏)は3月14日、石川県加賀市の大同工業 本社工場/致遠館で「トライボロジー合同研究会 in 加賀温泉」を開催した。

開催のようす

 当日はまず、大同工業・新家啓史社長が開会の挨拶に立ち、「当社は1933年の創業以来90年以上にわたってトライボロジーを実践してきた会社で、〝大いなる目的のため、一致団結して高遠なる理想実現に努力すべし”という創業からの「大同致遠」の精神を実践しつつ、チェーンなど自社製品の摩擦を制御し耐久性や効率を高める技術を追求し、ユーザーの製品の省エネや環境負荷低減に寄与してきた。しかし一社でできることには限りがあるため、皆様といろいろな方面で意見交換をしながら、新しい価値の創造や理想の追求に愚直に取り組んでいきたい。本研究会を通じて、新たな知見や技術がさらに発展することを願う」と述べた。

挨拶する新家社長

 続いて、同社 総務部 広報チームの前田恭子氏が、同社のフィロソフィー(DID MUGENDAI)など会社の概要から、山中漆器の木地挽きろくろの技術から木製リム製造へと転換し、チェーン製造を手掛けていった事業の沿革について、さらには二輪・四輪チェーンなどモビリティ関連製品から、産業機械用チェーン・コンベヤシステム・バキューム搬送コンベヤなどの産業機械関連製品、いす式階段昇降機など福祉機器までの幅広い事業概要について紹介した。

会社紹介を行う前田氏

 その後、同社福田工場の塑性加工工場と四輪エンジンチェーン工場を見学した。塑性加工工場では、スプロケットなどの複雑・高精度な三次元形状をネットシェイプ化する「三次元プレス成形」とキー溝加工を高い面粗度・寸法精度で打ち抜きできる「精密せん断」を組み合わせた独自「ファインプレスフォーミング技術」を用いたプレス機などを見学。また、四輪エンジンチェーン工場では、エンジンタイミングチェーンのピン・ブッシュ・ローラー・内外プレートなど構成部品の成形、接合、研磨、熱処理から、組み立て、目視検査までの工程の見学がなされた。

福田工場での参加者の集合写真

 

塑性加工工場の見学風景

 工場見学後は、本社工場/致遠館に戻り、以下のとおり講演会が行われた。

 まずは、日本海トライボロジー研究会を代表して、新潟大学・月山陽介氏が「往復しゅう動試験機によるチェーングリースの潤滑特性評価」をテーマに話題提供を行った。往復しゅう動試験機を用いてピンとブッシュの摩擦挙動を再現し、グリース潤滑面におけるディンプルの影響を調査した結果、ディンプルによってサイクル初期の摩擦挙動が安定・低減する効果が得られ、その効果はグリースの粘度が高いときに顕著に見られた。ディンプル加工は、ピン・ブッシュ間のなじみ完了に時間を要しかつ高粘度グリースを使用したチェーンにおいて、高い効果を発揮する可能性があると結言した。

講演する月山氏

 また、東海トライボロジー研究会を代表して、大同工業・関 秀明氏が「チェーンとトライボロジー:幅広い産業を支える摩擦と摩耗技術」と題して、話題提供を行った。電動化の進展によって、モビリティ用チェーンにおいては、高速回転かつ給油条件が厳しい環境が想定され、また、速度の増加に伴うしゅう動発熱が大きくなるため潤滑不足や高温化、それらに伴う摩耗促進が懸念される。これに対し、発熱・摩耗抑制のための潤滑方法(潤滑位置の違いによる評価)や表面硬化処理の検討を行った。潤滑方法によって発熱低減や摩耗低減につながることを実験で確認したほか、同社独自開発のVCN(バナジウム炭窒化物)被膜が高速しゅう動時の発熱に対して十分な耐性を有することを確認した。

講演する関氏

 さらに、機能性コーティングの最適設計技術研究会を代表して、東京都市大学・崔 埈豪氏が「摩擦発電機のトライボロジー分野への応用」と題して、話題提供を行った。電子機器の普及に伴い多くのセンサとそれらを駆動するための電源が必要とされている。これに対してバッテリー不要のセンサを作製できる手法として、優れたトライボロジー特性を有するダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜を四フッ化エチレン樹脂(PTFE)とともに帯電材として用いた、高耐久性・高効率の摩擦帯電型ナノ発電機(TENG)を開発した。DLCベースの滑り型TENGを用いた滑り軸受の状態監視システムの事例を紹介し、滑り速度やミスアライメント、潤滑油の欠乏、潤滑油の挙動などが観察できるとした。

講演する崔氏

 最後に、自動車のトライボロジー研究会を代表して、名古屋工業大学・糸魚川文広氏が「表面プラズモン共鳴を利用した油膜圧力計測と添加剤吸着挙動観察」と題して、話題提供を行った。表面プラズモン共鳴を利用した手法は、高い界面選択性と感度(表面近傍のみの誘電率変化を感度よく計測することが可能)を利用して、潤滑膜の膜厚や密度の空間分布をin-situに可視化できる。接触面からの反射光強度の変化を捉え潤滑油密度の変化量を捉えることで、油膜圧力も測れるほか、高時間分解能計測が可能なため、しゅう動面の表面形状変化に対する圧力応答測定ができ、混合潤滑状態の圧力・油膜厚さの同時計測ができる。さらに、粗面のしゅう動による添加剤吸着膜の状態計測事例を紹介、真実接触部の抽出と摩擦係数の同時計測が可能とした。

 講演会終了後は、アパホテル加賀大聖寺駅前内「瑠璃」に移動し、技術交流会が和やかに行われた。

kat 2025年3月21日 (金曜日)
kat

表面技術協会、第76回通常総会・協会賞など各賞授与式を開催

3週 1日 ago
表面技術協会、第76回通常総会・協会賞など各賞授与式を開催

 表面技術協会( https://www.sfj.or.jp/ )は2月28日、東京都新宿区の工学院大学で「第76回通常総会および各賞授与式」を開催した。

 当日は第75期事業報告、会計報告が行われた後、第76期事業計画、収支予算について審議、満場一致で可決された。事業報告では、第149回講演大会(2024年3月5日~6日)は工学院大学八王子キャンパスで開催したこと、第150回講演大会(2024年9月12日~13日)は北見工業大学で開催したこと、同協会が開催したセミナーの合計参加者が276名であったこと、ISO/TC107第36回総会を11月19日~22日に島津製作所で開催し、本分野新規国際規格提案などについて活発な議論が行われたことなどを報告した。事業計画では、第151回講演大会を東京都市大学世田谷キャンパスで、第152回講演大会を福岡工業大学で開催すること、ISO/TC107からの提案事項の審議、温度環境制御下での樹脂めっきの密着力測定方法に関する国際標準化、女性の協会活動への参画促進を図ることなどを確認した。

 役員改選では、前期に引き続いて会長に平藤哲司氏(京都大学 名誉教授)、副会長に蒲生西谷美香氏(東洋大学 理工学部 教授)、辻 克之氏(太洋工作所 代表取締役社長)が再任。今期より新たに菅原博好氏(デンソー 材料技術部)、八重真治氏(兵庫県立大学 大学院工学研究科 教授)が副会長に選任された。

 理事を代表して挨拶に立った平藤会長は「現在、当協会は会員の減少と事務体制の課題について、協会のサステナビリティに対して心配になるような大きな課題を抱えている。これは我々に限らずだが、どなたも変わらないとならない時代になっている。当然、当協会も変わらないとならないため、その努力はしていくつもりだ。一方、当協会の果たすべき役割はこれまでと変わらない。産学官の非常に良い交流の場を提供することが一つの大きな使命であろうと思っている。そのためには活動のブラッシュアップが大切だ。委員会や部会の活動などをより良いものにしていく。そうした価値のあるものを提供していれば需要はあるだろう。今後とも当協会の価値を高めるような活動を理事一同で行っていくので皆様のご協力をお願いしたい」と述べた。

挨拶する平藤会長

 当日の席上では、「2025年度 表面技術協会 各賞授与式」が行われ、伊崎昌伸氏(豊橋技術科学大学 名誉教授)が業績「酸化物半導体層の電気化学的形成と太陽光エネルギー変換への応用に関する研究」で協会賞を受賞した。伊﨑氏は、酸化物半導体層の電気化学的形成と太陽光エネルギー変換に関し独創的および先駆的研究を展開し、優れた業績を挙げている。水溶液から酸化亜鉛層の電気化学的直接形成に世界で初めて成功した後、銅酸化物、銀酸化物、鉄酸化物、希土類酸化物層などの直接形成にも成功した。酸化物の電気化学形成反応機構を熱力学的に明らかにするとともに、異種酸化物の積層体やナノコンポジット半導体層の形成、電気化学不純物ドーピングへと展開し、酸化物形成のための電気化学反応機構を明らかにし、電気化学的製造技術を確立した。
 また、電気化学的に酸化物太陽電池を構築し、最高変換効率(当時)を達成するとともに、ナノ構造やバッファ層の導入により高効率化を図るとともに、複数の異種酸化物層を組み込んだインタースタック光電変換層を提案し、その有効性を実証した。さらに、Ni-Al合金めっき膜、マルテンサイトFe-C合金(鋼)めっき膜、ガラス基板上化学的Cu層形成技術、鉄添加酸化亜鉛透明磁性半導体層、硫化物/ZnOナノワイヤシンチレータの電気化学的形成技術の開発へと展開している。

表彰される伊崎氏

 また技術賞では、東新邦彦氏(日本製鉄 技術開発本部 鉄鋼研究所 表面処理研究部)ら5名が「接着性、耐食性に優れるクロメートフリー化成処理鋼板の開発」で受賞。研究グループは、インフラ分野の新補強工法であるコンクリート補強工法を代表する鋼板接着技術に適した接着性に優れた化成処理皮膜の開発を進めた。長期耐食性に優れるZn-11%Al-3%Mg-0.2%Si合金めっき鋼板を母材とし、この表面に接着剤を用いた鋼板接着工法に適したクロメートフリー皮膜を開発した。開発した皮膜は、造膜成分としてジルコニウムイオン、防錆成分としてバナジウムイオン、密着性を実現する成分としてりん酸イオンから構成される無機成分処理液に、表面自由エネルギー変化を伴う水系エマルジョン樹脂を混合することで化成処理皮膜表層に樹脂粒子を濃化させ、従来難しかった接着性と耐食性がともに優れた化成処理皮膜である。
 本技術は、高耐食性めっきと組み合わせることでより高い耐食性を有しメンテナンスフリーのニーズに応えており、後のさらなる展開に期待ができることから技術賞としてふさわしい内容であると判断された。

左から、表彰される東新氏、莊司浩雅氏、森下敦司氏、中村文彰氏、植田浩平氏

 同じく技術賞で野崎匡文氏(奥野製薬工業 総合技術研究部)ら2名は「薄膜高耐食性Zn-Ni-SiO2複合めっきとシリカ系薄膜コーティングハイブリッド技術の開発と実用化」で受賞。本技術は塩化浴Zn-Ni合金めっきに着目し、SiO2ナノ粒子を添加したZn-Ni-SiO2 複合めっき浴を開発するとともに、さらなる耐食性向上を実現するためゾル・ゲル法を用いたシリカ系薄膜コーティングを適用したものである。Zn-Ni-SiO2複合めっき皮膜は従来のZn-Ni合金めっき皮膜の半分の膜厚で同等以上の耐食性を発揮するが、6価クロムなどの有害物を使用しないシリカ系薄膜コーティングと併用することでさらなる耐食性付与を実現した。
 現在、自転車部品や釣り針等のレジャー部材に適用され部材の軽量化およびコスト削減に大きく貢献しており、今後より一層の適用拡大が期待できることから、技術賞としてふさわしい内容であると判断された。

左から、表彰される野崎氏、日野 実氏

 受賞者、業績などの一覧は以下のとおり。

協会賞

・伊﨑昌伸氏(豊橋技術科学大学 名誉教授)
業績「酸化物半導体層の電気化学的形成と太陽光エネルギー変換への応用に関する研究」

功績賞

・林 秀考氏(元岡山大学)
・佐藤 讓氏(東北大学 名誉教授)

論文賞

・莊司浩雅氏・東新邦彦氏・森下敦司氏・植田浩平氏(日本製鉄 技術開発本部)
「接着性に優れたクロメートフリー化成処理皮膜の開発」
(表面技術 第74巻 第11号 584~588ページ)

技術賞

・東新邦彦氏・莊司浩雅氏・森下敦司氏・植田浩平氏(日本製鉄 技術開発本部)、中村文彰氏(同 薄板営業部)
「接着性、耐食性に優れるクロメートフリー化成処理鋼板の開発」
・野崎匡文氏 (奥野製薬工業)、日野 実氏 (広島工業大学)
「薄膜高耐食性Zn-Ni-SiO2複合めっきとシリカ系薄膜コーティングハイブリッド技術の開発と実用化」

進歩賞

・岩井 愛氏(北海道大学 大学院工学研究院)
業績「塩基性電解質を用いたアルミニウムのアノード酸化に関する研究」
(第143回講演大会要旨集 24~25ページ ほか)
・中島大希氏(UACJ R&Dセンター)
業績「アノード酸化を利用したアルミニウム表面の機能化に関する研究開発」
(表面技術 第75巻 第7号 339~345ページ ほか)

技術功労賞

・目黒篤志氏(日鉄テクノロジー 研究試験事業所(富津) TSセンター)

会員増強協力者

・石﨑貴裕氏(芝浦工業大学 工学部)
・伊藤麻美氏(日本電鍍工業 代表取締役社長)
・柳下宙士氏(三進製作所 代表取締役社長)

 

admin 2025年3月6日 (木曜日)
admin

トライボコーティング技術研究会、第17回岩木賞贈呈式、第27回シンポジウムを開催

1ヶ月 ago
トライボコーティング技術研究会、第17回岩木賞贈呈式、第27回シンポジウムを開催

 トライボコーティング技術研究会(会長:大森 整 理化学研究所 主任研究員)と理化学研究所 大森素形材工学研究室は2月21日、埼玉県和光市の理化学研究所 鈴木梅太郎記念ホールで、「第17回岩木賞贈呈式」および「第27回トライボシンポジウム『トライボコーティングの現状と将来』―モスアイ構造創成、液中プラズマ応用、トライボコーティング研究支援・加工現象解析―(通算第155回研究会)」をハイブリッド形式で開催した。

 第17回となる今回の岩木賞では、東京理科大学/ジオマテックが業績名「グラッシーカーボンを用いたロール状モスアイ金型の開発」により大賞に輝いた。また、愛媛大学の豊田洋通氏と山口大学の白石僚也氏が業績名「液中プラズマCVD法を基盤技術とした鋼表面へのダイヤモンド直接蒸着法の開発」により優秀賞を、PCS Instruments/島貿易が業績名「DLC膜などに有用なトライボロジー試験機の普及によるトライボコーティング研究支援」により事業賞を受賞した。さらに、芝浦工業大学の澤 武一氏と西山和樹氏が業績名「TiAlNコーティングエンドミルを用いた純ニッケルの工具摩耗機構に及ぼす切削点近傍環境の影響」により奨励賞を受賞した。

第17回岩木賞受賞者と関係者第17回岩木賞受賞者と関係者

 ディスプレイやレンズなどの表面反射を防止する手法として真空蒸着での多層膜コーティング法が使用されているが、蛾の目を模倣した反射防止効果のあるモスアイ構造フィルムがディスプレイ表面に搭載されて以来、モスアイ構造フィルムによる反射防止の手法も広まりつつある。多層膜コーティングに比べ広い波長帯と広い入射角に対して反射防止機能を持つほか、金型による樹脂の転写のみで作製できるため、生産のスループットが向上できる。大賞の業績は、グラッシーカーボン(GC)と酸素イオンビーム照射によってロール状モスアイ金型を作製、材料を準備して酸素イオンビームを照射するだけの単純な工程で、従来のポーラスアルミナロールに比べて、大面積化(長さ1560mmまで)と高い歩留まりを実現している。GCモスアイ金型によるモスアイ構造フィルムは、車載用モニタ反射防止やサイネージ反射防止(カバー)、船舶用反射防止・水滴付着防止、車載ドアミラー水滴付着防止などの用途においてすでに多数の量産実績がある上、今後も需要が伸び用途が広がると見られており、その技術の新規性と市場性などが評価されての受賞となった。
受賞の挨拶に立った東京理科大学 谷口 淳氏は、「この研究は、初めは樹脂に転写したときに樹脂が金型に付着してしまい剥がれないという問題があった。接着で言うアンカー効果が働いてしまい非常に離型が難しかった。それを離型剤の工夫などによってクリアし、その後にジオマテック様のご努力により大面積への量産まで可能となった。今後はロール状モスアイ金型の離型性をさらに向上し、金型の転写耐久性を向上させることを考えている」と述べた。

左から、ジオマテック 石橋佑介氏、同 菅原浩幸氏、谷口氏、当日プレゼンターを務めた熊谷 泰副会長、大森会長

 鋼をダイヤモンドコートする方法では、ろう材を用いる方法が実用化され、また、炭素拡散バリア機能と応力緩和効果の両方を有する中間層の研究が行われているが、いずれもダイヤモンド本来の長所を発揮できないなどの課題がある。一方、直接蒸着に関する研究は少なく、どの例も低品質かつ1μmレベルの小さな結晶粒を持つ多結晶ダイヤモンドしか合成されていない。これに対し優秀賞の業績では、液中プラズマCVD法をベースに、ステンレス鋼表面にドリルで溝を付けるというシンプルな手法で、高品質かつ粒径10μmの多結晶ダイヤモンド膜を蒸着することに成功した。直接蒸着のメカニズムとして、ステンレス鋼に含まれるCr・Ni成分による炭素の拡散抑制、溝によるダイヤモンドのはく離抑制について検証。これまでの液中CVD法の実績と、鋼表面へのダイヤモンド直接蒸着の実用化局面での、高性能・低価格のダイヤモンド工具の流通による加工産業の発展や、鋼からダイヤモンドへの直接熱伝達によるヒートシンクの放熱特性向上によるパソコンやスマートフォン等のパワー半導体デバイスの小型化など、産業応用への期待が評価されての受賞となった。
 受賞の挨拶に立った豊田氏は、「液中プラズマという技術は私が共同研究者の白石と同じ年齢の37歳の頃(2002年)に発明した技術である。その後、2008年にダイヤモンドの合成に成功し、その後はなかなかうまくいかず、装置を自作するなど恵まれない環境の中で粘り強くやってきた。今回の受賞で報われた思いだ」と述べた。

左から白石氏、豊田氏、熊谷副会長、大森会長

 英国PCS Instruments社(PCS 社)は、Imperial College London のHugh Spikes教授が率いるトライボロジー研究グループが開発した潤滑油などの各種特性を分析するための試験評価技術を基盤技術として設立、以降トライボロジー試験機のグローバルリーダーの一つとして、自動車や潤滑油をはじめとする産業分野や大学・公共機関などの研究分野に試験機を提供している。島貿易は、日本国内ではまだPCS社の知名度がない2004年に同社と日本国内でのトライボロジー試験機の総代理店契約を締結、試験機の輸入・販売・設置・技術サポートを一貫して行い、同試験機の利点を生かした試験アプリケーションを拡大、表面改質から潤滑まで、幅広いトライボロジー研究支援に寄与している。事業賞の業績は、トライボロジー研究の500以上の文献で採用されているPCS社製トライボロジー試験機の優秀性と、同試験機の利点を最大限に引き出して国内での販売実績とアプリケーション拡大に努めてきた島貿易の取り組み、特に販売台数が多く、潤滑油介在下でのDLCコーティングなど硬質薄膜の摩擦摩耗特性評価で適用実績が多いトラクション試験機「MTM」の普及によるトライボコーティング研究支援が評価され受賞したもの。
 受賞の挨拶に立った島貿易 桝野智晴氏は、「弊社は今年120周年ということで記念すべき年となっている。また、PCS Instruments社と代理店契約をして20年と節目の年となる。今までコツコツと取り組んできたことが評価されて大変嬉しく思う。今後も20年、30年と日本市場で貢献できるように取り組んでいきたい」と述べた。

左から桝野氏、PCS Instruments Tom Welham氏、熊谷副会長、大森会長

 燃料電池や半導体の需要の高まりから近年、苛性ソーダ製造装置に使われる純ニッケルの構造材としての加工需要も増加している。一方で、純ニッケルの切削特性に関しては材料物性に基づいた知見やデータベースがないため、生産現場では勘や経験則による試行錯誤を繰り返して切削加工が行われている。こうした背景のもと、奨励賞の業績では、純ニッケルの切削特性と工具摩耗特性を明らかにし、生産現場で活用できる知見とデータベースを作成することを目的として、切削点近傍環境が工具摩耗機構に及ぼす影響について考究した。①純ニッケルは乾式切削に比べ水道水を供給するとTiAlN膜の酸化で摩耗が増大すること、②不水溶性切削油を供給するとTiAlN膜の酸化が抑制され摩耗が進行しないこと、③強アルカリ水を供給するとTiAlN膜の腐食で摩耗が増大すること、④工具刃先へのニッケルの付着(凝着)で切削抵抗が増加することを検証し、TiAlNコーティングエンドミルを用いた純ニッケルのミーリングでは、工具摩耗を抑制するため、酸化と腐食を抑制する切削点近傍環境の維持が肝要であることを究明。今後の研究の進展が期待されての受賞となった。
 オンラインで受賞の挨拶を行った西山氏は、「本研究は純ニッケルの切削特性などを明らかにして生産現場で活用できる知見やデータベースの作成を目的として調査したものである。この研究は私が研究室に配属された時から続けているもので、失敗や苦労も多かったが澤教授をはじめとして研究室メンバーのさまざまな協力があったからこそ今回の受賞に至ったと考えいてる。この場を借りて感謝申し上げたい」と述べた。

オンラインで挨拶を行う西山氏

 贈呈式の後はシンポジウムに移行。岩木賞の記念講演として大賞に輝いた東京理科大学谷口氏が、優秀賞に輝いた愛媛大学 白石氏が、事業賞に輝いたPCS Instruments Tom Welham氏がそれぞれ講演を行った。なお、奨励賞の芝浦工業大学 澤氏、西山氏の記念講演は、6月に行われるトライボコーティング技術研究会の令和7年度第1回研究会で行われる。

admin 2025年2月27日 (木曜日)
admin

メカニカル・サーフェス・テック2025年2月号 特集「カーボンニュートラルと表面改質」キーテク特集「表面観察」2月25日発行!

1ヶ月 1週 ago
メカニカル・サーフェス・テック2025年2月号 特集「カーボンニュートラルと表面改質」キーテク特集「表面観察」2月25日発行!

 表面改質&表面試験・評価技術の情報誌「メカニカル・サーフェス・テック」の2025年2月号 特集「カーボンニュートラルと表面改質」、キーテク特集「表面観察」が当社より2月25日に発行される。

 今回の特集「カーボンニュートラルと表面改質」では、日本パーカライジングの事業活動によって排出されるCO2の量を明らかにするとともに事業により得られた部材の長寿命化が排出低減にどのように作用しているのかを試算した結果について、日本コーティングセンターで開発されたカーボンニュートラルに寄与するPVDコーティングの技術の一端について、カーボンニュートラル実現と生産性向上を同時に実現しつつコスト削減につなげるマクダーミッド・エンソンの機能性めっきプロセスの技術動向について、1月に東京ビッグサイトで開催された「SURTECH2025」の展示から見るカーボンニュートラルと表面改質、表面試験・評価技術について紹介する。

 また、キーテク特集「表面観察」では、従来の顕微鏡を超える性能と新しい観察・測定法を実現する光波動場三次元顕微鏡について、パーク・システムズ社のリサーチ用AFMの最新技術と表面改質・薄膜関連の評価事例について紹介する。

特集:カーボンニュートラルと表面改質

◇サステナブル社会への表面改質技術の貢献・・・日本パーカライジング 中山 隆臣

◇カーボンニュートラル実現に寄与する工具・金型用PVDコーティングの最新技術・・・日本コーティングセンター 堂前 達雄 氏、角谷 行崇 氏に聞く

◇カーボンニュートラル実現に寄与する機能性めっきプロセスの最新技術動向・・・マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン 鬼頭 綱道 氏に聞く

◇SURTECH/nano tech2025などに見るカーボンニュートラルと表面改質、表面試験・評価技術・・・編集部

キーテク特集:表面観察

◇「表面も内部もワンショット」光波動場三次元顕微鏡・・・大塚電子 下田 健作 氏に聞く

◇リサーチ用AFMの最新技術と表面観察・評価事例・・・編集部

連載

注目技術:第80回 廃水中PFASの除去方法・・・サバンジュ大学、オックスフォード・ブルックス大学

酒飲み世界紀行:第7回 英国Pub編:遙かなるCambridge その2・・・横浜国立大学 梅澤 修

トピックス

SEAJ、半導体・FPD製造装置の需要予測を公表、2024年度半導体製造装置、初の4兆円超え

高機能トライボ表面プロセス部会、第25回例会を開催

雑誌ご購入

定期購読はこちらから

単号のみのご購入はこちらから(外部サイト)

admin 2025年2月20日 (木曜日)
admin

SURTECH/nano tech2025などが開催、表面改質や表面試験・評価技術が一堂に

1ヶ月 2週 ago
SURTECH/nano tech2025などが開催、表面改質や表面試験・評価技術が一堂に

 「SURTECH2025 表面技術要素展」、「nano tech2025 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」など14の展示会が、1月29日~31日に東京都江東区の東京ビッグサイトで開催され42089名が来場、表面改質と表面試験・評価関連でも多数の展示がなされた。

会場のもよう

 Rtec-Instruments( https://rtec-instruments.com/?lang=ja )は、3Dスクラッチ&インデンテーション試験機「SMT-5000」を紹介した。荷重ー除荷曲線による硬さ・ヤング率測定に加え,スクラッチ試験が可能なほか、組み込みの高性能・高速光干渉式3D表面プロファイラを用い,圧痕計測による硬さ測定やスクラッチ痕の観察が可能となっている。ブースでは、3D表面プロファイラによって取得された十円硬貨に圧印された平等院鳳凰堂のインライン3D画像が披露された。

 浅井産業(http://www.asai.co.jp)は、神戸製鋼所のAIP装置によるハイエンド窒化物系被膜「BELCOAT®-AIP」とUBMSによるハイエンドDLC被膜「BELCOAT®-DLC」の受託加工サービスを紹介した。前者については被膜が緻密・高硬度・高い密着性・多元系合金組成が可能なほか新蒸発源SFCにより~50μmの厚膜硬質被膜の成膜が可能になったことを、また後者についてはDLCの高度制御と高い密着力が可能でAIPによる水素フリーDLC(ta-C)膜の成膜にも対応していることをアピールした。

浅井産業「BELCOAT®の受託加工サンプル」

 大塚電子( https://www.otsukael.jp/ )は、測定する人も場所も選ばずに、瞬時に対象物(フィルムやガラスなどの透明材料)の三次元情報として、光の波の情報全て(光波動場)を独自の波面センサーで取得して、可視化する光波動場三次元顕微鏡「MINUK」を紹介した。観察および測定対象から生じる光波動場を、結像素子を介さずに波面センサーに記録して、任意の面の像を計算処理で生成する。視野700×700μm、深さ1400μmの三次元情報を対象にフォーカスを合わせることなく2秒未満で取得して、取得した三次元情報を、後から無段階で任意面を再生可能。

大塚電子「MINUK」

 東ソー(https://www.tosoh.co.jp/)は、めっき処理、プリント基板加工等で排出される産業排水中の重金属除去が可能な排水用重金属処理剤「TXシリーズ」を紹介した。今回は難処理亜鉛に特化した新グレード「TX-Z1」を紹介。従来剤では処理困難だったキレート含有排水にも効果を示すという。また、フロックが大きいため、沈降性やろ過性が高いのも特徴。亜鉛の排水基準値厳格化が見込まれる中、亜鉛ニッケル合金めっきを行っている企業を中心に多くの引き合いがある。塩化アンモニウム含有排水にも効果があるという。

東ソーのブース

 ナノコート・ティーエス( https://www.nanocoat-ts.com/ )は、200℃以下の低温処理が可能なPVDコーティング「セルテス」の処理サンプルを展示した。HV5000以上の高硬度を実現する水素フリーDLC(ta-)膜「セルテスTC」やレンズ成形金型などにおいて複合多層膜のため密着力に優れ高負荷時でもはく離を起こさない「セルテスDLC」のほか、PFAS対策としてフッ素樹脂コーティングの代わりにDLCを被覆したシリコンゴムを展示。また、Reach規制に適合し、有毒物質の使用ゼロ、廃液ゼロの環境にやさしい塩浴軟窒化処理「タフトライド処理」を紹介した。

ナノコート・ティーエス「セルテスシリーズ」

 ナノテック( https://www.nanotec-jp.com/ )はDLC薄膜を機能別、用途別に分類した「ICFコーティング」(真性カーボン膜)を展示した。同社の受託コーティングの約6割を占める医療用のDLCコーティング(生体適合性ICFコーティング)は非常に硬く平滑な表面をしており、科学的に不活性で安定しており、生物に与える影響がなく、環境にもやさしい被膜となっている。チタンやステンレスの血小板付着試験では、血小板の付着が著しく低減することが確認されている。また、高耐久性ICFは、コーティング条件や膜の傾斜層の工夫により、初期摩擦係数が低く(μ=0.15)、高い荷重が加わっても、はく離しにくく耐久性と耐摩耗性に優れた圧粉成形金型(面圧の高い成型金型)や高面圧ギヤに使用できる点を訴求した。

​ナノテック「ICFコーティングのサンプル」

 パーク・システムズ・ジャパン( https://www.parksystems.com/jp )は、人工知能(AI)を搭載した次世代自動原子間力顕微鏡(AFM)「Park FX40」を展示した。ロボティクスと機械学習機能、安全機能、特殊なアドオンとソフトウェアを搭載。プローブ交換、プローブ識別、レーザーアライメント、サンプルの位置調整、サンプルへのチップアプローチ、イメージングの最適化など、スキャンにおけるパラメーターおよび事前準備に関わるすべての設定を自動で行える。機械学習の積み重ねでAIによる自動機能の適正化、スキャン前の煩わしい準備の自動化、複数のポイントを目的に応じて自動測定など、自動化AFMの実現によるユーザーの利便性とパフォーマンスを向上させた。

パーク・システムズ・ジャパン「Park FX40」

 パーカー熱処理工業( https://srv-pnk.jp/ )は、揺動(オシレーション)と回転(ローテーション)の両方の動きを模擬できるアプリケーション指向のトライボロジー試験機であるOptimol Instruments Prüftechnik(Optimol)製「SRV®」を展示した。ASTM やDIN といった国際規格の試験のほか、各種ベアリング等ユーザーの実部品を実使用に近い環境で試験でき、正確で再現性の高い試験結果が得られる。ブースでは、風力発電や電気自動車、燃料電池車、水素エンジン車などの新しいトライボロジー課題の解決に、SRV®5を用いた受託試験の活用を呼び掛けた。

パーカー熱処理工業「SRV®」

 不二WPC(https://www.fujiwpc.co.jp/)は、直径数十μm程度の微粒子を100m/sec以上の高速で投射、加工面のディンプルが油溜まりを形成し部品の摩擦摩耗特性を大幅に向上させる微粒子投射処理「WPC処理🄬」を紹介した。圧縮残留応力の付与や結晶粒の微細化により疲労強度の向上を実現する。また、耐摩耗性や低摩擦特性、耐凝着性などさまざまな機能を加工表面に付与できるダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングを紹介。特に同社のDLCがFDA(米国食品医薬品局)認証を取得しているため、食品製造機器に幅広く採用されていることをアピールした。

不二WPC「WPC処理サンプルおよびDLC処理サンプル」

 メカニカル・テック社( https://surface.mechanical-tech.co.jp/ )企画の「トライボコーティング/試験評価機器ゾーン」では、島貿易、新東科学、東研サーモテック、ナノテック、表面設計コンソーシアムが出展した。

 島貿易は、MTMトラクション試験機の荷重、速度、すべり率、温度等幅広い条件設定に加えてボールとディスク間に電位を架けることができる「MTM-ECトラクション試験機」を展示した。電位を架けることで潤滑剤、材質配合違いの特性評価が迅速に行えるほか、トライボロジー的接触に対する電位の影響も評価できる。MTM-ECは新規に購入することも既存のMTMからアップデートすることも可能。また、3点接触の疲労摩耗試験条件下でグリースを測定可能にしたMPR-GI試験機を紹介した。

島貿易「MTM-ECトラクション試験機」

 新東科学( https://www.heidon.co.jp/ )は、フィルム業界・樹脂業界向けの引掻摩擦摩耗試験機「TYPE:38F」を展示した。フィルム業界の各種規格試験や業界標準試験を簡単に行える引掻摩擦摩耗試験機で、試験治具もワンパッケージとなっているため、購入してすぐに試験が行える。JIS K 7317:2022(プラスチック-機能性フィルムの引掻き硬さの求め方)、スチールウール試験(業界標準試験)、ガーゼ試験(業界標準試験)、JIS K 6902:2007B(熱硬化性樹脂高圧化粧板試験方法)、JIS S 6050(プラスチック字消し)に対応。

 東研サーモテック( https://tohkenthermo.co.jp/ )は、SS400材にそれぞれ、15~50GPa程度の高硬度膜で特にドライ環境下での耐摩耗・低摩擦係数を有している「S-DLC」、「U-DLC」、HV2000程度の高硬度膜であり、優れた膜密着性と耐摩耗・耐凝着性・耐熱性を有している「CrN」、HV2000程度の高硬度膜であり、優れた膜密着性と耐摩耗・耐食性・耐熱性を有している「TiN」を施したオープナーのサンプルを展示した。また、2024年に設立した、新たな熱・表面処理と関連分野の事業開発によって将来的な技術リソース獲得と販路開拓を目指す「イノベーション事業部」について紹介した。

東研サーモテック「DLCなど各種被膜を施したオープナー4種」

 表面設計コンソーシアム( https://surfacedesignconsortium.com/ )は、複雑な表面課題にソリューションを提供しつつ、今後求められる表面課題に対応する複合処理の技術開発をする事業共同体であることをアピールしつつ、来場者に対し「表面の困りごと相談」を実施した。また、構成メンバーである不二WPCのWPC処理サンプル、日本電子工業のDLC処理サンプルや3D造形サンプル、武藤工業の各種熱処理の比較サンプル、昭和精工のDLC被覆金型のサンプルなどを展示した。

表面設計コンソーシアムのブース

 

admin 2025年2月13日 (木曜日)
admin

ネクスメッドインターナショナル、コーティング採用の人工股関節システム

1ヶ月 2週 ago
ネクスメッドインターナショナル、コーティング採用の人工股関節システム

 ネクスメッドインターナショナル( https://www.nexmed.co.jp/ )は、整形外科領域の治療に用いる人工股関節システム「NexMed 人工股関節システム」を販売する。

 同品は、主に変形性股関節症等の治療の際に体内へ埋植するインプラント。変形性股関節症とは、加齢や遺伝などが原因で、股関節の軟骨がすり減り、痛みや機能障害を引き起こす病気。症状が進行し運動療法などで回復の見込みがない場合、人工股関節置換術などの手術が検討される。同品には従来課題となっていた、より安定した骨との固着や、インプラントの摩耗低減を目的とした様々な工夫が施されており、長期間にわたり機能を維持することが期待できるという。

 同品は、インプラントと骨の強固な固定を目的として、臼蓋シェルおよび大腿骨ステムのインプラント表面に、生体親和性の高いチタンのコーティングに加え、骨の成分であるリン酸カルシウムの一種であるハイドロキシアパタイトのコーティングを採用している。軟骨の代わりとなるポリエチレンライナーには、摩耗による破損を低減させるためのガンマ線による架橋処理とポリエチレンの酸化による劣化を防ぐビタミンEを添加したビタミンE添加型高架橋ポリエチレンライナーを採用した。大腿骨頭にはポリエチレンの摩耗を抑制するジルコニア強化型のアルミナセラミックヘッドを採用している。

NexMed 人工股関節システムの構成

 

admin 2025年2月13日 (木曜日)
admin

プロテリアル金属、半導体用導電性Ni-P微粒子のめっき技術を開発

1ヶ月 2週 ago
プロテリアル金属、半導体用導電性Ni-P微粒子のめっき技術を開発

 プロテリアル金属( https://www.metals.proterial.com/ )は、半導体チップと基板を接続するためのバンプ(突起)などに使用される導電性Ni-P(ニッケル-リン)微粒子に銀(Ag)、銅(Cu)、低融点はんだなどをめっきする技術を開発し、めっき付きNi-P微粒子を製品ラインアップに加えた。めっき付きNi-P微粒子は、従来の特長であった耐熱性を維持しながら低抵抗化を実現し、半導体の高機能化・低消費電力化に貢献する。

 スマートフォンやタブレットは、AI機能の搭載など高機能化が進んでおり、電気回路での信号伝達のさらなる高速・大容量化が求められている。これに伴い、半導体チップやデバイスにも低抵抗化、耐熱性向上が求められており新たな実装技術の開発が進んでいる。最近では、半導体を高性能化するため、より大規模な回路を、より微細な加工技術で形成するようになっているという。その際、歩留まり低下を防ぐため、小さな半導体チップを作り、それを集積して大規模回路をつくるチップレットと呼ばれる技術が注目されている。このチップレット集積技術では、チップ同士を接続したり、チップと基板を接続する必要がある。そのため、接続部分の低抵抗化が可能となる新たな接合部材(実装接合部材)が期待されている。

 同社では、これまで接合部材として導電性Ni-P微粒子を開発、製造してきた。このNi-P微粒子は、粒径1~30μmのものが製造可能で、耐熱性、均一な粒径、高い真球度、高い硬度を特長としている。これまでもめっき品として、高耐食のニーズに応えるため金(Au)めっき品を保有していたが、低抵抗化には限界があった。そこで、プロテリアル金属はAu以外の材質をめっきできる新たなめっき技術を開発した。

はんだ/Sn-Biめっき品の走査電子顕微鏡(SEM)写真

 この技術により、導電性Ni-P微粒子に抵抗値が低い銀(Ag)めっき、銅(Cu)めっきを行うことが可能となり、体積抵抗率について、金めっき付きNi-P微粒子と比較して銀めっき付きNi-P微粒子で約1/5、銅めっき付きNi-P微粒子で約1/9とし、電気回路での信号伝達のさらなる高速・大容量化に対応できるようにした。また、低融点はんだめっきを行うことも可能になり、はんだ付けによる接触面積の拡大と金属接合による低抵抗化も可能にした。

 これらのめっきは、従来のNi-P微粒子の特長であった耐熱性、均一な粒径、真球度は維持したままで施すため、接続面の平坦度維持と適切なギャップ(すきま)形成は従来のNi-P微粒子と同レベルで可能。さらに、高い硬度を持つNi-P微粒子をコアとすることから、シリコン基板やガラス基板などと半導体チップの接合(実装)に役立つことが期待される。

めっき付きNi-P微粒子:中央がめっき無し、左が銀めっき、上が金めっき、下が銅めっき、右がはんだめっき

 

admin 2025年2月13日 (木曜日)
admin

トーカロ、すべての事業所で「ISO45001/ JISQ45100」の認証を取得

1ヶ月 2週 ago
トーカロ、すべての事業所で「ISO45001/ JISQ45100」の認証を取得

 トーカロ( https://www.tocalo.co.jp/ )は2025年1月に東京工場で労働安全衛生マネジメントシステムの規格である「ISO45001/ JISQ45100」の認証を取得した。これにより、同社の7事業所すべての認証取得が完了した。

 同社は「安全はすべてに優先する」を安全衛生管理の基本とし、安全衛生に配慮した『職場環境の維持向上』ならびに『無事故・無災害の達成』に努めている。今後、労働安全衛生マネジメントシステムを継続し効果的に運用していくことで、「きれいで、機能的で、人にやさしい職場づくり」を推進していく。

ISO45001/JISQ45100認証取得状況

●北九州工場   「ISO45001」2019年3月取得

       「JISQ45100」2024年3月取得

●名古屋工場   「ISO45001/JISQ45100」2023年12月取得

●神戸工場     「ISO45001/JISQ45100」2023年12月取得

●倉敷工場      「ISO45001/JISQ45100」2024年1月取得

●明石工場     「ISO45001/JISQ45100」2024年9月取得

●溶射技術開発研究所   「ISO45001/JISQ45100」2024年11月取得

●東京工場     「ISO45001/JISQ45100」2025年1月取得

admin 2025年2月13日 (木曜日)
admin

FPS、2025年度 第18回岩木賞に「環境賞」を新設

1ヶ月 2週 ago
FPS、2025年度 第18回岩木賞に「環境賞」を新設

 未来生産システム学協会(FPS、本年3月より「未来生産科学研究所」(Future Production Scientific research institute)に変更、略称はFPSで変更なし)は、2025年度 第18回の「岩木トライボコーティングネットワークアワード(岩木賞)」から新たに、環境に配慮し、省エネルギー化、省資源化、代替資源化や地球温暖化防止につながるトライボコーティング技術を表彰対象とする「環境賞」を新設する。

 岩木賞は、表面改質、トライボコーティング分野で多大な業績を上げた故 岩木正哉博士(理化学研究所 元主任研究員、トライボコーティング技術研究会 前会長)の偉業を讃えて、当該技術分野と関連分野での著しい業績を顕彰するもの。募集対象は表面加工、表面改質、表面分析、トライボロジー、コーティングに関わる研究・開発・技術・支援・交流・事業化などで著しい成果、業績(製品、サービス、学会発表や特許申請/登録されたものを含む)を上げた個人、法人、団体で、表彰対象は受賞業績が公表できること、FPSに参加できること、と定めている。

 既設の大賞、優秀賞、特別賞、奨励賞、国際賞、事業賞、功績賞に続いて岩木賞に新設される環境賞の概要は以下のとおり。

環境賞

 本賞は、開発技術が環境に配慮したものであり、省エネルギー化、省資源化、代替資源化や地球温暖化防止につながるものであり、技術的、社会的観点から優れ、他分野との連携関係を育み、当該業界の活性化、発展とSDGsにつながり、波及効果を生む、等の活動の成果、努力が認められるものについて選考、贈呈されるもの。

 トライボコーティング技術研究会会長で岩木賞審査委員長の大森 整氏(理化学研究所 主任研究員)は新設する岩木賞 環境賞に関して、「表面加工、表面処理技術に限定されず、広く生産、ものづくり、産業に関連するもので、環境に配慮した技術や製品などに贈賞したいと思う。環境賞は例えば、省エネ型、省スペース化のコーティング装置や技術、代替研磨剤を用いた研磨技術、CO2削減(省電力化)や省資源化(ドライ加工)を実現する工作機械など、幅広く対象になる」と語っている。

 なお、2024年度 第17回岩木賞には、東京理科大学/ジオマテックが業績名「グラッシーカーボンを用いたロール状モスアイ金型の開発」により大賞に、愛媛大学の豊田 洋通氏と山口大学の白石僚也氏が業績名「液中プラズマCVD法を基盤技術とした鋼表面へのダイヤモンド直接蒸着法の開発」により優秀賞に、PCS Instruments/島貿易が業績名「DLC膜などに有用なトライボロジー試験機の普及によるトライボコーティング研究支援」により事業賞に、芝浦工業大学の澤 武一氏と西山 和樹氏が業績名「TiAlNコーティングエンドミルを用いた純ニッケルの工具摩耗機構に及ぼす切削点近傍環境の影響」により奨励賞に輝いており、第17回岩木賞の贈呈式と受賞業績の記念講演は、本年2月21日に埼玉県和光市の理化学研究所 和光本所で開催される「第27回『トライボコーティングの現状と将来』シンポジウム」(通算155回研究会)で行われる。

第16回 岩木賞贈呈式のようす

 

kat 2025年2月10日 (月曜日)
kat

トライボロジー試験機SRVのユーザーズミーティングが開催、国内ラウンドロビン試験結果を報告

1ヶ月 2週 ago
トライボロジー試験機SRVのユーザーズミーティングが開催、国内ラウンドロビン試験結果を報告

 パーカー熱処理工業(PNK、https://srv-pnk.jp/)は1月24日、東京都葛飾区の東京理科大学で、揺動(オシレーション)セットアップおよび回転(ローテーション)セットアップと、オシレーション・ローテーション両方の動きを模擬できることなどから、潤滑剤や自動車向けトライボロジー試験機のデファクトスタンダードとなっているOptimol Instruments Prüftechnik(Optimol)製のトライボロジー試験機「SRV®」について、「2024年度SRV国内ラウンドロビン試験結果報告会」(トライボロジー特性のデファクト標準に関する研究会(主査:東京理科大学・佐々木 信也教授)協力)と「SRVユーザーズミーティング2025」を開催した。

 当日はまず、2024年度SRV国内ラウンドロビン試験結果報告会が行われた。SRVユーザーである最大13の企業・団体が、同じ試験条件(荷重、ブロック温度、周波数、ストローク、上部試験片(φ10mmボール)、潤滑剤、下部試験片(φ24mm×7.9mmディスク))で、標準試験(DIN 51834準拠)、オイルEP試験(ASTM D7421準拠)、グリースEP試験(ASTM D5706準拠)、DLC耐はく離荷重評価試験の四つの試験を実施、SRV試験機と試験方法の信頼性や確かさを検証した。

 今回は下部ディスク試験片として、Optimol製試験片と、国内で製作した廉価版のPNK製試験片を用いて上記の四つのラウンドロビン試験を実施したが、企業・団体間で特にグリースEP試験において試験結果のばらつきが見られ、試験片の洗浄剤の違いや2種の試験片の表面粗さの違い、装置の保守点検の状態などの試験結果への影響が考察された。

 SRV国内ラウンドロビン試験は、SRV国際ラウンドロビン試験に比べて試験回数や試験時間などの条件は緩やかではあるものの、ラウンドロビン試験のタイトなスケジュールやデータ加工の手間など、参加企業・団体の負担が少なくないことから、PNKでは近日中に参加企業・団体にアンケートを実施し、今回のラウンドロビン試験の問題点や今後の課題などを抽出しつつ、2025年度の国内ラウンドロビン試験では洗浄方法や試験片の問題点など不明点を減らして試験結果のばらつきを抑えるとともに、国内ラウンドロビン試験の参加企業・機関を増やせるように努める。

2024年度SRV国内ラウンドロビン試験結果報告会のようす

 続くSRVユーザーズミーティング2025の話題提供として、PNK佐藤雅之氏より、国内ラウンドロビン試験の関心事である“OK荷重をどう決めるか”に関連して、「耐荷重試験の焼付き判定について」と題して、SRVソフトウエアの推奨カットオフ値や、高分解能信号分析(HRA)測定、電気接触抵抗(ELR)測定など便利な機能の使い方、耐荷重試験の焼付き判定に関わるSRV試験事例の紹介などを行った。

 佐藤氏はまた、「SRVを利用したギヤ油のスクリーニング法の提案」と題して話題提供を行い、ギヤ油の評価において一般的だが試験時間が長くコストのかかるFZG試験の試験時間を短縮し、開発コストを削減できるスクリーニング試験としてのSRVの有用性について述べた。

佐藤氏によるSRVユーザーズミーティング2025の話題提供のようす

 当日はまた、佐々木研究室の見学会が行われ、先ごろ同研究室に導入されたコンパクトサイズのオシレーション摩擦摩耗試験機「ETS(Easy Tribology Screener)」が披露された。ETSは簡単・スピーディーにトライボロジー評価試験が行える入門機で、荷重は最大300Nであるが,コーティング薄膜や潤滑油・グリースなどのスクリーニング評価には十分な仕様となっており,試験中の摩耗進行やDLCなどの薄膜はく離などをオンライン計測できる点に優位性がある。

ETSの見学会のようす

 

admin 2025年2月10日 (月曜日)
admin

SEMICON Japan 2024が開催、表面改質・計測評価技術が多数披露

2ヶ月 ago
SEMICON Japan 2024が開催、表面改質・計測評価技術が多数披露

 エレクトロニクス製造サプライチェーンの国際展示会「SEMICON Japan 2024」が昨年12月11日~13日、東京江東区の東京ビッグサイトで開催され、延べ10万3165人が来場した。

 今回は、変化する半導体~システム全体の設計・検証分野に注目して、現状の課題や次世代の方向性を共有するサミット「Advanced Design and Innovation Summit」(ADIS)が初めて開催されたほか、後工程、パッケージ分野の材料、開発環境、デバイス、製造にフォーカスした第3回目となる「Advanced Packaging and Chiplet Summit」(APCS)や、「半導体と医療」をテーマにした講演と「AI Summit」と題する講演などが行われた。

 半導体製造装置において、3D構造を伴った微細化の進展や、微細化によらず集積度を向上できる3D NANDフラッシュメモリーの高度化などが進む一方で、生産性向上のための高スループット化や、半導体の歩留まり向上のためのコンタミネーションコントロール、ESD対策などが求められる中で、各種の表面改質技術や計測評価技術が披露された。

 大塚電子(https://www.otsukael.jp/)は、ニーズに合わせて選べる組み込み型膜厚計のラインナップを紹介した。顕微分光膜厚計「OPTM series」はパターン作成後のインライン測定が可能で、①高精度(正確さ、高い安定性)、②微小スポット(最小φ3μm)でパターンが狙える、③高速(1ポイント1秒以下)、④測定ポイント上の視野を観察可能(パターンアライメント機能)などの特徴を持つ。膜厚測定範囲は、1nm~ 92μm(SiO2換算)。膜厚測定範囲が10nm~ 90μm(SiO2換算)の「MCPD series」と膜厚測定範囲が10μm~ 775μm(SiO2換算)の「SF-3」はいずれも研磨工程でのin-situ測定が可能。前者の特徴は、①ファイバー光学系のためプロセスに組み込みやすい、②高速測定(最短5msec ~)、③研磨中の膜厚終点検出にも最適で、後者の特徴は、①ファイバー光学系のためプロセスに組み込みやすい、②高速測定(最短1msec~)、③研磨中の膜厚終点検出にも最適、など。

大塚電子のブース

 東京電子(https://www.toel.co.jp/)は、非破壊/破壊型分析型超高感度質量ガス分析装置の販売を行う一方で、ユーザーが分析結果について評価し、装置の性能を実感できるよう、同質量ガス分析装置による受託分析サービスを行っていることをアピールした。すでに半導体デバイスや車載デバイスにおけるプロセス評価やデバイスの品質管理・品質解析などを目的に、ユーザーから半導体デバイス等のサンプルを預かり、同社の埼玉事業所(埼玉県富士見市)に設けた受託分析ラボに設置した非破壊/破壊型分析型超高感度ガス分析システムにより、ガス分析を行う受託サービスが本格化しているという。

東京電子のブース

 日本コーティングセンター(https://www.jcc-coating.co.jp/)は、難加工材用工具の被膜として有効とされる水素フリーDLC(ta-C)タイプの被膜「TETRAスリック」を披露した。高硬度で高い耐摩耗性を持ち、優れた密着性や耐熱特性により工具や治具の長寿命化を実現する。特に硬度を低く抑えて内部応力を下げることで、密着力を重視した長寿命の被膜としている。密着力の高いTETRAスリックではクラックが入りにくく再コーティングでも長寿命化を実現できる。TETRAスリックはまた、ドロップレットを抑制する独自の成膜法によって、被膜の良好な面粗さを実現している。

日本コーティングセンターのブース

 

admin 2025年1月28日 (火曜日)
admin

大陽日酸、金属3Dプリンター用造形品質モニタリングシステム国内で提案

2ヶ月 ago
大陽日酸、金属3Dプリンター用造形品質モニタリングシステム国内で提案

 大陽日酸( https://www.tn-sanso.co.jp/ )は、米国のPhase3D(フェーズ スリーディー)社が開発した金属アディティブ・マニュファクチャリング(金属AM)用造形品質モニタリングシステム「Fringe Inspection」の国内販売に向けた契約を締結した。高い品質が求められる日本市場において、造形品質をモニタリングできる本システムをAMによるものづくりに必須のソリューションとして顧客に提案していく。

 Phase3D社は、金属AMに求められる欠陥検査の造形品質モニタリングシステムを提供している。同社製「Fringe Inspection」は、パターン投影(縞模様)を用いて、Laser Powder Bed Fusion方式と Binder Jetting方式の各層(造形層と粉末層)をμmオーダーで測定するシステム。従来、造形後に行っていた品質管理を造形中に行うことで、リアルタイムに異常を検出し、造形品質を向上させることができる。

 本システムは、パターン投影用プロジェクターと読込用カメラで構成されており、顧客が持っている3Dプリンターに後付可能。すでに3Dプリンターを導入し部品を造形している企業においても、新たな品質管理ツールとして使用できる。

パターン投影(金属 3D プリンター内)

 

admin 2025年1月28日 (火曜日)
admin

大同特殊鋼、5Gアンテナや難密着プリント基板に適したターゲット材

2ヶ月 ago
大同特殊鋼、5Gアンテナや難密着プリント基板に適したターゲット材

 大同特殊鋼( https://www.daido.co.jp/ )は、高密着性とエッチング性に優れた難密着基板用ターゲット材を開発した。

 同品を用いてスパッタリング法で成膜した膜は、難密着基板であるポリイミド樹脂に対して高い密着性を示す。また、この密着膜は配線の形成がしやすいため、5Gアンテナや電子デバイスの量産工程の早期立ち上げに貢献できる。密着性と配線形成のしやすさを両立したターゲット材を新たにラインナップすることで、今後の需要拡大が見込まれる5Gアンテナやインターポーザなどに使われる微細配線基板の分野において、難密着基板用ターゲット材の受注拡大を目指し、高度化する電子デバイスの普及拡大に貢献していく。

 同品により成膜した膜は、①高密着性:難密着基板であるポリイミド樹脂に対して高密着(図1)②易エッチング性:銅エッチングに用いる一般的な塩化第二鉄でエッチングが可能なため、3層 密着層・シード銅層※6・めっき※7銅層の一括エッチングが可能(図2 、図3)
これらの特長により、5Gアンテナやインターポーザの製造工程を一部省略でき、量産工程の早期立ち上げに貢献できます(図4)、などの特長がある。

図1 難密着基板との密着特性

 

図2 エッチング特性

 

図3 配線形成の工程

 

図4 インターポーザ断面図

 近年、AIやビッグデータなどの情報処理に関する多くのシステムや、自動運転、IoT、5Gなどの新しい技術の普及により、膨大なデータを迅速に処理することが求められている。この要求に応えるため、高性能かつ低消費電力の電子デバイスの需要が高まっている。5Gのような高周波の伝送においては、信号の劣化を防ぐために、伝送経路を短縮させた微細配線が必要になる。さらに、伝送ロスを減らすために、ポリイミド樹脂などの低誘電基板の適用が進んでいるが(図5)、配線材料である銅は、基板との密着性が低く、断線のリスクが高いため密着膜が必要とされている。これまで、密着膜には、一般的にチタン膜が使用されていたが、チタン膜は、銅と同じエッチング液で配線が形成できないため、2回のエッチング工程が必要になる。同品による膜は、難密着基板に対して密着性が高く、かつ一般的なエッチング液で銅配線と一括エッチングが可能だという。

図5 難密着基板および樹脂の誘電率と密着性の関係


 

admin 2025年1月28日 (火曜日)
admin

島津製作所、従来機種と比べて10分の1で物性情報を取得できる走査型プローブ顕微鏡

2ヶ月 1週 ago
島津製作所、従来機種と比べて10分の1で物性情報を取得できる走査型プローブ顕微鏡

 島津製作所( https://www.an.shimadzu.co.jp )は、従来機種と比べて10分の1の時間で局所的な物性情報を取得できる走査型プローブ顕微鏡「SPM-9700HT Plus」の販売を開始した。操作性と効率性を兼ね備えた走査型プローブ顕微鏡(SPM=Scanning Probe Microscope)の汎用モデルとして、ナノ材料の評価・研究に寄与する。

SPM-9700HT Plus

 同品は、信号処理速度の向上と制御方法の最適化で、物性画像取得速度の高速化を実現した。従来機種では6時間程度かかっていた物性観察結果のマッピング画像が、専用ソフトウェア「ナノ3DマッピングFast」(オプション)を利用することで30分以下で取得できる。また、観察条件を自動で設定して安定的な画像取得を支援する「NanoAssist」機能をソフトウェアに搭載した。スピーディーに試料を交換できる「ヘッドスライドメカニズム」、消耗品である探針の取り付けが容易な「カンチレバーマスター」(オプション)など操作性を高める機構も備えている。

 走査型プローブ顕微鏡は、先端が10nm程度の探針(プローブ)を試料に近づけて、試料と探針間の力学的・電磁気的な相互作用力を検出しながら走査し、試料表面の三次元形状や物性情報を取得する。原子間力顕微鏡(AFM=Atomic Force Microscope)とも呼ばれる。電子線を使う電子顕微鏡は真空中での観察が必要だが、SPMは大気や溶液中の観察・測定ができる。高分子材料や電池材料、生体などの形状観察や物性評価といった用途で、ナノテクノロジー・ナノサイエンスの研究に必須の手法として利用されている。

admin 2025年1月15日 (水曜日)
admin

東大など、ダイヤモンド表面を原子レベルで観察する技術を開発

2ヶ月 1週 ago
東大など、ダイヤモンド表面を原子レベルで観察する技術を開発

 東京大学大学院新領域創成科学研究科の杉本宜昭教授らの研究グループは、東京大学物性研究所の尾崎泰助教授らの研究グループと産業技術総合研究所(以下、産総研)先進パワーエレクトロニクス研究センターの小倉政彦主任研究員らの研究グループと共同で、ダイヤモンド表面を原子レベルで観察する技術を開発しました。

 ダイヤモンドは究極の半導体として、パワーデバイスや量子デバイスの材料として注目されている。デバイスの製作過程において、微細加工技術で作製される微小なデバイスであるほど、原子レベルの欠陥がデバイス性能へ及ぼす影響が無視できなくなる。デバイスの性能を向上させるためには、ダイヤモンド表面を原子スケールで評価することが必要だという。

 本研究グループは、原子間力顕微鏡を用いることでダイヤモンド表面の個々の炭素原子の可視化に世界で初めて成功した。本手法によって原子スケールのダイヤモンドの分析への道が開けたため、今後ダイヤモンド薄膜の成長機構の解明や、ダイヤモンドデバイスの性能向上に大きく貢献することが期待できる。

プローブ先端の原子の元素識別の模式図。赤い球と青い球は基板上の既知の原子を表す。その既知原子にプローブ先端の原子を近づけて、化学結合エネルギーを計測して元素識別する

 

admin 2025年1月15日 (水曜日)
admin

日本製鉄、自社の新規・更新制御盤に着色高耐食めっき鋼板を適用

2ヶ月 1週 ago
日本製鉄、自社の新規・更新制御盤に着色高耐食めっき鋼板を適用

 日本製鉄( https://www.nipponsteel.com/ )は、生産設備の新設・更新時のCO2排出量削減を目的として、制御盤筐体の仕様標準に、塗装工程を省略できる着色高耐食めっき鋼板「スーパーダイマ®GB」を追加した。

スーパーダイマGBを適用した制御盤

 スーパーダイマGBは高耐食めっき鋼板スーパーダイマの後処理において顔料を用いて、一般的な電設資材に用いられる色調マンセル値「5Y7/1」近似色を着色した鋼板。制御盤などの電設資材は、その防錆機能を塗装により担保していたが、同社が提供する高耐食めっき鋼板(スーパーダイマ、ZAM)を適用することにより、製造(塗装)工程でのCO2排出量を削減することが可能。

 今回、同社に電機制御システムの納入実績があるTMEIC、同社の制御盤を製造するティエスイーと共同で、溶接以外の接合方法などの諸課題を解決したことから、同社名古屋製鉄所の制御盤91面(鋼材ベースで約45t)、東日本製鉄所君津地区の制御盤4面(同2t)での適用を決定し、既に制御盤の製造、その設置を開始している。

admin 2025年1月15日 (水曜日)
admin

日本金属、高い表面絶縁抵抗を有するステンレス鋼

2ヶ月 1週 ago
日本金属、高い表面絶縁抵抗を有するステンレス鋼

 日本金属は、高い表面絶縁抵抗を有するステンレス鋼「FI(Fine Insulation)仕上」を開発した。

 近年、スマートフォンやゲーム機などに代表される電子機器においては小型化、低背化が顕著になっている。これまでは導通部に触れる箇所へ絶縁テープや樹脂との複合体を設けることにより、短絡を回避する対策が取られてきたが、コスト高や小型化、低背化の妨げとなっていた。

FI仕上のイメージ図

 そうした課題を背景に、同社はステンレス表面に絶縁抵抗を有する無機皮膜(膜厚1μm程度)をプレコートした、FI仕上を独自開発した。FI仕上は後加工で表面処理を実施する必要がないため、省スペース化にも対応した製品で、顧客の工程省略や生産性向上、コスト低減などにも貢献する。

 同品は新たなニーズに対応した製品で、電子機器や二次電池用途での今後の販売拡大を目指す。

admin 2025年1月15日 (水曜日)
admin

高機能トライボ表面プロセス部会、第25回例会を開催

3ヶ月 ago
高機能トライボ表面プロセス部会、第25回例会を開催

 表面技術協会 高機能トライボ表面プロセス部会(代表幹事:岐阜大学 上坂裕之氏)は12月16日、名古屋市千種区の名古屋大学 EI 創発工学館で第25回例会を開催した。

 今回は上坂代表幹事から開会の挨拶の後、以下のとおり、講演が行われた。

挨拶する上坂代表幹事

「ガスインジェクションパルスプラズマCVD法を用いたa-C:H膜の超高速成膜」針谷達氏(岐阜大学)…真空中のガス流を利用したプラズマCVD法により、従来法より一桁以上高速なDLC形成を可能にするガスインジェクションパルスプラズマCVD法(GIPP-CVD法)を開発。Ar とC2H2の混合ガスを流れを持たせて導入し、基板ステージ近傍に低速プラズマ流を生成させるGIPP-CVD法によって、DLC成膜速度2.5μm/min以上、ナノインデンテーション硬さ18 GPaと、DLCの優れた機械的特性を有したまま超高速な形成が可能であることを示した。

「Effect of Increasing Residence Time of Methane on Amount of Exhausted Methane in DLC Coating with Plasma CVD」上坂裕之氏(岐阜大学)…DLCのプラズマCVD法による成膜において、流入させたガスの90%以上がプラズマ中で未反応の状態で排気されていることから、原料ガスの高い成膜効率でのプラズマCVDプロセスについて検証した。原料ガスであるCH4分解率に着目し、放電プラズマ内の原料ガスの滞在時間が長くなると1μm成膜ごとに原料ガスの排気が1/100程度に減り、滞在時間を上げると原料ガスの有効利用につながる、と述べた。

「工具・金型への多結晶ダイヤモンド被膜の適用と課題解決事例の紹介」岡本浩一氏(新明和工業)…ダイヤモンドコーティング超硬工具リサイクルに貢献する、刃先が丸くならずに超硬素材にダメージを与えずに除膜できるイオンエッチング装置や、工具の硬化(プラズマ窒化)と刃先の先鋭化の複合処理を実現できるプラズマイオン処理装置、ダイヤモンドコーティングを再コートできるダイヤモンドコーティング装置を紹介した。

「過飽和窒素固溶化による型材表面のナノ構造化;ステンレス鋼・CoCrMo超合金の型材化を事例として」相澤龍彦氏(表面機能デザイン研究所)…過飽和窒素処理(MNS処理)を施した医療用CoCrMo超合金型材の硬さ試験と摩擦摩耗試験の結果では、表面硬度が1500HVとセラミック部品に匹敵する表面硬度を、ドライ環境での摩擦係数μが0.45と化学的安定性ゆえに低摩擦・低摩耗を示した。また、MNS処理した超合金型による高強度ステンレス鋼・チタン合金の高圧下率鍛造では、500MPa級の微細結晶粒材のニアネット鍛造を実現した。

開催のようす

 

kat 2024年12月27日 (金曜日)
kat

アキレス、ガラス基板への高密着めっき形成技術を開発

3ヶ月 ago
アキレス、ガラス基板への高密着めっき形成技術を開発

 アキレス( https://www.achilles.jp )は、同社独自のポリピロールめっき法を用いて、ガラス基板への高密着めっき形成を可能にする技術を開発した。

めっき処理前(左)、処理後(右)のガラス基板外観

 同社は導電性高分子であるポリピロールを用いた独自のめっき技術を開発し、様々な難めっき素材に対応する密着性の高いめっき技術を提供してきた。また、ポリピロールめっき法に関連する特許を取得し、約50件を権利化している。これまでガラス基板に密着性の高いめっき膜を形成することは難易度が高いとされていたが、同社はこのポリピロールめっき法を用い、低温・常圧のプロセスで密着性の高いめっき膜をガラス基板に形成する技術を開発した。

めっきによりガラス基板上に微細配線を形成

 半導体の微細化・高集積化が進む中で、半導体パッケージ基板の新たな材料としてガラスが注目されている。同社は今回開発した新技術について微細配線形成に関する研究開発をさらに進めるとともに量産技術の確立を図り、次世代半導体の製造分野における利用を図る考え。

 ポリピロールめっき法は、同社が独自に開発したナノ分散ポリピロール液を用いためっき処理技術。2003年から10年以上の開発期間を経て事業化を実現した。主な特長として、①ナノ分散ポリピロール液を塗工した部分にのみ、めっきが析出する、②様々な基材への密着性が高いめっき処理が可能、③エッチング処理が不要のため環境負荷が低い、などがある。スマートフォン等の電磁波シールド用途では、製品のさらなる薄型化・軽量化に貢献している。

admin 2024年12月26日 (木曜日)
admin

不二越、熱処理工程に置いて飛躍的に省エネを高める真空脱脂洗浄装置

3ヶ月 ago
不二越、熱処理工程に置いて飛躍的に省エネを高める真空脱脂洗浄装置

 不二越( http://www.nachi-fujikoshi.co.jp/ )は、金属熱処理工程において、環境負荷低減や省エネなどのコストダウンに寄与する省エネ真空脱脂洗浄装置「NVD-10HP」を開発・市場投入した。

 カーボンニュートラルの実現に向け、あらゆる産業において省エネなどの取り組みが求められている。近年、電力価格が高騰するなか、ものづくりを支えている金属熱処理の前後に行う洗浄工程においても大量のエネルギーを消費していることから、電力消費量の少ない省エネ型の洗浄装置のニーズが高まっている。同社はこれまで独自の減圧蒸留再生器を搭載した炭化水素系の真空脱脂洗浄装置を販売し、自動車、産業機械分野における熱処理工程の洗浄ニーズに応えてきた。今回、従来品に比べて、飛躍的に省エネを実現する高効率のヒートポンプを搭載した炭化水素系省エネ真空脱脂洗浄装置を開発した。

 同品の主な特徴は、①省エネ性:低温洗浄を可能にしたことで、洗浄液加熱に必要なエネルギーを削減し、省エネ性が向上。さらに、高効率なヒートポンプの採用により、消費電力を従来品(NVD-10E)比で 50%以上削減(標準時 50%減、省エネモード時 74%減)②省資源:洗浄液を直接加熱しない温水間接加熱方式の採用で熱媒体油が不要となり、省資源化に貢献③小型化:共通ベースの小型化で設置面積を従来品比で 20%削減。さらに、ユニット化により既存品との置き換えも容易。

不二越「NVD-10HP」

 

admin 2024年12月26日 (木曜日)
admin
Checked
41 分 56 秒 ago
mst配信ニュース 表面改質&表面試験・評価の情報サイト フィード を購読