NTNは、EV(電気自動車)の駆動源であるe-Axle向けの耐電食軸受「樹脂モールド絶縁軸受」を開発した。軸受の外輪外径面と幅面に樹脂絶縁層を射出成形することで、耐電圧1000V以上の絶縁性により電食の発生を抑制し、EVバッテリーの高電圧化に対応する。温度変化に対して十分な強度を持つ樹脂材料の選定や成形方法の最適化により、e-Axleで求められる幅広い温度環境でも使用できる耐久性も実現した。
同社ではEV・HEV(ハイブリッド車)用e-Axle(モータ、減速機)向けに提案を進め、2025 年度に10億円/年の販売を目指す。
近年、自動車市場では環境負荷の低減を目的に、EVの開発・普及が加速している。EVの駆動源であるe-Axleに使用される軸受には、モータからの漏洩電流による電食への対策が求められている。
同社はこれまで、絶縁体であるセラミック製の転動体を使用した軸受や、軸受の外輪外径面や幅面に絶縁被膜をコーティング加工した「絶縁被膜付き軸受」を耐電食軸受として開発・提供してきた。耐電食軸受には、耐電食性、低トルク、放熱性など複数の機能が求められるが、車両設計に基づく軸受の使用環境の違いなどから、各機能に対する要求値は多様化している。同社はこうしたユーザーの多様なニーズに対応するため、今回、樹脂モールド絶縁軸受を開発したもの。
開発品の特長は以下のとおり。
・耐電食性:軸受内部への電流通過を低減する絶縁性に優れた樹脂を軸受の外輪外径面と幅面に射出成形することで、耐電圧1000V以上の絶縁性を実現。今後増加が見込まれるバッテリー電圧800Vにも対応する(e-Axle用軸受にかかる電圧はバッテリー電圧の10%以下と想定される)
・耐久性:樹脂と金属では温度による膨張・収縮量に差があり、温度変化によって樹脂に亀裂が生じる可能性がある。そのため、広範囲な温度変化においても必要な強度を維持する樹脂材料を使用するとともに、樹脂絶縁層全体に十分な強度を持たせる成形方法を採用することで、e-Axleで求められる幅広い温度環境でも使用できる耐久性を実現した