日本トライボロジー学会(JAST)は11月15日~17日、香川県高松市のサンポートホール高松・かがわ国際会議場で「トライボロジー会議 2017 秋 高松」を開催した。
今回は、機械要素や潤滑剤、表面処理、分析・評価・試験などに関わる研究313件が、一般セッションとシンポジウムセッション、国際セッションで発表された。
本大会でもまた、参加者がどのセッションで必要な情報が得られるかを分かりやすく提示するとともに、研究発表者に実学としてのトライボロジーの応用を考えさせる目的から、一般セッションの分類を「産業機械」、「輸送機器」といった応用分野を中心に変更。応用分野に分類が難しい研究などについては「学術」のセッションで発表がなされた。
また、シンポジウムセッションは「特殊環境に対応した新規潤滑物質・材料の開発動向」、「グリース潤滑の最近の研究動向」、「シールにおけるトライボロジー技術」、「表面力の基礎・応用・新展開」、「トライボロジーとダイナミクス:不安定現象・粘弾性・ソフトマテリアル」の5テーマで、国際セッションは「第2回日本−チェコトライボロジーワークショップ」として開催された。
16日には特別講演会が開かれ、徳田雅明氏(香川大学教授)による講演「香川大学発 Rare Sugars(希少糖)の健康機能性」が行われた。生活習慣病のリスクを減らす可能性を秘める希少糖について、香川大学が大量生産技術を確立、医薬品や化粧品、食品、さらには工業原料として、多角的に事業展開が進んでいる状況が紹介された。
16日にはまた、JRホテルクレメント高松を会場に、懇親会が開催された。まず大会実行委員長の若林利明氏(香川大学 教授)が挨拶に立ち、「今回は講演登録数が310件を超えWTC、ITCなどの国際会議を除く国内の大会では最大規模で、参加者も700名を超える盛況裡での開催となった。金毘羅宮参拝のほか讃岐うどんの有名店をめぐる見学会などの豊富な企画を通じて、高松の地を堪能してほしい」と述べた。
中村 隆JAST会長(名古屋工業大学 教授)からは、希少糖に関する特別講演に触れて糖とトライボロジーに関する自身の研究をまじえた、コミカルな挨拶があった。
さらに、木村好次 実行委員会顧問(東京大学・香川大学名誉教授)が乾杯の挨拶に立ち、「学会創設の頃は数件の研究発表を確保するのも大変な環境だったと記憶しているが、今回は300件を超える発表があると聞き、非常に感慨深い。今回発表されたそれぞれの研究が、社会に大きなインパクトを与える成果をもたらすことを期待している」と鼓舞した。
会期中は、メイン会場のサンポートホール高松・かがわ国際会議場に「企業技術・製品展示コーナー」が併設され、最新の製品・技術が多数紹介された。主な展示は以下のとおり。
アントンパール・ジャパンは、ポリマーや極薄膜、軟組織などを含む各種材料の機械的特性をナノスケールで評価できる「ウルトラナノインデンテーションテスタ(UNHT3)」を展示した。独自のアクティブ表面リファレンスシステムにより、熱ドリフトとコンプライアンスの影響が排除されるため、多様な材料の長時間測定に最適とした。
出光興産は、給脂作業の負担を軽減するロングライフ性能と高荷重・衝撃荷重に耐える潤滑性能、グリース潤滑部分に1種類で対応できる汎用性能を兼ね備えた「ダフニーエポネックスSR」と、グリース漏れ量の従来比96%減、消費電力の5%減、冬季の過負荷停止のゼロを実現すロボット用グリース「ダフニーエボネックスRG-M」を紹介した。
ジェイテクトは、クリーン環境用クリーンプロベアリングの性能を従来よりも大幅に向上させた「NEWクリーンプロベアリング」を展示した。従来比で発塵量を50%低減させ、軸受寿命を10倍以上に向上、半導体やフラットパネルディスプレイ(FPD)などの製品歩留りや品質の向上に貢献し、搭載装置のランニングコスト低減や稼働率向上に寄与する。
島貿易は、英国PCS Instruments社製の「MTM2トラクション計測器」を展示した。潤滑油、グリース、そのほかの流体の幅広い転がり、滑り条件でのトラクション係数を、ソフトウェアで作成したプロファイルによって全自動で測定できるシステムで、豊富なアクセサリーによりクラッチ、ブレーキ、ソフトコンタクトなどの試験にも応用できることを示した。
トリニティーラボは、精度・耐久性を向上し、機能をより充実させたトライボロジー・ハプティクス向け静・動摩擦測定機「TL201Tt」を展示した。直線摺動部にボールねじ仕様の高精度アクチュエータを採用することで、長時間の耐摩耗試験、低摩擦測定、激しいスティック&スリップ測定にも精度良い測定結果が得られることなどをアピールした。
ダイセルは、爆轟法で得られる一次粒子(結晶)径4~5nmのダイヤモンド粒子で超低摩擦を発現するなじみ面を急速に形成(なじみ効果)する「ナノダイヤモンド潤滑システム」を紹介した。東北大学・足立幸志教授らとの共同研究でも、DLCなど高硬度で化学的安定性の高い基材でも初期なじみに寄与、超低摩擦・低摩耗を維持できることを示した。
ブルカー・エイ・エックスエスは、汎用トライボメータ「UMT TriboLab」を展示。回転試験から往復動試験、数Nから数kN、室温から1000℃までの試験環境に切り替えられること、交換が容易なモジュール設計により、摩擦摩耗試験だけでなく、スクラッチ試験や腐食摩耗試験、マイクロインデンテーション試験までカバーできることなどを紹介した。
堀場製作所は、非接触の放射温度計シリーズでハンディタイプの「IT-545」を展示した。新型サーモパイルセンサなどの独自開発技術を一台に集約、業界最高水準の高精度(±1℃)、少ない温度ドリフト、測定再現性±0.8℃を実現できることなどから、ベアリングの温度管理に適用されていることなどを紹介した。