NTNは、HEVやEV、FCVなど電動車の冷却システムに使用される電動ウォータポンプ向けに、スラスト面に設けた特殊潤滑溝によりトルクを従来品比で30%低減した自動車電動ウォータポンプ用「低トルク樹脂軸受」を開発した。自動車の低燃費化への貢献を前面に、HEV、EV、FCV用電動ウォータポンプや住宅設備(自然冷媒ヒートポンプ給湯機、燃料電池コージェネレーションシステム)の電動ウォータポンプなどへの適用を提案、2026年度に2億円/年の販売を目指す。
自動車電動ウォータポンプ用 低トルク樹脂軸受
近年、自動車の電動化および低燃費化において、エンジンやインバータ、バッテリ、モータなど車両コンポーネントの熱管理(サーマルマネジメント)が重要な課題となっている。電動車では冷却水を循環させる電動ウォータポンプが自動車1台あたり複数個搭載されており、電動ウォータポンプ内で冷却水を押し出す役割を担うインペラ(羽根車)に軸受が使用されている。
電動ウォータポンプ用軸受には、PPS樹脂などを使った樹脂軸受やカーボン軸受など小型・軽量かつ耐薬品性を有するすべり軸受が使用されており、いずれの軸受も燃費向上を目的にさらなる低トルク化が求められている。
今回開発された低トルク樹脂軸受は、固体潤滑剤などの独自配合により、水中使用時に優れた低摩擦・低摩耗特性を発揮するNTN製ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂材料を使用するとともに、スラスト面に特殊潤滑溝を形成。従来は、潤滑溝に矩形溝を形成していたが、本開発品の特殊潤滑溝は、軸受の反回転方向に徐々に溝が浅くなる勾配を設けることで、軸受回転時に冷却水を反回転方向に押し込み、動圧効果による圧力を発生させる設計としている。これにより、軸受のスラスト面の接触部に冷却水が入り込みやすくなり、従来品と同等以上の耐久性を維持しながらトルクを30%低減することに成功した。
特殊潤滑溝の構造
本開発品は、カーボン軸受に発生しやすいクラック(割れや欠け)の心配がなく、水中における優れた耐摩耗性を有しており、カーボン軸受からの置き換えも可能なことから、電動ウォータポンプ用途でのさらなる販売拡大を見込んでいる。
本開発品で使用しているPPS樹脂は耐薬品性にも優れているため、冷却水だけでなく、溶剤などさまざまな液体中で使用が可能です。自動車のほかにも、ZEH(Net Zero Energy House)対応の住宅設備で使用される自然冷媒ヒートポンプ給湯機や、家庭用燃料電池コージェネレーションシステムなどの循環や冷却用の電動ウォータポンプにも使用可能で、省エネルギー化に貢献する。
NTNでは、本開発品を電動ウォータポンプの省電力化に貢献する商品として、自動車部品メーカーや住宅設備メーカーへの提案を進め、自動車の電動化や省エネルギー化によるCO2 排出量の削減に貢献していく考えだ。