木村洋行、超薄型ボールベアリングの特長と半導体分野における適用を推進
1.超薄型ボールベアリングの特長
木村洋行が日本総代理店を務めるKAYDON(ケイドン)社は1941年に創業し、1950年代に世界で初めて超薄型ボールベアリング「Reali-Slimシリーズ」(図1)を開発し、量産を開始した。現在はSKFグループ企業として、超薄型ボールベアリングを中心に、あらゆる用途に応じたカスタムベアリングの開発も手掛けている。
ケイドン超薄型ボールベアリングは内径25.4~1016mmまでのサイズをくまなくラインアップしている。最大の特長は、ベアリング断面が超薄型のため装置に占めるベアリングのスペースを最小化でき、装置全体の省スペース・軽量化が図れ、設計の自由度が向上する点だ。一般的なISO規格・JIS規格のベアリングでは内径が大きくなるのに比例して断面サイズも大きくなるのに対し、ケイドン超薄型ベアリングは断面サイズでシリーズ化されており、図1のとおり内径が大きくなっても同じシリーズ内であれば断面サイズは変わらない。

ケイドン超薄型ボールベアリングには、ラジアル荷重を受ける深溝型(Type-C)と通常は2列以上の複列で用いてラジアル荷重、アキシアル荷重とモーメント荷重の複合荷重を同時に支えることができるアンギュラコンタクト型(Type-A)、この複合荷重を単列のベアリングのみで受けられる4点接触型(Type-X)がある(図2)。

ケイドン超薄型ベアリングの中でも特に、複合荷重を受けられる4点接触型を使うことで大口径中空シャフトへの置き換えが可能になるだけでなく、単列仕様にできるため軸方向の長さをさらに短縮できる。気体・液体の配管類、あるいは電気配線やスリップリング等を中空シャフト内に収納できるなど、フレキシブルで効率的なデザインにできる。
キングポストデザインのISO 7010組み合わせベアリングから4点接触型超薄型ベアリングで中空シャフトを用いた機構への置き換えでは、内径寸法を大きくできるため耐モーメント荷重を50%程度向上させている。
回転軸に垂直に加わるラジアル荷重を支えるよう組み付けられたベアリングでは、例えばISO 6010深溝ボールベアリングでは下部約150°の範囲の転動体で荷重を分散支持しているが、ケイドン4点接触型では同じ荷重分布でラジアル荷重を支持しつつ、80%以上の軽量化・省スペース化を実現できる(図3)。

2.半導体分野における軸受へのニーズ
半導体製造プロセスにおいて軸受には、回転の高精度化とともに、真空~高真空への対応、電子部品や光学レンズに悪影響を及ぼすアウトガス対策やコンタミネーションの低減、コンタミネーション発生につながる摩擦・摩耗の低減、プロセス中で使用されるガス・薬剤による腐食への耐性、エッチングや化学蒸着(CVD)などのプロセスに対応した耐熱性などを持たせることが要求される。
ケイドン超薄型ベアリングはそもそも、1960年代のアポロ計画の宇宙服のヘルメットリング向けに採用され、その後も米国航空宇宙局(NASA)の月面探査車向けなど、宇宙空間の厳しい使用環境に耐えるベアリングとして、多くの採用実績を持つ。宇宙環境下では軽量・省スペース化が求められるとともに、真空環境、極低温~高温の幅広い温度領域で精密な動きを求められ、ベアリングにとって非常に過酷な環境での稼働と高い信頼性を求められる。そのため内外輪の材質だけでなく、ボールや保持器の材質、潤滑剤の選定などでケイドンの長年の経験が生かされている。
こうした宇宙機器での実績からケイドン超薄型ボールベアリングは、同じく真空環境、広い温度領域で作動する半導体製造プロセスにおいて幅広く適用されている。独自軸受設計に加え、長年の経験に基づく内外輪および保持器の材質や潤滑剤の選定・適用によって、潤滑剤が250℃以上の高温にさらされる条件や10-5~10-8Torrレベルの超高真空下での運転を実現しつつ、希薄潤滑条件でのマイクロパーティクル発生の最小化や腐食性雰囲気への耐性、長寿命化を実現している。
3.半導体製造プロセスでの適用例
ケイドン超薄型ボールベアリングは、半導体製造プロセスに適した上記の性能のほか、半導体製造装置の回転機構の小型・軽量・簡素化が図れる省スペース設計によって、ウェハ搬送ロボットからウェハ研磨装置、露光装置、検査装置など、半導体製造の前工程から後工程までの広範な装置に適用されている。
最も多用されているのがウェハ搬送ロボットで、ベアリングの薄さ・軽さから装置をコンパクト化できるだけでなく、同じ内径サイズの一般的なISO規格・JIS規格のベアリングに比べ80%以上の軽量化が図れるため、アームが伸び切った時のたわみ量を少なくでき、安定した正確な搬送を実現できる。他方で、ウェハ搬送ロボットを含む産業用ロボットでは複合荷重を受けることが可能なクロスローラーベアリングが多用されているが、4点接触型(Type-X)ケイドン超薄型ベアリングは、単列のベアリングのみで複合荷重を受けられるため省スペース化が図れるだけでなく、クロスローラーベアリングに比べて、より軽く安定した起動トルクと回転トルク、高い回転精度を実現できることも、ユーザーから高く評価されている。
ケイドン超薄型ベアリングは1個単位でカスタマイズできることも大きな利点で、それぞれが特殊環境を伴う半導体製造装置ごとの要求に応じて、内外輪や保持器の材質や、内外輪の歯切りなど各種形状への追加工、潤滑を工夫したベアリングとして提供がなされている。
ウェハ搬送ロボットの中でもチャンバー内にウェハを搬送するロボットでは、ベアリングの防錆油残渣などがチャンバー内で揮発しマイクロコンタミネーションを発生させることがあってはならない。こうした懸念に対しケイドン社では、宇宙分野から続く真空環境で高い信頼性をもって運転できるベアリングの材料技術・潤滑技術に関する豊富な知見とノウハウを備えており、クリーンルーム内でベアリング各部品を徹底的に洗浄し、組み立てを行い、ユーザーの仕様に最適なグリースを封入して納入する「クリーン・パック」を行うことで、清浄度の高いアプリケーションにも使用できるようにしている。
さらに、ユーザーでも洗浄作業が容易なように、耐薬品性に強く耐食性が高いオールステンレス材質(SUS440Cステンレス鋼)や、転動体と保持器、転動体と内外輪の接触部分での防錆油残渣などを洗浄しやすいデザインを採用している。
一方で、一般的な軸受鋼(SUJ2)を基材としつつ耐食性を付与できるコーティング「エンデュラコート」を施したベアリングも用意している。
半導体製造装置の市場は少し遅れて2025年後半から上向くと見られ、ケイドン超薄型ベアリングに対する引き合いが増えてきている。その中で最近では、SUS440Cステンレス鋼よりも高い耐食性を有するベアリングへの要求が高まっている。腐食性ガスを使用した工程が増えてきていることによるもので、これに対しケイドン社では耐食性をさらに向上させたステンレス材種を開発中で、間もなく提案できる状況になってきている。このステンレス材を用いたベアリングは、半導体の洗浄工程に用いられる塩酸や硫酸などにも対応できるものと見られている。
4.SEMICON Japan 2024における展示の見どころ
4.1 ケイドン超薄型ベアリング
木村洋行は、本年12月11日〜13日に東京ビッグサイトで開催される半導体製造装置・材料の国際展示会「SEMICON Japan 2024」に出展する。ブースでの展示は、上述のとおり半導体製造プロセスで採用実績の多いケイドン超薄型ベアリングがメインとなる。内径サイズが変わっても断面サイズが変わらない薄型に特化したベアリング(図4)であることをアピールするとともに、多様なアプリケーション、ニーズに対応が可能なカスタムベアリングであることも訴求していく。
また、ラジアル荷重、アキシアル荷重、モーメント荷重の複合荷重を単列のベアリングのみで受けられる4点接触型(Type-X)ケイドン超薄型ボールベアリングを組み込みハンドルで回転させるデモ機(図5参照)を置いて、その軽くて安定した起動トルク・回転トルクを来場者に体感していただく予定だ。


4.2 クリーンルーム用自動給脂システム
SEMICON Japan 2024ではまた、SKFが新たに取り扱いを開始した「クリーン・ドライ環境向け自動給脂システム」(図6)を初披露する。クリーンルーム内に設置できる世界初のグリース自動供給システムで、クリーンルームのクラス(清浄度)4という高い清浄度の認証を取得していて、クリーンルーム内に持ち込んでも全く問題がないレベルの潤滑システムとなっている。クリーンルームの外から遠隔操作、プログラミングが可能な自動給脂システムのため、人が立ち入ることによる異物の混入がない。
半導体製造装置においては、グリースをなるべく使用したくないが機械の効率・保全面からは使用は避けられないので、できるだけ使用量を減らしたいとのニーズがある。本自動給脂システムでは、クリーンルーム内の製造装置の軸受に対し、グリース給脂量や給脂間隔を定量的に制御でき、半導体製造装置で要求されるミニマム適正給脂を可能にしている。
約30㎝□のコンパクトサイズの装置で、バッテリーや製薬、航空宇宙などのクリーン環境にも適用できる。

5.今後の展開
2013年に世界第一位のベアリングメーカーであるSKFのグループとなったケイドンは、カスタムメイドという従来からのフットワークの軽さに加えて、SKFのノウハウ・知見を注入した基礎研究や生産技術を利用したものづくりを進めてきている。「超薄型」を謳う後発のメーカーも出てきているものの、SKF協力のもとでケイドンが実施した寿命試験結果(図7)を見ると、他社製ベアリングとの耐久性の差は明らかである。

ケイドン超薄型ベアリングはとりわけ、軽くて安定した起動トルクと回転トルク、高い回転精度を実現できるといった利点を持つ。当社では、上述した半導体製造プロセスでの適用のように、軽量・コンパクトで厳しい条件で使えるベアリングであることを引き続き訴求していく。
ベアリングは半導体製造装置に限らず各種機械を安定稼働させるための主要な機械要素であるため、ベアリングの突然の故障に伴う機械・ラインの突発停止などがない、生産効率向上につながる信頼性の高いベアリングを選定してもらう取り組みを強化している。
木村洋行は、顧客の現場のニーズに対して最適な提案を行うために、製品やアプリケーションに関するトレーニングを定期的に受け、製品の性能や利点に関する知見、適用の可能性などの情報と知識を常にアップグレードさせている。
引き続き、顧客の声に耳を傾けて顧客の利益となるフィールドでの新しい提案を行い、ケイドン社製品の特質を生かしつつ、顧客のさまざまな課題の解決につながるような用途開拓を進めていく。


