日本工作機械工業会、JIMTOF2018を開催、複合加工やIoTに対応するベアリング&モーション技術が集結
日本工作機械工業会は11月1日~6日、東京都江東区の東京ビッグサイトで、「JIMTOF2018 第29回日本国際工作機械見本市」を開催した。出展社数、出展小間数がともに過去最大規模となる今回は、「未来へつなぐ、技術の大樹」をテーマに、工程集約型の5軸加工機やアディティブ・マニュファクチャリング(AM)との複合加工機、ロボットと連携した自動加工機などが多数展示されたほか、主催者の企画展示として会場を一つの工場に見立て72社・約300台の工作機械を産業用データ通信規格「OPCUA」ベースのプラットフォームでつなげた。
こうした中、それら工作機械のシステムに対応して滑らかな動きを実現する、ベアリングや直動案内関連、潤滑関連での技術が多数披露された。
ベアリング・直動案内関連
ベアリングおよび直動案内関連では以下のような展示がなされた。
イグスは、「時短・簡単」をテーマに、メンテナンスが不要な無潤滑ベアリング、可動のための電力供給を行う可動ケーブル、メンテナンスが容易なケーブルキャリア「エナジーチェーン」などのモーション・プラスチック製品にセンサを埋め込むことで、自ら交換時期を予測してユーザーに知らせる計画保全技術「スマート・プラスチック」を動態展示した。また、編組密度が約90%(高いEMC性能)で編組が切れにくくノイズ問題を解決でき全品種RoHS-Ⅱ対応済みの可動ケーブル「チェーンフレックス」や、ファナックロボット用の走行軸用可動ケーブルPUR外被ハイブリッドケーブル「CFSPECIAL.792.015」と「CFSPECIAL.792.016」を展示した。第7直動軸に沿って長距離走行するケーブルでは、コークスクリュー等によるケーブル破損を回避することは極めて重要だが、同ケーブルは、束撚り構造を採用し、高速動作でもコークスクリューなどの破損が発生しにくい。長距離走行に適した耐久性を備えているほか、耐衝撃性に優れ、難燃性でハロゲンフリーとしている。耐油性/耐クーラント性、耐加水分解性、耐微生物劣化性もあり、機械的にも電気的にも要件を満たしている。さらに、転がりとすべりのハイブリッドベアリングで無潤滑でメンテナンスフリー、スムーズな走行が可能な「ドライリン WJRM」を展示、手動扉や制御盤の調整への適用などを提案した。
NTNは、軸受軌道面周辺のセンシングにより、工作機械の主軸の高度な状態監視と、焼付きの未然防止を可能にする工作機械主軸用「センサ内蔵軸受ユニット」を展示。工作機械の主軸が焼き付いた際に発生していた部品調達や主軸交換の工数や費用、工作機械の再稼働までの時間を削減し、生産性向上やコスト低減を実現するほか、定期的なメンテナンスをより的確に行うことができるため、信頼性の向上にも貢献する。また、dmn値160万の高速回転性能と、同社従来品比で約1.3倍の負荷容量と許容アキシアル荷重を両立した「高速・重切削工作機械主軸用アンギュラ玉軸受」を展示、従来は複数の工作機械で行っていた荒加工から仕上げ加工までの工程を1台の工作機械で担えるようになり、一層の生産性向上に貢献できるとした。さらに、グリース潤滑軸受の高速回転使用限界を従来のdmn値140万から160万に高めつつ剛性を約10%高めた工作機械主軸用「空冷間座付グリース潤滑軸受」を紹介、従来はエアオイル潤滑が必要だった高速のマシニングセンタや複合加工機などに、価格面や環境面でメリットのあるグリース潤滑軸受が使用できることをアピールした。
ジェイテクトは、工作機械用軸受としては、昇温特性がグリース潤滑で従来品比50%低減、保持器耐久性が従来比3倍以上など、高速、高剛性の両立で幅広い加工に対応可能な「高速・高剛性主軸用複列円筒ころ軸受」やグリース寿命10%以上向上することで軸受の交換周期延長に貢献しつつ加工精度の向上に貢献する「グリース潤滑低昇温アンギュラ玉軸受」、グリース溜り付き間座で、長寿命・高速化を実現する「超寿命グリース潤滑用軸受」を展示した。また、ジェイテクトグループが提案するIoEソリューションとしては、ダイベア製の、軸受に温度センサとXYZの3軸加速度センサを内蔵して機械の故障予知につなげるセンサ内臓軸受「di-Slim 2」と軸受とセンサを分離することでセンサの寸法や取付場所の設定に自由度を持たせたセンサユニット「di-Slim 3」を展示した。
THKは、駆動と直動案内の一体構造と省スペース構造、部品点数減による組付工数削減を実現する、独自の「ボールねじ一体型ボールスプラインDSP」と、DSPを用いてコンパクト構造や耐圧縮荷重に特化した構造、高負荷荷重、高剛性、高精度送りを実現するサーボプレス用電動アクチュエータ「プレスシリーズ」について、瞬時最大推力250kN(25t)の「PC120」を紹介した。従来油圧プレスが用いられた領域を電動化できることで、速度の任意設定・可変やモーション制御、金型への負荷軽減など様々な利点を付与、精密プレス・圧入・カシメ成形などの生産性を向上できることをアピールした。また、最高速度3m/s、繰り返し位置決め精度±1μmで異物が流入しにくいフルカバー構造のリニアモータシリーズ「ULM15/20」を披露。LMガイドを採用した高剛性アクチュエータで長距離搬送が可能な最大ストローク4mを実現。複数のスライダを個別制御できるため、同軸上でハンドリングやピック&プレースなど種々の作業を可能にし生産性を向上できるとした。
日本ベアリングは、小径で長さのあるニードルローラーを転動体として採用しローラーの総数を増やすことなどによって高剛性・高減衰性・低ウェービング(高運動精度)の新開発ローラーガイド「EXRAIL(エクスレール)」を展示した。また、JIMTOF開催に合わせてEXRAIL特設サイトと同社YouTubeチャンネルに公開した、EXRAILをトランスフォーム(変形)させたトランスフォームロボ「exrail-1(エクスレール・ワン)」が活躍する動画第3話「激攻!凍てつく大地」をブース内で放映した。そのほか、ワークを運ぶピック&プレースユニットに同社のリニアガイドを、θ補正のθ軸ユニットに同社のボールスプラインを、XY補正のカムポジショニングステージに同社のスライドウェイをそれぞれ用いて、微小ワークの高速搬送を行うデモンストレーションや、搬送部に同社の1軸アクチュエータなどを用いたφ1S線材の高速回転搬送デモンストレーションなどを実施した。
日本精工は、浸炭焼入れあるいは高周波焼入れを施し耐久性を付与したボールねじ転走面の表面に対し、さらにショットピーニングによって微細なディンプルを形成することで、油膜形成能力を向上させた「高精度・長寿命ボールねじ」を紹介した。油膜が形成されにくい低速・揺動・小ストロークでの検証運転では、現行品に対して予圧残存率で3倍の摩耗抑制効果を発揮。油膜形成能力の向上によって、溝と鋼球同士の接触による摩耗の抑制も実現、位置決め精度寿命の長期化につながる。位置決め精度要求の厳しい金型加工マシニングセンタや放電加工機などに最適という。また、IoTソリューションとして、専門技術者の診断技術を簡単・スピーディーに実現でき予知保全に貢献する軸受・ボールねじ状態監視・診断ソフトウェア「ACOUS NAVITM」を披露した。
ハイウィンは、同社製のボールねじとリニアガイド、クロスローラーベアリング、DDモータを搭載した「Super Motion Sytem」を展示、トータルの電動方式を提案した。ナット駆動で長ストロークの送り軸に適用できDDモータで高トルク駆動が可能なため門型工作機械の送りなどに適している。カップリングやベルトなどの回転伝導部品が不要なため、レスポンスが速いほか曲がりによるたわみや自重によるたわみが回転速度の上昇とともに大きくなり破損にいたるような「危険速度」を高く設定でき、危険速度以上の回転速度で使用した際に発生する振動による機械の精度低下も起こりにくい。また、高剛性油膜で支持することで摩擦が極めて低く荷重負荷能力が高い「油静圧ガイドウェイ」と同油静圧案内を用いたリニアユニットによるデモンストレーションで位置決め精度の高さを示した。そのほか、多機能センサを組み込んだボールねじを3軸構成とし、インダストリー4.0に対応する状態監視システム「i4.0BSTM」を展示した。
潤滑関連
潤滑関連ではまた、以下のような展示があった。
出光興産は、ブースでグリースを調合するデモを実施しながら同社のグリースベンチプラントについて紹介。同社のグリース製品として、低温始動性を改善することで消費電力を削減し産業用ロボットの生産性を高めるロボット減速機用グリース「ダフニーエポネックスRG-M」や、セルロースナノファイバー(CNF)を原料とした、せん断・熱安定性に優れる食品機械用グリース「CNFグリース」を紹介した。また水溶性切削油剤での、切削加工の高能率化に伴う切削速度上昇による高温化によるミスト・ヒューム増加による作業環境の悪化(人体への悪影響)や、冷却性能向上のための吐出圧の増大に伴う泡立ちによるオーバーフロー発生(生産工程の停止や設備周りの汚染)といった課題に対して、消泡性能やヒューム低減効果、ミスト防止性能、被削材を問わない高い加工性能を実現する次世代型高能率加工対応エマルション「ダフニー アルファクール EX-1」を紹介した。また、省エネ型潤滑油として、しゅう動面油や軸受油、油圧作動油、ギヤ油として適用でき誤給油防止や作業量削減に寄与しつつ専用油以上の性能を実現できる工作機械用高級多目的油「ダフニー スーパーマルチオイル ST」や、特殊高分子ポリマーの効果で、せん断速度が大きな鼻鏡隙間で粘性抵抗の低下を実現、油圧回路でのエネルギー損失を減らす作動油「ダフニー スーパーハイドロSTシリーズ」を紹介した。
EMGルブリカンツは、工作機械で使われる油圧作動油、しゅう動面油で多いトラブルとその対策を紹介した。作動油ではフィルターのつまりやバルブの動作不良などのトラブルが油の劣化物とクーラントがスラッジ化することに起因しているとして、スラッジを油中に分散させて取り込み、油圧系統内でのスラッジの蓄積を防止しバルブやフィルター閉塞を引き起こしにくい「Mobil DTETM 20 Series」などを紹介した。また、しゅう動面油がクーラントタンクに混入したり、クーラントがしゅう動面油に混入した際に安定したしゅう動特性や加工精度を保持できないというトラブルに対して、クーラントによって洗い流されず付着性を示し、また、クーラントタンクでスカムアウトができるクーラント分離性を示す「Mobil VactraTM Oil No.2」や「Mobil VactraTM Oil No.2 SLC」などを紹介した。
JXTGエネルギーは、環境に配慮した非塩素系アンチミスト強化型不水溶性切削・研削油「リライアカットシリーズ」を紹介、特に現場では切れ味重視から不水溶性切削油への需要が高まっているものの可燃性液体類となることから、最新の合成エステル油と硫黄系極圧剤の使用によって低粘度による加工性と高引火点による安全性を両立した低粘度高引火点製品を紹介した。また、摩擦係数が低くサブミクロン領域でも高い位置決め性能を可能にするため工作機械の高精度制御に貢献するほか始動性に優れ低速送り時のスティックスリップを防止するとともに水溶性切削液との優れた分離性を示す高性能しゅう動面油「ユニウェイ XS」を紹介した。そのほか、増ちょう剤にリチウムコンプレックスを使用、軸受の摩擦や撹拌抵抗を低減し軸受の温度上昇を抑制でき優れた省エネ特性を発揮できる省エネ・万能極圧グリース「タフリックスグリースMP」を紹介した。優れた軸受寿命を有するため軸受の交換時期やグリース給脂間隔の延長が図れるほか、水に洗い流されにくく水分が混入しても、ちょう度変化が少ないため水が混入しやすい潤滑箇所にも使用できるとした。
リューベは、潤滑に関する様々な問題に対し機械の使用される環境条件を基に、不適切な潤滑による要素部品の短命や、配管および要素部品内における固化、固着の問題、自動給脂化に対する不安の解消・メンテナンスフリーに貢献できることをアピールした。現状のLHL-X100潤滑剤をよりクーラントに洗い流されにくくするために付着性を上げた「新LHL-X100潤滑剤」や「半導体業界向け低発塵グリース」、末端吐出確認と要素部品の温度監視が一体となったIoT対応の潤滑状態監視統合システム「EPM(末端吐出・温度センサー)」を紹介した。また、高速主軸潤滑用に開発された新たな潤滑システムと主軸専用オイルを展示した。特に主軸用の潤滑ワックスは、グリースのような増ちょう剤がないため高速回転時の抵抗が少ないほか、低温で固化することがないなど温度粘度特性に優れるという。