イグスは4月1日~5日に開催されたハノーバーメッセの会期中に、大きな技術改良や業務改善などにつながった画期的な高性能樹脂製ベアリングの使用事例を競うコンテスト「マヌス(manus)賞」の表彰式を実施した。
2019年マヌス賞受賞者をハノーバーメッセで表彰した、イグス本社CEOフランク ブラーゼ氏(⼀番右)、副社長兼イグリデュール軸受およびドライリンリニア・ドライブ技術部長トビアス・フォーゲル氏(左から3番目)、仏イグス社CEOトルステン・バイツェル氏(⼀番左)
今回で9回目となる2019年マヌス賞には、世界32ヵ国から445件の応募があり金賞にはスコットランドの機械設計会社ToolTech社によるオフショア検査装置が輝き、マヌス金賞の賞金5,000ユーロを獲得した。
ToolTech社が開発したのは、水中の石油・ガスプラットフォームに設置されたパイプラインを洗浄・検査する装置。オフショア検査装置はパイプの周囲にカフスのように巻き付き、ローラーで移動しながらパイプラインを洗浄、脆弱箇所を検知する。こうした環境では金属製ベアリングは腐食しやすいため、イグスの高性能樹脂製部品が採用された。すべり軸受「イグリデュール」、リニアガイド「ドライリン」、ケーブルを安全にガイドするケーブル保護管「エナジーチェーン」などが、360°の回転動作を可能にしている。海水への耐性(耐食性)に優れ、無潤滑・メンテナンスフリーの部品が、厳しい条件下でも確実な走行を実現していることなどが評価された。
マヌス賞金賞に輝いたToolTech社によるオフショア検査装置
このほか、技術的かつ経済的に優れ、独創性あふれるアプリケーションとして、以下の2件が選出された。
・銀賞:フローティング・カタマラン「iFLY 15」(ドイツ)
ドイツ・ミュンヘンの造船メーカーCECカタマラン社が開発したスポーツカタマラン(双胴船)「iFLY 15」は、一見普通のカタマランヨットと同じように見えるが、速度を上げていくと、機械的な飛行制御システムにより船体が水上約0.5mに浮上し、4枚の小型の折り畳み式水中翼によって最大30ノット(55km/h)で走行する。カタマランを浮かすため、技術チームは重量削減など制御システムに関わる課題を克服しなくてはならなかった。そこで頼りにしたのが、水中翼で使われたイグリデュール高性能樹脂製すべり軸受。イグスの樹脂製ベアリングは無潤滑で海水への耐性にも優れているため、今回の使用条件に非常に適していた。
・銅賞:運転支援システム(フランス)
フランスのKempf社が開発した運転支援システムは、障害者や車いす使用者による車の運転を可能にするが、それを実現したのがハンドルに装備された制御リング「ダリオス(Darios)」である。リングを押せば正確に加速し、ブレーキをかけるときはハンドル横の手動ブレーキを操作すればよく、通常のペダル操作は不要。最新版の制御リングは単純な円形ではなく、モダンなハンドルと同じように底辺がフラットなデザインとなっている。開発エンジニアはイグスの3Dプリントを利用して、この設計課題をクリアした。ケルンのイグス本社では、3Dプリントによって200個に及ぶ高性能樹脂製パーツが作られた。これらのパーツは互いに連結し、世界初のD型形状加速制御リングに組み込まれている。
これまでの受賞者やアプリケーションに関する情報はマヌス賞専用サイト( www.igus.co.jp/manus )で閲覧できる。