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SEMICON Japan 2024

 

ジェイテクト、連続鋳造設備用の長寿命自動調心ころ軸受を開発

 ジェイテクトは、連続鋳造設備用の長寿命自動調心ころ軸受「JHS®330」を開発した。材料の合金成分と熱処理の最適化により、従来軸受比2倍の耐摩耗性を実現するほか、高性能オイルシールの採用により、密封性とリップ部潤滑性を高めている。2021年1月に同社国分工場で量産を開始(オイルシールはグループ企業の光洋シーリングテクノで製造)する予定で、国内外の製鉄メーカーへの提案を進め、2025年までに1億円/年の売上を目指す。

 同社では鉄鋼設備用軸受の長寿命、高耐久性を実現した製品「JHS®(ジェイテクト・ハイパー・ストロング)軸受」のシリーズ化を進めている。今回の開発品は、2009年に発表した第一弾の圧延機ロールネック用長寿命高耐食軸受「JHS®520」、2010年に発表した第二弾のセンジミア圧延機バックアップロール用高性能密封軸受「JHS®210」に続く、鉄鋼設備用長寿命・高耐久性軸受の第三弾となる。

 

連続鋳造設備/自動調心ころ軸受
連続鋳造設備/自動調心ころ軸受


 連続鋳造設備は、溶鋼を凝固させて半製品である鋳片に鋳造する設備で、軸受の使用環境は、重荷重・極低速回転と非常に過酷となる。

 連続鋳造設備には自動調心ころ軸受が多く使用されるが、これらの過酷な使用条件により軸受の軌道面に顕著な二山状の摩耗が生じる。この摩耗が進展すると、はく離や割れにつながり、設備の突発的な停止などの不具合が生じる。

 

自動調心ころ軸受の外輪軌道面摩耗イメージ/自動調心ころ軸受の破損例
自動調心ころ軸受の外輪軌道面摩耗イメージ/自動調心ころ軸受の破損例


 また、連続鋳造設備で製造する鋳片は非常に高温で、凝固させるために多量の水が使用されるが、この際の軸受内部への水および水蒸気の侵入も軸受に大きなダメージを与え、軸受の耐摩耗性・密封性の向上が生産性向上への大きな課題となっていた。

 そこで同社では、材料成分見直しと熱処理の最適化を行い、従来品比2倍の長寿命・高ロバスト性を兼ね備えた軸受を開発した。

 さらに軸受箱に使用されるオイルシールも改良することで、トータルでの信頼性向上を目指した。

 

ベンチ評価における外輪軌道面の摩耗面積比
ベンチ評価における外輪軌道面の摩耗面積比


 開発品では、微細炭窒化物の析出強化による軌道面の高硬度化や、ミクロ組織構成の最適化による軌道面の強靭化、心部靭性向上によるき裂進展の抑制を図る材料合金成分と熱処理の最適化によって、耐摩耗性を従来軸受比で2倍に高めた。

 また、採用した高性能オイルシールでは、新設計のリップ形状により密封性を向上。グリース給脂圧調整機構を持たせたリップ構造としたほか、ニーズが高まっているオイルエア潤滑にも対応できる。

密封性とリップ部潤滑性を高めた高性能オイルシール
密封性とリップ部潤滑性を高めた高性能オイルシール

 

 同社では、今回開発した連続鋳造設備用長寿命自動調心ころ軸受の適用を進めることで、製鉄メーカーにおける安定操業とメンテナンスコストの低減に貢献していく考えだ。