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SEMICON Japan 2024

 

NTN、dmn値220万達成のEV・HEV用高速回転深溝玉軸受を開発

 NTNは、電気自動車(EV)の駆動システムであるeアクスルやハイブリッド車(HEV)のモータおよびトランスミッション向け高速深溝玉軸受のオイル潤滑下における高速回転dmn(軸受ピッチ円径(mm)×回転速度(min-1))値220万を達成した。

NTN dmn値220万達成のEV・HEV用高速回転深溝玉軸受 bmt ベアリング&モーション・テック
dmn値220万達成のEV・HEV用深溝玉軸受

 

 近年、産業界ではカーボンニュートラルの実現に向けてCO2排出量削減のための技術開発が進んでおり、自動車分野でも各国の自動車の燃費基準やCO2排出量規制が厳格化する中、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンに代わり、電動駆動ユニットで車両を駆動するバッテリー式EVの開発が急務となっている。

 省エネルギー・省電費に向けて電動駆動ユニットには低フリクション化、小型・軽量化の要求が高まっており、モータをインバータ・減速機と一体化したeアクスルなどの駆動ユニットの開発が活発化している。それに伴い、これらの小型・高速化するモータ用や減速機用に使用される軸受には、高速回転時の発熱や破損を抑える優れた高速回転性能が求められている。

 同社では、こうした高速回転のニーズに早くから取り組んでおり、2015年に「グリース潤滑高速深溝玉軸受」を開発した。本商品は、保持器材料の配合を見直して高強度化を図るとともに、保持器と転動体が直接触れるポケット部の形状を工夫することで遠心力による変形を最小化し、高速回転を実現した。また、その優れた高速回転性能を活かし、オイル潤滑下でも適用可能とし、各社車両に量産納入を拡大している。

 しかし、モータのさらなる高速化に向け、軸受を超高速で回転させるためには、遠心力による保持器の変形や強度不足などの解決に加え、転動体や各軌道輪の回転精度の確保、そして潤滑油の供給方法や油量の最適化が必要となる。

 同社は、軸受の発熱と潤滑条件による抜熱の熱収支バランスを最適化する供給油量の計算手法を確立した。さらに、遠心力による変形を抑制するため保持器の形状を見直すとともに、転動体および各軌道輪の回転精度の確保など内部諸元を最適化することで、深溝玉軸受でdmn値220万の高速回転を達成したもの。開発品は標準軸受と同一の取り付け寸法のため、標準軸受からの置き換えが可能。

 これら発熱と抜熱を適切に管理する手法を確立したことで、EV・HEVの開発・普及が進む中、各社車両のニーズに対して最適な高速回転性能を有する軸受仕様の提案が可能となる。

 今後、自動車市場においては、EV・HEVの普及に伴い高速回転に対応した軸受の需要がさらに拡大することが見込まれており、同社では引き続き、高速深溝玉軸受の市場展開をさらに進め、自動車の電動化および省電費・省燃費化に貢献していく考えだ。