JIMTOF2022開催、工作機械向けベアリング&モーション技術が集結
日本工作機械工業会は11月8日~13日、東京都江東区の東京ビッグサイトで「JIMTOF2022(第31回 日本国際工作機械見本市)」を開催した。多品種少量生産に対応する複合加工機やマシニングセンタ+協働ロボットなどの高生産性の自動化システム、スラッジ・切りくず回収やクーラント吐出などの消費電力低減によるカーボンフットプリント削減といった工作機械の出展が見られる中、工作機械の効率向上や高精度化、突発故障回避のための状態見える化、加工環境の改善などに貢献するベアリング&モーション関連技術が多数披露された。
以下にその一端を紹介する。
イグス ブース
「作業時間を減らしたい」「部品点数を減らしたい」「無駄なスペースを減らしたい」といった工作機械周りの課題を解決する、耐久性に優れ、可動部や捻回部でも安全に使用できるケーブル保護管や可動ケーブル、潤滑油不要ですべりで動くベアリングおよびリニアガイドなどメンテフリー・長寿命のモーション・プラスチック(無潤滑樹脂製部品)製品と、それらモーション・プラスチック製品をセンサ付きとすることでメンテナンス時期を予測しダウンタイムを防ぐ予知保全システム「スマートプラスチック」を紹介した。ブースでは今回、ユニバーサルロボット社製6軸URロボットの第7軸の機能としてリニアガイド「ドライリン」を使用したデモンストレーションを行った。
また、本年5月にドイツ・ハノーバーメッセで発表・披露したプラスチック製自転車「igus:bike」を国内初展示した。igus:bikeは「海洋プラスチックからモーション・プラスチックへ」という目標のもと作られた、90%以上がプラスチック製の都市型自転車で、イグスとオランダのスタートアップ企業mtrl(マテリアル)社とで共同開発した。可動部にイグスのモーション・プラスチックを用いることで、従来は金属でしか実現できなかったフリーホイールやギヤボックスなど負荷のかかる可動部品のプラスチック化を実現し、錆びることなくメンテナンスフリーで使用できる。将来的には、廃棄プラスチックのリサイクル素材で製造されたバージョンも販売予定であるほか、使えなくなったigus:bikeを回収し、その素材を使って新たなigus:bikeを製造することも計画されている。現在、ドイツでは2023年中の発売開始を目指して準備を進めている。販売元はmtrl社だが、将来的には世界中に製造拠点を置き、現地で出た海洋プラスチック廃棄物をリサイクルし、現地で自転車を製造する構想もある。また、イグスのスマートプラスチック技術を使用し、自転車部品の寿命をスマートフォンなどで確認できるようなシステムも開発中という。
NTN ブース
工作機械やロボットの進化を支え、地球や社会、ヒトの未来づくりへの貢献と各種ESG課題の解決を目指し、「Navigate your future」をテーマに「超高速/高精度技術」「IoT技術」「ロボティクス技術」の三つのゾーンに分けて商品・サービスを紹介した。
独自のリンク機構により、手首のような滑らかな動きを実現するロボティクス・モジュール商品である「i-WRIST®」を展示した。今回改良を加え、動作速度や取付け姿勢の自由度、最大可搬質量を1㎏から3㎏へと向上した。従来よりも幅広い機種のエンドエフェクタの搭載や製品の取り扱いが可能になり、様々な製造工程の自動化と効率化、製造現場の省人化に貢献できる。
また、ピッキングロボット用の部品供給機「TRINITTE」を紹介した。カメラおよびピッキングロボットと連携接続し、TRINITTEのパルス信号とカメラの画像処理信号をロボットに取り込むことで、安定した部品の連続ピッキングを実現。さらに、「工作機械主軸用センサ内蔵軸受ユニット」を披露した。軸受に隣接する外輪間座に内蔵したセンサで軸受軌道面付近の高度な状態監視を行い、軸受の焼付きを未然に防止。回転を利用した電磁式発電機と無線モジュールによってワイヤレス化を実現する。
ジェイテクト ブース
「カーボンニュートラル達成」をテーマとし、工作機械構成部品や生産ライン付帯設備、運用/保全を通じたソリューションを提案した。
精度よく回る(精度)」、「静かに回る(静粛性)」、「速く回る(高速性)」、「軽く回る(低トルク)」、「長く回る(長寿命)」という軸受の五つの基本性能を高い次元で実現する工作機械の高精度スピンドル用軸受「PRECILENCE®(プレシレンス)」を展示した。低速から高速回転領域で低NRROを実現。これらの特徴により、工作機械における高精度加工の実現に寄与する。
非接触回転ながら剛性が高い「エア軸受スピンドルユニット」を紹介した。潤滑油が不要のためランニングコストを削減できるほか、スティックスリップがないため高精度を維持しつつ、長寿命が可能。具体的には、多孔質絞りのエア軸受のため、オリフィス絞りや自生絞り等の他のタイプに比較して高い剛性を持つ。また、グラファイトの自己潤滑性により回転軸との接触時に凝着が生じないので、軽微な接触であれば再使用が可能。さらに、NRRO(非同期振れ)0.05μm以下の高精度の回転精度とエア消費量が40NL/min 以下の省エネ効果を実現している。
THK ブース
部品の状態を数値で見える化し、予兆検知を実現する製造業向けIoTサービス「OMNIedge」を紹介した。OMNIedgeは、2020年から同社の直動案内「LMガイド」にセンサをつけてそこから収集したデータを専用のアンプで処理することで現在の状態を数値で見える化する予兆検知サービスを開始、その後ボールねじ、アクチュエータ、さらにモーターなどの回転部品まで対象を広げてきたが、今回、工作機械の切削工具が抱える課題解決につなげるべく、後付け可能で面倒な閾値設定が一切不要な「工具監視AIソリューション」を披露した。切削工具には「寿命管理を最適にしながら工具コストを削減したい」、「欠損やチッピングによる加工不良、手直しロスの発生を防ぎたい」という課題があるが、従来は加工したワークの個数をもとに加工不良につながらないよう工具は早期交換されていたため、異常がなくても安全係数を見て交換することで相対的にコストが上昇する傾向にある。これに対し開発した「工具監視AIソリューション」は、後付け(レトロフィット)を可能にすることで、現場で稼働している年式やメーカーの異なる工作機械でも簡単に導入できる。切削工具の欠損/チッピングの検知、さらには摩耗度のモニタリング検知ができるため、機械加工の量産を手掛ける事業所では、工具寿命の最適化、工具交換のコスト削減、加工不良発生時の手直しロスの削減などにつながり、高い費用対効果が期待できるほか、センサから収集したデータはAIが自動解析し異常検知を行うため、繰り返し使用するほど精度が向上していく。
また、クロスローラーリングと同等の高剛性と高い回転精度を有する旋回軸受(高速複列アンギュラリング)「BWH形」を紹介した。複列に配置したボールを保持器で整列させる構造のため、ボールは安定したスムーズな動きができ、ローラーに比べて転動面から生じる発熱による温度上昇を抑制しながら高速回転が可能なほか、予圧調整が不要、組み付けが容易など取り扱いがしやすい。
日本ベアリング ブース
転動体にニードルローラーを採用し、高剛性、高運動精度、高減衰性を実現したローラーガイド「EXRAIL」を展示した。精密工作機械をはじめとする重荷重・精密駆動用途に幅広く対応できる。今回は特にEXRAILの紹介動画を新制作してブースで上映し、高剛性、高運動精度、高減衰性のキーとなるニードルローラーやローラーのスムーズな循環を実現するリテーナ、メンテナンスフリーを実現する潤滑油含浸樹脂、多方向からの給油に対応する給脂孔など主要構成要素の一部を3Dモーショングラフィックによる動作確認で示しながら、使いやすく設計のしやすいローラーガイドであることを紹介した。
そのほか、丸軸と外筒の軌道溝をボールが転がる直動軸受である「NBボールスプライン・ボールねじスプライン」を展示した。「NBボールスプライン」はボールの転がり運動を利用した直線運動機構で、ラジアル荷重とトルクを同時に負荷できることから、搬送装置やロボットなど幅広い分野で使用されている。「NBボールねじスプライン」は1本にボールねじとスプラインの軌道溝を設けた軸と高剛性で高精度なボールねじナットとボールスプライン外筒で構成。SPBR形はボールねじナットとボールスプライン外筒に高速回転が可能なアンギュラコンタクトの回転部を一体としたロータリーボールねじナットとロータリーボールスプライン外筒が組み合わされている。SPBF形にはロータリーボールねじナットとボールスプライン外筒が組み合わされている。NBボールねじスプラインは1軸で「位置決め」「直線運動」「回転運動」を行うことができ、これらの運動を組み合わせることでスパイラル運動やスカラ形ロボット、組立機、ローダーなど様々な機械に使用できる。
日本精工 ブース
”工作機械メーカーとともに高度自動化とカーボンニュートラルの世界を目指す”をコンセプトに、ボールねじ送り系の状態安定化技術「NSK Feed Drive Adjuster™」を披露した。工作機械の送り系の温度上昇によって起こる、ねじ軸の伸びによる機能の変化を最小限に留める。通常、ねじ軸の伸びが著しい場合は送り系の異常や故障を防ぐため、ねじ軸を支持している機構の片側で軸方向の変位を逃すことで対処しているが、これにより支持剛性が低下し軸方向の荷重を適切に受けられなくなり、工作機械の加工精度・品質に影響が出る課題があった。これに対しNSK Feed Drive Adjuster™は、片側のサポート軸受部に適度な剛性と動特性の維持を可能にするとともに軸方向の変位に追従することで、送り系が発熱などの環境変化の影響を受けても剛性の変化が最小限となり、軸方向の荷重を支持し続けられるため、加工の精度や品質、生産性の変化を低減できる。また加工調整のための暖機運転、冷却などによるロスタイムや環境負荷の削減にも貢献する。
また、耐焼付き性の向上とクーラント環境下での信頼性向上で環境にやさしいグリース潤滑の採用を拡大させ、オイルエア潤滑に比べ工作機械の消費電力削減や作業環境の改善に貢献する主軸軸受用グリース「ROBUSTGRD™」を紹介した。グリースを構成する増ちょう剤、基油、添加剤の最適配合により同社従来品比5倍の耐焼付き性能を実現するほか、グリース潤滑では加工の際に使用するクーラント液が軸受に浸入するとその水分で油膜が切れ潤滑性能に悪影響が出ることが懸念されるが、ROBUSTGRD™ではクーラントが浸入した際にその水分の影響による油膜切れを発生しづらく、信頼性を高めている。
ハイウィン ブース
「繋がる、広がる―Connect & Expand」をキャッチコピーに、工作機械Solutionと自動化・省力化Solution、Total Solutionの三つのソリューションを提示。
状態可視化システム搭載の直動機器「i4.0シリーズ」を紹介した。ボールねじやリニアガイドウェイ、単軸ロボットに温度・振動センサを付けて直動機器の状態を可視化することで、工作機械案内部の予知保全につなげることができる。
また、直動や回転部品だけではない、モーターやドライバーなどメカトロ部品を組み合わせ、産業用ロボットや超精密位置決めステージまでをカバーするラインアップによってユーザーの工数を削減する自動化・省力化の提案を行ったほか、直動機器から各種モーターやドライバー、そしてそれらを組み合わせたモジュールや超精密位置決めステージ、産業用ロボットなどの提供を通じて、設計・開発から、購買や組立、品質保証、生産管理まで、装置メーカーの工数削減に貢献するトータルソリューションの提案を行った。市に営業拠点を配置。ブースでは、神戸市内の約7500坪の敷地に研究開発機能を備えた本社工場を設立し、11月1日より稼働を開始したことをアピールした。