エレクトロニクス製造サプライチェーンの国際展示会「SEMICON Japan 2022」が12月14日~16日、東京ビックサイトで開催された。今回は半導体の微細化や高集積化、三次元化など製造の難易度/コストが高まる中で求められている半導体製造プロセスの「後工程」のイノベーションや最新技術動向を取り上げる展示・講演・交流会を組み合わせたイベント「APCS(Advanced Packaging and Chiplet Summit)」も開催された。
半導体の微細化や高集積化、三次元化などが進む一方で、生産性向上のための高スループット化や、半導体の歩留まり向上のためのコンタミネーションコントロール、ESD対策などが求められる中で、各種のベアリング&モーション技術・製品が多数展示された。
イグスは、「発塵で困っている」、「メンテナンスの手間や設置スペースを削減したい」といった課題解決をテーマに、可動用途に特化したモーション・プラスチック製品を紹介した。金属から樹脂への置き換えにより完全無給油・メンテナンスフリーで使用でき、低摩擦・耐摩耗特性により発塵を抑制することで半導体製造プロセスのクリーン環境に最適なモーション・プラスチック製品として、リニアガイド・リニアブッシュとの寸法互換があり静音・軽量で狭い設置スペースにも対応できる直動製品「ドライリン®」やクリーン搬送に最適な耐摩耗性に優れた摺動テープ「イグリデュール®トライボテープ」無潤滑旋回座ベアリング「イグリデュール®PRT」、無潤滑ピローブロックを含む樹脂製ベアリングユニット「イグボール®」などを展示。さらにギヤをはじめとする複雑形状部品を一体造形でき射出成形品と同等以上の優れた耐久性を実現できる3Dプリンティング技術を披露した。
木村洋行は、採用実績の多い宇宙機器と同様の真空環境、広い温度領域で作動する半導体製造プロセスにおいて幅広く適用されている「ケイドン超薄型ボールベアリング」を展示した。独自軸受設計に加えて、長年の経験に基づく内外輪および保持器の材質や潤滑剤の選定・適用によって、潤滑剤が250℃以上の高温下にさらされる条件や10-8~10-12Torrレベルの高真空下での運転を実現しつつ、希薄潤滑条件でのマイクロパーティクル発生の最小化や腐食性雰囲気への耐性、長寿命化を実現できる。また、スモーリー社の「ウェーブスプリング」(波状ばね)を紹介。ベアリング予圧用として配置、適切な荷重を加えることで、ベアリングの作動温度を下げ振動を低減、摩耗を最小限に抑制し静かで滑らかな性能を付与できる。ケイドン超薄型ベアリングとのセットでの適用を提案した。そのほか、2020年より取り扱いを開始しているエバリックスのピラー型をはじめとする電動アクチュエータや、特徴のあるローラースクリューといった直動製品を披露した。
ジェイテクトは、主にターボ分子ポンプに使用される磁気軸受とともに使われ、非常停止時にポンプを保護する「磁気軸受用タッチダウン軸受」を紹介した。新開発のMoS2コーティングにより長寿命を実現、機械の安定稼働に貢献する。また、高真空10-8Paまで対応可能で環境負荷物質を含まないフッ素グリースを封入した新開発の「真空・クリーン用軸受」を初出展した。特殊なフッ素系被膜をコーティングした軸受もラインナップし、幅広い真空・クリーン環境に対応。半導体製造装置に要求される高度なクリーン性維持に貢献する。さらに、様々なセラミック材料を使用した「耐食軸受」をラインナップ、ほとんどの腐食環境に対応可能。半導体製造装置内の強い腐食環境に対しても優れた信頼性があり、フィルム製造装置や、半導体製造工程内の酸化、エッチング工程などに使用されている。
THKは、強磁場や腐食性薬剤の影響を伴う特殊環境下でも、通常環境に匹敵する直動・回転案内性能が発揮できる軸受に求められる機能と非磁性を高次元で両立する、ボールねじといった「高機能非磁性・超高耐食製品」を紹介した。半導体の製造プロセスでは例えば、超微細回路パターンを描く電子線描画装置をはじめ、フォトレジストなどを用いたフォトリソグラフィ工程などは、磁気の影響を極端に嫌い、特殊薬剤による耐食性を極限までに要求される技術領域がある。これに対し磁気をほとんど帯びず、かつ軸受に適した硬度を持つ特殊合金「THK-NM1」を使用することで、比透磁率が1.005未満という高水準の非磁性を実現しつつ、その酸化皮膜によって極めて優れた耐食性を有する高機能非磁性・超高耐食製品は、同社の代表製品である直動案内「LMガイド」、ボールねじ、ボールスプライン、クロスローラーリングの「高機能非磁性・超高耐食製品」をラインナップしている。THK-NM1は、一般的な高硬度のセラミックス材と比較するとボール接触面が適度な弾性変形を伴うことで予圧の付与ができ、軸受に適した特殊材の中でも磁気の影響を受けずガタつきのない滑らかな動きが可能となる。
日本ベアリングは、注力製品の一つであるクロスローラーガイドの新製品として、従来製品であるSV形の設計を見直し大幅な性能アップを図った「HV形スライドウェイ」を参考出品した。2023年4月に発売される予定。設計見直しの一つが、ローラーと軌道台の接触長さを長くしたことで、ローラー/軌道台に発生する面圧を従来よりも小さくした。また、ローラーピッチを短くすることでローラー数の増加につなげている。これによって、従来品と比較して許容荷重を2倍に、定格寿命距離を7倍に高めている。HV形への置き換えだけで装置・設備の耐久性向上に貢献できるほか、同等性能でサイズダウン/コンパクト化が可能となる。また、コンパクトタイプのボールねじスプライン「SPBR-KP形/SPBF-KP形」を展示。いずれも1軸で「位置決め」「直線運動」「回転運動」が行え、これらの運動を組合わせることでスパイラル運動やスカラ形ロボット、組立機、ローダーなど様々な機械に使用できる。
ハイウィンは、「Semiconductor Subsystem」として、ウェハ搬送ロボットとウェハアライナーを展示した。ウェハ搬送ロボットは高剛性で高性能な自社製DD(ダイレクトドライブ)モーターやクロスローラベアリングを搭載し、12インチ(300mm)ウェハまで対応でき、主要コンポーネンツが自社製のためハードウェアとソフトウェアを統合し高品質でリーズナブルな価格を実現できる。ウェハアライナー「HPAシリーズ」は3軸制御の製品で、 HIWIN単軸ロボットモジュールを採用し、高速、高精度、高剛性、高効率、省スペースを実現。内蔵式コントローラーの設計で、外にコントローラー配置および配線スペースが不要で、同スペックのものでは容積が業界最小。インテリジェントな透光性レーザーセンサーを搭載し、透明、半透明、不透明な物の輪郭が検知できる。8インチ、12インチウェハに対応。最短4.9秒以内にウェハのエッジ検査が可能で、ウェハの中心および角度などの補正に対応できると同時にセンタリングも可能。位置決め精度は±0.025mm。