日本半導体製造装置協会(SEAJ、会長:牛田一雄ニコン会長)は1月12日、2022年~2024年の半導体・フラットパネルディスプレイ(FPD)製造装置の需要予測を発表した。
冒頭、挨拶に立った牛田会長は、「ロシアによるウクライナ侵攻が長期化し、平和の大切さを改めて感じている。ウクライナに早く平和が戻ることを願っている」と述べた後、エネルギー価格の高騰やインフレに対応した金融対策などから消費に減速懸念があり、パソコン出荷台数減少に伴いメモリーを中心に在庫調整局面にあること、また、地政学的リスクが世界経済、半導体製造装置を含む産業全体に影響を及ぼしていること、さらには昨年10月に発表された米国の先端半導体などを巡る対中輸出規制の日本企業への影響が懸念されることなどを表明。一方で、全産業を支える半導体の重要性が再認識され、半導体の製造に関わる支援が各国で強化され、日本においても半導体技術の研究開発拠点であるLSTC(Leading Edge Semiconductor Technology Center)と半導体の生産を請け負うラピダス(Rapidus)が設立されたこと、さらにはTSMCの新工場が熊本に設立されること、こうした一連の動きが半導体製造装置産業にプラスとなり、産業が元気な姿を社会に示すことで次世代を担う人材を集めていきたい、とした。「半導体はあらゆる産業と生活の基盤となっており、ディスプレイは産業や医療の発展を支えライフスタイルを変えていくことに寄与している。技術力、競争力を高めることで半導体・FPD製造装置の明るい未来を確かなものにしよう」と締めくくった。
2022年度の日本製装置販売高は、昨年10月に発表された米国の先端半導体などを巡る対中輸出規制の影響やメモリーを中心とした設備投資への慎重な姿勢を加味し、前年度比7.0%増の3兆6840億円と予測した。2023年度も暦年内の投資は慎重な見方を継続しており、5.0%減の3兆4998億円とした。2024年度はメモリーの本格回復に加えロジックも堅調な投資が予想されるため、20.0%増の4兆1997億円と予測した。半導体製造装置での4兆円超えは初めてとなる。
FPD製造装置については、2022年度はパネル需給悪化の影響が残るため、一部の納期スライドを反映して6.0%減の4520億円と予測した。2023年度はLCDを中心に大型投資案件そのものが少なく、20.0%減の3616億円と予測した。2024年度はG8基板での新技術を使ったOLED(有機ELディスプレイ)投資が本格的に始まるため、50.0%増の5425億円と予測した。この金額も過去最高となる。
SEAJ半導体調査統計専門委員会(メンバー13社)およびFPD調査統計専門委員会(メンバー7社)による需要予測と、SEAJ理事・監事会社20社による市場規模動向調査結果を総合的に議論・判断し、SEAJの総意としてまとめたもの。
ウクライナ戦争長期化やエネルギー価格の高騰、米欧の利上げ継続やインフレ傾向から、エレクトロニクス製品を含む世界的な消費減速の懸念が高まっている。昨年のパソコンやスマートフォンの出荷台数は前年割れとなり、それらに使われる半導体も現在はメモリーを中心として在庫調整の局面にある。
地政学的なリスクの高まりや、経済安全保障を巡る世界的な地域ブロック化の影響は、半導体業界全体に及んでいる。米国の対中輸出規制強化等は短期的な装置需要へネガティブとなる一方、世界各地域で半導体に対する政府補助金が計画されており、全体の投資を下支えする構造となっている。
WSTS(世界半導体市場統計)は、昨年11 月に最新の半導体市場予測を発表した。2022年の世界半導体市場規模は、前年比4.4%増と成長は鈍化する。2023年は同4.1%減と4年ぶりのマイナス成長を予想しており、メモリー価格の下落を反映し、かなりの下方修正となった。
2023年度の半導体製造装置市場は、DRAM を中心とした市況悪化を受けたメモリーの設備投資削減により、前年割れを予想している。2024 年度はメモリーの本格回復に加えて、世界各地域における大規模なロジック投資が計画され、高い成長率に戻ることが期待される。
多少の増減はあってもデータセンター投資やハイエンド品のスマートフォン需要は底堅く、車載用途では自動車1台あたりに搭載される半導体もさらに増加する。従来型のパソコン、スマホに加え、5G、IoT、AI、データセンター、自動運転、EVとパワー、産業機器等が、中期的に半導体製造装置の需要を健全に牽引していく見方は従前と変わらない。
先端ロジックではいよいよGAA(Gate-All-Around)と呼ばれる新しいトランジスタ構造が採用され、チップレットといったパッケージ技術の進化が、性能とコスト面のバランスを側面から支えていく。高い演算性能と低消費電力の両立は、将来のカーボンニュートラル達成の観点からも必然とされており、持続的な技術革新が装置需要を後押しする。
2022年度の日本製半導体製造装置の販売高は、大手メモリーメーカーの投資が前半に集中したことを考慮し、5.0%増の9558億円と予測した。2023年度も全体として安定した投資が見込まれ、5.0%増の1兆36億円とした。2024年度は大手ファウンドリーの投資本格化に期待し、20.0%増の1兆2043億円を予測した。
2022年度の日本製FPD製造装置の販売高は、最新の設備導入時期を精査した結果、6.0%減の4520億円を予測した。2023年度は、LCD投資の多くが見送りとなったこと等を反映し、20.0%減の3616億円とした。2024年度は、2023年度の投資抑制によるパネル需給の好転と、新技術を用いたG8基板のOLED投資の本格化を期待し、50.0%増の5425億円を予測した。