エボニックは、持続可能なガス経済に向けてエネルギー部門の脱化石化をオーストリア、シェルフリングにて進めている。オーストリアのシェルフリング・アム・アターゼーにガス分離膜用の新しい中空糸製造工場を立ち上げた。新しい生産能力により、バイオガス、窒素、水素および天然ガス用途におけるSEPURAN®膜の力強い継続需要に応えることが可能。エボニックは新工場に数千万ユーロ台の投資を行い、シェルフリングで約30人の新規雇用を創出した。SEPURAN®膜は日本国内ではポリプラ・エボニックが販売している。
スマートマテリアル部門の責任者であるローレン・ケルセン氏は、「メンブレン(分離膜)事業成長の道筋は、グループの新しいサステナビリティ戦略に明確に則している」と述べる。エボニックは2022年5月に、2030年までに持続可能性に優れた製品「次世代ソリューション」へ30億ユーロを投資する計画を発表した。次世代ソリューションの売上を現在の37%から2030年までに50%以上に増やすことを目指す。次世代ソリューションに対する急速な需要増は、エボニックに市場の平均を超える成長の可能性をもたらす。「当社のイノベーションによって顧客が自社製品をより持続可能なものにし、顧客のカーボンフットプリントの改善をサポートする。効率的なガス分離のための当社メンブレン技術は、当社の次世代ソリューションがすべての市場プレーヤーと緊密に協力し、持続可能な付加価値にどのように貢献しているかを示す生きた例」とケルセンは述べる。
新しい生産工場では、高機能樹脂がいくつかのプロセス工程を経て微細な中空糸に加工される。これらは、エボニックのSEPURAN®メンブレン技術の心臓部で、同社では高分子化学における長年の専門知識を活用し、基材である高機能樹脂の開発段階ですでに主要な膜特性を調整、極めて高い圧力と温度に耐えガス分離性能に優れた堅牢な膜を製造している。
「世界のガス市場は、当社のメンブレン技術に信頼を寄せている。シェルフリングの生産能力拡大というメッセージは、顧客とパートナーに対して、持続可能なガス経済へのエネルギー移行を加速させるというエボニックのコミットメントを示す重要なシグナルとして発信している。将来のエネルギーミックスは、バイオガス、グリーン水素、およびさらなる合成化学品になると考えている。当社はすでに、この変革期における市場成長のために、製品ポートフォリオと生産能力の拡大に取り組んでいる」と、エボニックのメンブレン イノベーション 成長分野部門の責任者であるゲッツ・バウムガルテン氏は語っている。
エボニックはすでにシェルフリング・アム・アターゼーでの分離膜製造を完全なる再生可能エネルギーで賄っている。風力、水力、バイオマスからのグリーン電力は、長年にわたり生産施設の重要なエネルギー源となってきた。また、2022年初頭からは、製造に必要なガス需要を地産のバイオメタンで100%満たしている。環境にやさしいエネルギー供給に切り替えることで、エボニックはオーストリアでの直接的な年間CO2排出量を約4000t削減している。
エボニックは、メンブレンを六つのイノベーション成長分野の一つに挙げている。開始10年で同社はガス分離膜の世界的な技術リーダーとなっている。SEPURAN®中空糸膜は、メタン、窒素、水素などのガスを混合ガスから分離するのに非常に効率的。エボニックのメンブレン技術は、より精密なガス分離とより高い生産性を得意としている。
効率的な窒素生成のためのSEPURAN® N2膜は、例として飛行機の燃料タンク内の不活性化に使用されている。SEPURAN® Noble膜は、天然ガスパイプラインで輸送されるメタンと水素の混合ガスから特定のポイントで水素を抽出する。SEPURAN® NGは、CO2濃度の高い天然ガスからの効率的な分離を可能にする。SEPURAN® Greenは、有機および循環型供給源からの効率的なバイオガス分離 処理を可能にする。