エレクトロニクス製造サプライチェーンの国際展示会「SEMICON Japan 2024」が12月11日~13日、東京江東区の東京ビッグサイトで開催され、延べ10万3165人が来場した。
今回は、変化する半導体~システム全体の設計・検証分野に注目して、現状の課題や次世代の方向性を共有するサミット「Advanced Design and Innovation Summit」(ADIS)が初めて開催されたほか、後工程、パッケージ分野の材料、開発環境、デバイス、製造にフォーカスした第3回目となる「Advanced Packaging and Chiplet Summit」(APCS)や、「半導体と医療」をテーマにした講演と「AI Summit」と題する講演などが行われた。
半導体製造装置において、3D構造を伴った微細化の進展や、微細化によらず集積度を向上できる3D NANDフラッシュメモリーの高度化などが進む一方で、生産性向上のための高スループット化や、半導体の歩留まり向上のためのコンタミネーションコントロール、ESD対策などが求められる中で、各種のベアリング&モーション技術(bmt)関連製品が多数展示された。
木村洋行は、採用実績の多い宇宙機器と同様の真空環境、広い温度領域で作動する半導体製造プロセスにおいて幅広く適用されている「ケイドン超薄型ボールベアリング」を展示した。独自軸受設計に加えて、長年の経験に基づく内外輪および保持器の材質や潤滑剤の選定・適用によって高真空下での運転を実現しつつ、希薄潤滑条件でのマイクロパーティクル発生の最小化や腐食性雰囲気への耐性、長寿命化を実現できる。また、SKFが新開発した「クリーン・ドライ環境向け自動給脂システム」を初披露した。クリーンルーム内に設置できる世界初のグリース自動供給システムで、ドイツのフラウンホーファーIPAによりISO 14644-1に基づいて評価を実施し、クリーンルームのクラス4という高い清浄度の認証を取得していて、クリーンルーム内に持ち込んでも全く問題がないレベルの潤滑システムとなっている。クリーンルームの外からプログラミングが可能な自動給脂システムのため、人が立ち入ることによる異物の混入がない。
THKは、強磁場環境でも高精度で安定した直線運動を実現する比透磁率1.02以下の低透磁率LMガイド「HSR M3形」を初披露した。LMレールとLMブロックに低透磁率材料を使用することで磁場環境下でも製品性能を発揮することができるため、磁場を気にすることなく設計することが可能。MRI装置や各種試験装置などの強磁場が発生する装置でも、HSR M3形を用いることで磁場の影響を受けず、スムースな動きを実現する。40HRC以上の硬度を有しているため、低透磁率材料として知られているSUS 316と比べ大きな荷重を受けることが可能で、LMブロックに作用する4方向(ラジアル方向・逆ラジアル方向・横方向)に対して、同一定格荷重になるよう各ボール列を接触角45°で配置することであらゆる姿勢での使用が可能となり、より幅広い用途に使用できる。
ニッペコは、半導体製造装置向け真空環境対応グリース「ロゲネストラムダTKM-03」を紹介した。摩擦抵抗、摩耗、発熱が大きくなる真空中において、潤滑性を保持しつつ、アウトガスの発生が極めて少ない=真空中の気化に伴うグリース基油の蒸発が極めて少ない真空環境対応グリース。基油にフッ素オイルPFPE(パーフルオロポリエーテル)を、増ちょう剤にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を配合し、耐熱性、耐真空性に優れる。グリースからの油の分離度合いを評価する「離油度」が非常に低い値を示しているほか、200℃および250℃で24時間評価した「蒸発減量」でもほぼ気化していない結果となっていて、優れた耐熱性と低アウトガス特性を有する。宇宙環境下のアウトガス試験法として米国航空宇宙局(NASA)が推奨している試験規格(ASTM E595)があるが、ロゲネストラムダTKM-03はASTM E595試験規格に合格し基準値を満たしているため、「宇宙環境(高真空環境)で使えるグリース」であることを訴求した。
日本ベアリングは、同社の強みとするスライドウェイ・スライドブッシュを中心に、各種のデモ機をまじえて直動製品を多数展示した。スライドウェイはローラーを使用した非循環方式のクロスローラーガイドで、リニアガイドと比較して①コンパクト設計、②軽く滑らかな動き、③高剛性・高精度の特長があり、半導体製造装置/検査装置/光学機器で主に使用されている。特に従来製品であるSV形の設計を見直し大幅な性能アップを図った新製品「スライドウェイHV形」を紹介。従来品の設計を見直した性能アップ製品で、置換えだけで装置・設備の剛性・耐久性向上やコンパクト化に貢献するほか、微小送りにも正確に追従し、高精度を必要とする光学機器、検査装置などに特に使用されている。真空環境、クリーン環境向けにオールステンレス仕様にも対応が可能。一方、スライドブッシュは丸軸を用いた直動案内で、精密で低摩擦な直線運動が簡単に得られることから、AGVなどの自動機から大型の生産設備まであらゆる用途で使用できる。ブースでは、コンパクトでありながら直線運動と回転運動の両方が可能なスライドロータリーブッシュの活用も提案した。
ハイウィンは、「HIWINカスタム真空DDモーター」と「HIWIN 真空対応リニアモーター」を披露した。カスタム真空DDモーターは、高真空10-8 mbarクラスに対応。特殊なパッケージ技術により真空システム内における最適化された放熱設計で、連続高トルク出力を実現する。また、真空対応リニアモーターは、真空用途の低アウトガス要件を考慮した幅広いラインアップを提供。高真空10-8 mbarクラスまで対応するほか、カスタムの磁気シールド設計により磁気干渉を防ぎ、半導体における電子ビームのアプリケーションを安定化させる。