メインコンテンツに移動

日本工作機器工業会、創立70周年式典を開催

 日本工作機器工業会(会長:寺町彰博THK会長)は5月20日、東京都千代田区の東京会館で「創立70周年記念式典」を開催した。当日は会員企業、関係団体などから約250名が出席した。

日本工作機器工業会 創立70周年記念式典 式典のようす bmt ベアリング&モーション・テック
式典のようす

 

 同工業会は1955年に設立、1985年に創立30周年記念式典を、2005年には創立50周年記念式典を、2015年に創立60周年記念式典をそれぞれ実施してきたが、急速に進む技術革新や内外環境の内外事業環境の急激な変化に即応するため、今回も10年間を一つの区切りとしてとらえ、今回、創立70周年記念式典を実施することとしたもの。

 式典の冒頭、寺町会長は以下のとおり式辞を述べた。「日本の機械産業は第二次世界大戦後の復興期に始まり、急速に発展を遂げた1950年代から1960年代にかけて、国内のインフラ整備や産業化の進展に伴い、機械産業が飛躍的に成長した。この時期に精密機械や重工業が特に重要な役割を果たし、日本は世界屈指の工業国としての地位を確立した。1970年代から1980年代にはエレクトロニクスや自動車産業が発展し、機械産業の多様化が進んだ。この時期に技術革新が急速に進み、ロボット技術やコンピュータ制御技術の導入が進んだ。これにより生産効率が大幅に向上し、高品質な製品を世界中に提供できるようになった。日本の工作機械産業も1970年代には急速に成長を遂げ、品質と性能の向上が追求された。この時期に日本の工作機械メーカーは、高精度かつ高効率な機械を開発し、市場での競争力を高めた。1980年代には日本の工作機械はさらに進化し、数値制御(NC)技術の投入により、自動化と生産効率の向上が図られた。さらに工作機械産業の発展をベースとして、半導体製造装置をはじめとする最先端の製造装置ならびに周辺の機械産業の発展にもつながった。これ谷より日本の機会は世界市場での競争力を一層高めていった。また、工作機械等に重要な部品として提供した工作機器産業も、同様に高機能化を進めるとともに、信頼性の高い部品供給体制を整備した。一方で1990年代に入ると、バブル経済の崩壊やグローバル化の進展により、我が国の多くの産業が厳しい環境にさらされることになった。これに対応するため、多くの企業が生産拠点を海外に移転しコスト削減と市場拡大を図った。また、環境問題への対応も求められるようになり、エコロジカルな製品開発やエネルギー効率の向上に取り組むことが求められた。日本の工作機械産業もグローバル化の進展を図るため、海外市場への展開を積極的に行っていった。高品質な機械と優れたアフターサポート体制により、日本の工作機械は世界各国で高い評価を受けた。工作機器業界もこうした工作機械産業の国際競争に呼応し、さらに品質管理とコスト削減に注力してきた。2000年代以降、機械産業は再び変革の時期を迎えた。IoTやAI技術の進展により、スマート工場や自動化システムの導入が進み、より高度な生産体制が構築された。また、新興市場の需要拡大により、グローバルな競争力を維持するための技術革新が求められた。情報技術の進展により、工作機械もより高度な制御とデータ管理が可能となり、生産現場の効率化と生産性向上が実現した。また、工作機器をはじめとする部品産業においても、新材料や新技術の導入により、さらなる製品の性能向上が求められるようになった。これからの日本の機械産業は、さらなる技術革新と持続可能な開発を追求し、社会のニーズに応えることが求められるようになると思う。特にAIやロボティクス、グリーンエネルギー技術の活用が重要となるだろう。また、人材育成と国際協力を進め、世界中の課題解決に貢献することが重要となる。我々工作機器業界も、新技術の導入や各種技術への対応を図りつつ、社会に求められる製品を提供し、世界のユーザーのニーズに対応し、業界の発展を図っていく。一方で、今後の我が国の発展を考えた時、最先端技術の追求だけではなく、従来の先進国からグローバルサウスと呼ばれる新興国にマーケットが移行してきている中で、この動きにどう向き合い、どのように対応して地位を確保していくかが、今後の業界にとっての大きなポイントとなるだろう。今後も工業会が一丸となり、関係官庁、関係団体をはじめ皆様方の教えをいただきながら、一つずつ着実に課題を解決していくことによって、工作機器産業のさらなる発展を実現できることを確信している。本日の創立記念式典が工業会のさらなる発展に向けた力強い新たな第一歩となることを皆様方と誓い合いたい」。

日本工作機器工業会 創立70周年記念式典 式辞を述べる寺町会長 bmt ベアリング&モーション・テック
式辞を述べる寺町会長

 

 続いて、経済産業大臣表彰状が、魵澤恭一氏(関東精機相談役)、太田晶久氏(ケーエスエス会長)、小倉庸宏氏(小倉クラッチ社長)、堀越栄治郎氏(リューベ社長)に授与され、製造産業局長表彰状が黒田浩史氏(黒田精工社長)に授与された。表彰を受けた5名を代表して堀越氏が挨拶に立ち、「日本工作機器工業会が70周年を迎えるまでのこの間、我々は役員として、工作機器業界の発展が我が国および世界の幅広い産業界に貢献するとの思いをもって、会員企業と一体となって事業活動に邁進してきた。工作機器業界は、幅広い製造業に必要不可欠な重要部品を供給することによって、ものづくりの基盤技術を支える役割を果たしてきた。主要な需要業界は工作機械、半導体製造装置、ロボット産業などの基幹重要産業が多く、事業環境の急激な変化や昨今求められるSDGsに対応するためのさまざまな課題に迅速に応えるによって、さらなる信頼を獲得できるよう精進したい。この度の受賞は、日頃事業活動に貢献している役員および会員一同の功績に対する受賞と認識している。経済産業省をはじめ関係業界・団体各位、会員各位の協力・支援の賜物と感謝したい」と謝辞を述べた。

日本工作機器工業会 創立70周年記念式典 経済産業大臣表彰のようす bmt ベアリング&モーション・テック
経済産業大臣表彰のようす
日本工作機器工業会 創立70周年記念式典 製造産業局長表彰のようす bmt ベアリング&モーション・テック
製造産業局長表彰のようす
日本工作機器工業会 創立70周年記念式典 謝辞を述べる堀越氏 bmt ベアリング&モーション・テック
謝辞を述べる堀越氏

 

 また、学識経験者や永年役員、業界関係者、永年会員(会員歴40~70年の企業)に対し会長感謝状の贈呈がなされた。

 表彰状の授与に続いて、武藤容司経済産業大臣の祝辞を、経済産業省経済産業省製造産業局産業機械課長の須賀千鶴氏が以下のとおり代読した。「日本工作機器工業会は1955年の創立以来、標準化を通じた生産体制の整備や品質向上等に対する取り組みを通じ、製造業を支える重要産業である工作機器産業の健全な発展に貢献してきた。創立以来一貫して、工作機械に関する生産・流通等の調査、技術および安全性の研究、内外関係機関等との交流や協力を通じた普及・啓発など、精力的に事業を推進し、近年は人財育成や異業種交流、積極的な情報発信など活動の幅を広げつつ、業界のさらなる飛躍のために貢献してきた。この70年間を振り返ると、工業会及び会員企業の皆さまは、高精度な工作機械の基盤となる工作機器を提供することで、日本の製造業の発展に寄与し、業界の礎を築いてきた。戦後の復興期から始まり経済成長の波に乗り、国際競争が激化する中で、皆様の不断の努力と情熱があったからこそ、今日の日本の産業基盤が築かれたと言っても過言ではない。他方で、かつてのオイルショックやバブル崩壊、近年では東日本大震災や新型コロナウイルス感染症といった歴史的試練とも言うべき大きな環境の変化もあった。こうした中でも、新たな技術の導入と品質向上に向けた努力を続け、業界の基盤を強化し、我が国全体の産業競争力の強化に大きく貢献してきたことに深く敬意を表したい。昨今、工作機器産業を取り巻く環境は一段と不確実性を増し、また、目まぐるしい変化に直面している。例えば経済安全保障の観点からは、工作機械、産業用ロボットが経済安保推進法に基づく「特定重要物資」に指定され、高性能化の実現に不可欠なコア部品として、工作機器等が設備投資や研究開発の支援対象に位置付けられている。また、今年発足した米国新政権の関税措置をはじめ諸外国の政策による貿易摩擦は、業界全体にも大きな影響を与え、先行きの見えない状況を不安視する声もあるかと思う。経産省としては関係省庁と連携しながら、今後の戦略検討を進めていく。関税措置への対応にあたっては相談窓口の設置など、すでに着手している短期の支援策に加え、必要な政策の検討を政府一丸となって取り組んでいく。今後とも工作機器業界の事業環境を取り巻く多くの課題の克服に向けて、工業会の活動と十分に連携を図りながら、力強く政策を展開していきたい。70周年の節目を迎えた工業会がこれまで積み上げてきた歴史を土台にしつつ、新たな時代を切り開くべく、今後も業界をけん引して、工作機器工業の地位を一層確固たるものとして、さらなる発展を遂げることを祈念したい」。

日本工作機器工業会 創立70周年記念式典 武藤経産大臣の祝辞を代読する須賀氏 bmt ベアリング&モーション・テック
武藤経産大臣の祝辞を代読する須賀氏

 

 記念式典に続いて祝賀会が行われ、席上、寺町会長は、2024年の日本工作機器工業会会員企業の販売額が前年比8.2%減の1623億円となったこと、2025年の見通しとしては同3.1%増の1673億円と発表した。