メインコンテンツに移動

三洋化成工業、E-Axle向け耐摩耗・耐焼付きポリマー添加剤を開発

 三洋化成工業はこのほど、電気自動車(EV)の駆動ユニットであるE-Axle向けに、耐摩耗・耐焼付きポリマー添加剤「アクルーブ NS-100」を新たに開発した。

 本添加剤は、EV向け潤滑油(E-フルード)の低粘度化に伴う油膜の薄化や摩耗・焼付きリスクの増大といった課題に対応し、優れた耐摩耗性および耐焼付き性を発揮する。さらに、耐銅腐食性(銅に対して腐食性が低い性質)や電気絶縁性、酸化安定性といったE-フルードに求められる多面的な性能も兼ね備えており、E-Axleの高耐久化とEVの航続距離延伸・電費向上に大きく貢献する。

 世界的なカーボンニュートラル推進を背景に自動車の電動化が加速し、モーター・インバーター・ギヤを一体化した高効率な駆動ユニットであるE-Axleの採用が拡大している。E-Axleに用いられるE-フルードには、耐摩耗性、冷却性能、絶縁性、耐銅腐食性など、多面的な性能が求められており、その性能はEV全体のエネルギー効率や信頼性を左右する重要な要素となっている。

 中でも近年は、モーターの高性能化に伴う冷却性付与および粘性抵抗低減による航続距離向上を目的に、E-フルードの低粘度化が進んでいる。しかしその一方で、油膜が薄くなることによるしゅう動部や機械部品の摩耗・焼付きによる故障リスクが高まり、新たな技術課題となっている。

 三洋化成工業ではこうした課題に対応すべく、低粘度環境下でも高い耐摩耗性・耐焼付き性を発揮しつつ、E-フルードに求められる多面的な性能をバランスよく備えた新しいポリマー添加剤アクルーブ NS-100を開発したもの。

 新開発のアクルーブ NS-100は、従来、粘度特性向上などを目的にエンジン車用潤滑油向けに展開してきた「アクルーブ」シリーズで培った有機ポリマー技術を生かし、金属表面への吸着性を新たに付与した独自設計を採用することで、以下の特長を実現した。

1. 優れた油膜形成能と耐摩耗性・耐焼付き性

・側鎖に導入した吸着官能基により、低粘度でも十分な油膜厚を形成

・ポリマー成分として2wt(重量)%の少量添加で従来のE-フルードと比較して最大約25%の最大非焼付き荷重の向上を実現(四球試験法による評価、下図)

・摩耗や焼付きによる駆動ユニットの故障リスクを低減し、ギヤしゅう動部の高効率化・長寿命化に貢献

・リン化合物など他の添加剤との併用で、耐摩耗性・耐焼付き性のさらなる向上も可能

2. E-フルードに求められる必要な性能を具備

・最適化した有機ポリマー構造により、耐銅腐食性や電気絶縁性、酸化安定性など、E-フルードに必要な性能を具備

・銅板腐食試験、体積抵抗率測定、加速酸化試験等により、従来品と同等以上の性能を確認

 アクルーブ NS-100は、国内外の潤滑油メーカーでの実機評価において高い耐摩耗性と信頼性が認められ、すでに一部大手ユーザーでの採用が決定している。同社では今後も多くのユーザーのニーズに応え、高性能化・技術革新に取り組むとともに、電動化が進む各種モビリティや産業機械分野への展開も視野に入れて、持続可能な社会の実現に貢献していく考えだ。

三洋化成工業、E-Axle向けポリマー添加剤 bmt ベアリング&モーション・テック
四球摩耗試験による耐焼付き性の評価
アクルーブ NS-100の添加により耐焼付き性の指標「最大非焼付き荷重」が約25%向上。※市販のE-フルードに添加剤を3.3wt%(うちポリマー成分2.0wt%)添加、ASTM D2783に準拠し四球摩耗試験機を用い、試験条件:回転数1760rpm、室温、各荷重10秒間で評価を実施。試験球にはAISI 52100(直径12.7 mm)を使用、試験油量は10mL。摩耗痕径および焼付き発生の有無を基準に、最大非焼付き荷重を判定