自動車用動力伝達技術研究組合(TRAMI)は8月1日、東京都文京区の中央大学 後楽園キャンパスでの現地およびオンラインのハイブリッド形式により、「第7回 産×学連携講座—そのEV快適ですか?~サウンドデザインが創るクルマの未来~―」を開催した。後援は中央大学 理工学研究所、協賛はスマートサウンドデザインソサエティ(SSDS)。

午前の部は「高校生キャリアイベント」で、第1部としてマツダ・原澤 渉氏による職業講和「未来のクリエイターへ:自動車エンジニアのリアルな仕事・キャリア」が、第2部として「車両・部品展示」がなされた。
午後の部は「産学連携イベント」で、その第1部、学術講演会は以下のとおり行われた。
・「学から産へ:音のチカラで変わる未来~サウンドデザインの可能性~」戸井武司氏(中央大学)…戸井研究室では、生活に身近な「音」を研究テーマとして、技術力の高い企業との共同研究、最先端の研究設備を用いた研究を行っている。TRAMI関連のサウンドデザインとして本講演では、EVなどで静音化が進み小さな音が顕在化する中での快音設計によるものづくり・音づくりについて事例をまじえて紹介。快適かつ機能的なスマートサウンドデザインに基づくデジタルイノベーションものづくりが進展している中で、自動車における感性サウンドマップの構築や、快適感と覚醒感を両立する音づくりなど空間価値を高める研究事例を紹介した。

・「産から学へ:EVをもっと快適に!TRAMIが挑む”静粛性&快音化”技術の最前線」金子弘隆氏(日産自動車)…エンジン騒音がなくなり今まで埋もれていたパワートレインからの音、特に回転次数が多く発生周波数も高いモータノイズやギヤノイズなどが目立つようになっている。これに対するTRAMI音振動研究委員会の①加振力(回転アンバランス加振力、ギヤ・スプライン衝突加振力)の予測技術の研究、②振動伝達特性(電動モータ振動伝達、高周波ドライブトレイン振動伝達)の予測技術の研究、③電動車快音化指針の構築などの取り組みについて紹介した。また、産学連携イベントとして日本自動車研究所(JARI)のオープンラボにある5万回転対応のギヤボックス装置を見学し、高回転時のギヤ、モータ、インバータ複合の高周波音を体感したことなどを話した。

・「産と学の連携:TRAMIが目指す産学連携の事例紹介」芳賀慎悟氏(三菱自動車工業)およびTRAMI 産学連携拡大・人材育成タスクフォース…TRAMIでは、学の研究活動を産の技術開発・将来の技術革新へとつなげていくための産学連携の理想的な活動のサイクル(研究テーマ設定→研究環境の充実→研究成果の蓄積→ステークホルダーの拡充→産学人材育成)を描いているが、「産学の谷」によってこの理想的なサイクルがうまく回せないことがある。これに対し、実験を産学共同で行うことで互いに何を出し合えばよいかが分かってきて、徐々に学の得意分野と産の得意分野を生かした連携になり、産学の谷が解消されるという自らの経験が紹介されたほか、産学連携の成功事例として、モータの磁石内温度を測る研究を進め、その中で学生の成長が認められるなど人材育成も図られた事例なども紹介された。

産学連携イベントの第2部の車両・TRAMI展示では、車両展示として、エンジン回転数やアクセルの踏み込みなどに応じたサウンドを専用スピーカーから出力し実際のエンジンサウンドを補完するSUBARU BRZの「アクティブサウンドコントロール」のサウンド体験が行われた。また、部品分解展示として、SUBARU BRZのトランスミッションと、マツダCX-60の「e-SKYACTIV D M Hybrid Boost」のトランスミッションの部品が展示された。さらに、TRAMI研究(音振動研究委員会)のポスターセッションが行われた。




当日はまた、特別開催として、中央大学 音響システム(戸井)研究室見学ツアー「あなたの知らないサウンドデザインの世界」が実施された。