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ジェイテクト、2025 年度 (第21 回) 精密工学会技術奨励賞を受賞

 ジェイテクトは、公益社団法人精密工学会より、業績題目「加工ノウハウモデリングの開発によるモノづくり現場の課題解決」により、「2025年度 (第21 回) 精密工学会技術奨励賞」を受賞した。受賞者は、同社工作機械システム事業本部 工作機械技術部 磯村 和秀氏とイノベーション本部 成形プロセス研究部の小島 大氏、豊田中央研究所の宮嵜伊弦氏。

ジェイテクト 精密工学会技術奨励賞を受賞 左から、精密工学会 会長 山内 和人氏、受賞者の磯村和秀氏と小島 大氏と宮嵜伊弦氏、 ジェイテクト 研究開発センター センター長(精密工学会 賛助会員の会 会長)小野﨑 徹氏 bmt ベアリング&モーション・テック
左から、精密工学会 会長 山内 和人氏、
受賞者の磯村和秀氏と小島 大氏と宮嵜伊弦氏、
ジェイテクト 研究開発センター センター長(精密工学会 賛助会員の会 会長)小野﨑 徹氏

 

 精密工学会技術奨励賞は、精密工学分野において顕著な業績をあげた独創性・将来 性のある企業等の新進気鋭の研究者、技術者に対し、その努力と精進に報いるとともに、旺盛な研究意欲を高揚させることを目的として贈賞されるもの。

 日本のモノづくりは、少子高齢化による労働人口の減少とそれに伴う熟練者の減少、および知識伝承の課題に直面している。特に加工の分野では、熟練者の有する課題解決に対するノウハウが属人化しており、これを形式知として蓄積・活用する仕組みが求められている。

 今回の受賞は、これまでのアプローチでは活用が難しかった熟練者の知識とその思考過程を、「知識モデル」としてデジタル化し、可視化することで、モノづくり現場の知識伝承の効率化と生産性向上を実現したもの。

 ジェイテクトは、「技術をつなぎ、地球と働くすべての人を笑顔にする」というミッションに基づき、2030年までに目指す姿としてJTEKT Group 2030 Vision「モノづくりとモノづくり設備でモビリティ社会の未来を創るソリューションプロバイダー」を掲げており、このソリューションプロバイダーへの変革のために、既存製品の高付加価値化と新領域へのチャレンジの両軸での成長と変革を目指している。

 本開発は、熟練者の知識とその思考過程のデジタル化と、それを活用した加工支援で、ユーザーの困りごとに応え、日本のモノづくり技術を未来につなぐソリューションで、ジェイテクトでつながれてきたモノづくりのノウハウ、モノづくり設備に関するコンピタンスを生かして、豊田中央研究所との共創により実現した。

 本開発は、日本のモノづくりの課題への新たなアプローチとして、「知識モデル」と「知識モデル探索アルゴリズム」による加工現場における知識伝承と生産性向上の両立を目指したもの。加工に関する技術用語の因子とそれらの関係性を構造化し、知識の体系的な表現を可能にした。このモデルを活用し、熟練者の思考過程を可視化することで、知識伝承や現場での課題解決時の試行錯誤を大幅に短縮し、現象解明にも役立つ。

ジェイテクト 精密工学会技術奨励賞を受賞 知識モデルイメージ bmt ベアリング&モーション・テック
知識モデルイメージ

 

 本技術を用いた加工支援ツールを開発し、社内の教育や加工条件選定に活用した結果、新人教育では教育時間を約60%短縮、また条件選定では、中堅者比で75%、熟練者比で50%の時間短縮を実現した。

ジェイテクト 精密工学会技術奨励賞を受賞 左:新人教育での活用のようす、右:本開発を用いた加工支援ツール bmt ベアリング&モーション・テック
左:新人教育での活用のようす、右:本開発を用いた加工支援ツール


 さらに、知識モデル内の因子の関係性を自動決定する手法を開発し、開発当初の課題であった知識モデルの出力精度向上と構築の効率化も実現した。

 受賞者は「本開発は、製造業全体の課題である熟練者の知識伝承にアプローチするソリューション。本開発の活用で、ユーザーが加工技術をより深く理解できるようになり、知識伝承が効率的に行えるようになる。また、推奨される加工条件の提示や加工結果の予測が可能となることで、誰でも熟練者と同等の加工ができるようになる。今後も本技術の深化に努め、ソリューションプロバイダーとして持続可能なモノづくりの未来の実現に貢献していく」とコメントしている。

 同社は、「今後は、本開発を汎用円筒研削盤に活用し、研削加工のDXへの実現を目指している。また本開発は、知識を構造化し、活用可能な形で提供するという汎用性の高いものであるため、加工分野のみに留まらず広い分野において知識伝承や課題解決の支援に貢献できる。知識の蓄積と可視化を通じて、これまで暗黙知とされていた領域を形式知として整理し、未来のモノづくりに向けてさらなる発展への寄与を目指していく」としている。