IHIは3月15日~17日に東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された「第19回 FC EXPO―【国際】水素・燃料電池展―」に出展、様々な燃料電池システムの性能・コスト・信頼性要求に対応する、高効率の電動ターボチャージャ「ETCシリーズ」(https://www.ihi.co.jp/turbocharger/products/electric_turbocharger/index.html)を紹介した。
展示会では独メルセデスベンツ の燃料電池PHEV「GLC F-CELL」に搭載されている、世界初のタービン搭載電動ターボチャージャ「ETC-S(モータ出力11kW)」を展示。
また、大型商用車などへの燃料電池の適用拡大に伴い燃料電池システムの高出力化が進む中で、高出力スタックに対応してモータ出力を20kWに高めた「ETC-M」と、さらにモータ出力を30kWに高めた「ETC-L」の次世代ETC2種を展示した。
燃料電池システムは主に、水素タンク、燃料電池スタック(FCスタック)、パワーマネジメントシステム、電動コンプレッサで構成され、水素と空気中の酸素で直流電気を発生させているが、酸素の供給は電動コンプレッサで空気を圧縮して支えている。
ETCはコンプレッサ、タービン、モータ、軸受、インバータで構成。ETCで圧縮された空気(酸素)と水素タンクから供給された水素がFCスタックで化学反応し、発電されてバッテリーに充電され、充電された電気が主機モータの駆動やETCの駆動に使用される。FCスタックで化学反応した後に排出される排気ガス(湿り空気)と水はタービンを通過して外部に排出されるが、この際にタービンは排気ガスが持つエネルギーを回収しETCの回転をアシストする。使用条件に対して最適なコンプレッサとタービンの組合せを選定することで圧縮動力の30%程度の動力をタービンで回収でき、これによりモータやインバータの小型化が可能になる。
IHIのETCの特徴は以下のとおり。
(1)タービンアシストによる高効率化
・FCスタックから排出される排気ガスのエネルギーをタービンで回収することで,コンプレッサ必要動力の30%を賄い、ETCの小型化・消費電力削減が可能
・ETCの消費電力削減により、燃料電池システムの高効率化を実現し、用途に応じて小型化・高出力化が可能
(2)オイルフリー
・潤滑油ミストによる触媒の被毒に起因する燃料電池の性能低下対策のため、動圧タイプの空気軸受採用によりオイルフリーを実現
(3)起動停止運転が可能
・空気軸受しゅう動面へのコーティング適用により,アイドリングストップのような起動と停止時の一時的な接触状態での回転しゅう動に対応、ETCの起動停止運転を可能にすることで燃料電池システム未使用時の省電力化が可能
(4)高出力密度
・回転数の高速化により、量産実績のある従来機に比べ58%の出力密度向上
(5)モータとインバータの一体化
・モータとインバータを一体化し、合計サイズの最適化をすることで小型化を実現。これにより燃料電池システムの小型化が可能
IHIでは燃料電池スタックの出力に応じたシリーズ展開を進めており、ユーザーは必要とする出力ごとの選択が可能となっている。また、複数台のETCを用いることで大出力のシステムへの対応も可能となる。さらに、エアロパーツの最適化により最大限の効率を提供していく。