日本トライボロジー学会(JAST)が主催する最大のイベントである「国際トライボロジー会議(International Tribology Conference: ITC)」が9月25日~30日に、福岡市の福岡国際会議場で開催された。
ITCは4年ごとにJASTが主催する国際会議(2005年までは5年ごと)で、2019年のITC Sendaiに続いての開催となる。ITCでは、理論的研究から実用化を目指した研究までバランスのとれた発表が行われている。特に海外のトライボロジー(摩擦・摩耗・潤滑の科学技術)関連の国際会議に比べて、自動車分野をはじめ幅広い産業界で活躍するトライボロジー研究者・技術者が多数参加し発表するITCは、世界各国から多くの参加者が集まることで知られている。
今回のITC Fukuoka 2023の会議スローガンである「Reunite,Invigorate, Create an Inspiring Future」は、トライボロジーの仲間たちが出会い、新しいアイデアや開発に関して意見交換し、トライボロジーをより活発に、未来のトライボロジーについて議論する刺激的な機会を提供したいという実行委員会の強い思いを表現。特別シンポジウムではその会議スローガンのもと、「トライボロジーの原理」、「エンジニアリング・トライボロジー」、「トライボロジー解析」、「先進トライボマテリアル」、「バイオインスパイアード・トライボロジー」、「サステナブル社会のためのトライボロジー」の六つのセッションで、14名の著名なキーノート・スピーカー・招待スピーカーによる講演がなされた。
26日と27日の「プレナリー・トーク」では、英国Imperial College LondonのHugh Spikes氏が「“Reunite: Principles of Tribology” beiZDDP, Down but not Out」と題して、米国Texas A&M UniversityのAli Erdemir氏が「“Reunite: Engineering Tribology” Vanishing Friction by Bridging Fundamental Principles with Scientific Innovations for Real Engineering Applications」と題して、東北大学の久保百司氏が「“Invigorate: Tribology Simulation” Atomistic Tribology Simulations: Recent Advancement and Future Direction」と題して、独Fraunhofer IWSのVolker Weihnacht氏が「“Invigorate: Advanced Tribology Material” Development of High-performance ta-C-based Coatings for Tribological Applications Using Laser-arc Technique」と題して、講演を行った。
また、28日のプレナリー・レクチャーでは、東京大学の井出 哲氏が「Physics of Fast and Slow Earthquakes」と題して、講演が行われた。
トピックスとしてはまた、「Tribology fundamentals(トライボロジーの基礎)」、「Material and surface engineering(材料・表面工学)」、「Manufacturing and mechanical components(ものづくりと機械要素)」、「Lubrication and lubricants(潤滑および潤滑剤)」、「Micro-nano- and molecular tribology(マイクロ・ナノ・分子トライボロジー)」、「Tribosystems(トライボシステム)」、「Biotribology(バイオトライボロジー)」、「Education of tribology(トライボロジー教育)」などをテーマとするオーガナイズドセッション/ポスターセッションが行われた。
さらにシンポジウムとしては、「Instabilities in Tribology:Phenomena, Analyses, and Countermeasures(トライボロジーにおける不安定性:現象、解析および対策)」、「Mesoscopic Tribology Bridging the Gap between Nano- and Macro-scale(ナノ領域とマイクロ領域のギャップを埋めるメゾスコピック・トライボロジー)」、「Lubricants for Contributing to Carbon Neutrality and Sustainable Development Goals(カーボンニュートラルとSDGsに貢献する潤滑剤)」、「Latest Technology Trends for Lubricating Greases(潤滑グリースの最新技術トレンド)」、「Advances in Sealing Technology Contributing to Environment(環境に貢献するシール技術の進化)」、「The 4th Czech-Japan Tribology Workshop(第4回チェコ-日本トライボロジーワークショップ)」、「Early Career Tribologists Symposium(JAST-STLE Joint Session)(若手トライボロジストシンポジウム:日米トライボロジー学会ジョイントセッション)」、「JAST-GfT Joint Symposium(日独トライボロジー学会ジョイントシンポジウム)」といったテーマにおいて最新の発表がなされた。
会期中は、34社による企業展示が行われた(写真はその一部で、五十音順)。
会期中にはまた、スポンサー企業によるランチョンセミナーが実施され、Rtec-Instrumentsは「New tribology testers for EV (Electric Vehicle) development」と題して、同社の多機能トライボメーター(摩擦摩耗試験機)や二円筒/三円筒転がり疲労・耐ピッチング性評価試験機、真空トライボメーター、フレッチング試験機などを紹介した。
Optimol Instruments Prüftechnik/パーカー熱処理工業は、「Efficient and reliable tribotestings - Optimol Instruments is your partner for today's and future challenges」と題して、eAxleの要求する摩擦特性や耐摩耗性、耐フレッチング摩耗特性、材料適合性、電気特性などを試験評価できるSRV®5の諸機能について試験データをまじえて紹介した。
PCS Instruments/島貿易は、「Leaders in Tribology Test Equipment: Designing for new challenges」と題して、ITC Fukuoka 2023で国内初披露となった通電環境下での試験評価が行えるトラクション試験機「MTM-EC」と多環境対応摩擦試験機「HPR」を紹介。EVや水素エンジン車など新分野でのトライボロジー試験に有用であることを豊富な試験データをまじえて紹介した。