NTNは、独自開発した特殊熱処理技術「HA-C(High Antiwear and Capacity)」を深溝玉軸受に適用した「HA-C軸受」の提案を自動車市場などに向けて本格的に開始する。
HA-C軸受は、業界最高水準の高負荷容量化を実現する特殊熱処理技術HA-Cの適用により、軸受の小型・軽量化、高温寸法安定性や耐異物性、耐摩耗性の向上を実現する。同社では本商品を、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)の駆動源であるe-Axleや、HEVおよび内燃機関車向けのトランスミッション、コンプレッサーなど自動車向けアプリケーションに幅広く提案し、各種車両の省エネルギー化に貢献していく。2030年度に15 億円/年の販売を目指す。


HA-Cは、材料に硬く微細な析出物を多数分散させる手法などにより、極めて高い表面硬さを与えることで高負荷容量化を実現する、同社独自の特殊熱処理技術。
本技術を適用したHA-C軸受は、従来品と同等の寿命を確保しながら、軸受の外径を約15%小型化、幅寸法を約30%小型化、質量を約55%軽量化することが可能となり、燃費・電費向上を目的としたe-Axleやトランスミッションなど各種自動車の駆動装置に使用される軸受の小型・軽量化ニーズに対応する。
また、燃費・電費向上に向けて、駆動装置に使用される潤滑油では摩擦抵抗を抑えるため低粘度化する傾向にあるが、潤滑油が低粘度化した環境下では、軸受の各部品同士が直接接触しやすくなるために、軸受の寿命低下や摩耗が起こりやすくなる。さらに、駆動装置内の異物が軸受に侵入して軸受を損傷させる可能性もあるが、HA-C軸受は長寿命化に加えて耐異物性と耐摩耗性も高水準で実現、これらの苛酷な使用環境にも対応できる。
NTNでは、2024年5月に本特殊熱処理技術の開発を発表して以来、ユーザーからHA-Cの適用による軸受の小型・軽量化や長寿命化に関する問い合わせや要望が多数寄せられ、本技術を適用した軸受の量産に向けた準備を進めてきたが、性能検証などを重ね、本格的にHA-C 軸受の提案を開始することとしたもの。
同社では、HA-C軸受を、e-Axleをはじめとする各種自動車向けアプリケーションの小型・軽量化や効率化などに最適な商品として提案を進め、自動車のさらなる省エネルギー化に貢献していく。また、小型・軽量化や耐摩耗性などの特長を生かして、自動車以外にも幅広い産業向けの商品への適用を目指した開発・提案も進めていく。
HA-C軸受の特長(同社標準軸受比)は以下のとおり。
1.高負荷容量:静的負荷容量2倍、重荷重条件における転動疲労寿命が8倍以上に向上。高負荷容量化により、小型・軽量な軸受への置き換えが可能(置き換え例:軸受外径 が約15%小型化、幅が約30%小型化、質量が約55%軽量化)
2.耐異物性:異物混入潤滑下における転動疲労寿命が4倍以上に向上
3.高温寸法安定性:環境温度150℃における経年寸法変化率を1/2以下に抑制
4.耐摩耗性:摩耗量を1/300以下に低減