木村洋行、超薄型ボールベアリング、電動アクチュエータおよびローラースクリューを半導体分野や加工分野で適用展開
木村洋行(https://premium.ipros.jp/kimurayoko/)は長年にわたり販売に携わってきたケイドン社の超薄型ボールベアリングと、2020年から取扱いを開始したEWELLIX(エバリックス)社の電動アクチュエータについて、半導体分野や加工分野などでの適用拡大を推進している。
ここでは、それら製品技術の適用の利点について紹介するとともに、その利点を活かした半導体分野および加工分野での各種アプリケーションや、日本国内における今後の展開などについて紹介する。
超薄型ボールベアリング
概要と特徴
1941年に創業されたKAYDON(ケイドン)社は、1950年代に世界で初めて超薄型ボールベアリング(Reali-Slimシリーズ)を開発し量産を開始した唯一の専門メーカーで、現在はSKFグループとして超薄型ボールベアリングを中心に、あらゆる用途に応じたカスタムベアリングの開発も手掛けている。
ケイドン超薄型ボールベアリングは内径25.4~1016mmまでのサイズをくまなくラインナップしている。最大の特徴はベアリング断面が超薄型であるため、装置に占めるベアリングのスペースを最小化でき、装置全体の省スペース・軽量化が図れるため、設計の自由度が向上する点が挙げられる。一般的なISO規格・JIS規格のベアリングでは内径が大きくなるのに比例して断面サイズも大きくなるのに対し、ケイドン超薄型ベアリングは断面サイズでシリーズ化されており、内径が大きくなっても同じシリーズ内であれば断面サイズは変わらない。
ケイドン超薄型ボールベアリングには、ラジアル荷重を受ける深溝型(Type-C)と通常は2列以上の複列で用いてラジアル荷重、アキシアル荷重とモーメント荷重の複合荷重を同時に支えることができるアンギュラコンタクト型(Type-A)、この複合荷重を単列のベアリングのみで受けられる4点接触型(Type-X)がある。
ケイドン超薄型ベアリングの中でも特に、複合荷重を受けられる4点接触型を使用することで大口径中空シャフトへの置き換えが可能になるだけでなく、単列仕様にできるため軸方向の長さをさらに短縮できる。気体・液体の配管類、あるいは電気配線やスリップリング等を中空シャフト内に収納できるなど、フレキシブルで効率的なデザインにできる。
キングポストデザインのISO 7010組み合わせベアリングから4点接触型超薄型ベアリングで中空シャフトを用いた機構への置き換えではまた、内径寸法を大きくできるため耐モーメント荷重を50%程度向上させている。
回転軸に垂直に加わるラジアル荷重を支えるよう組み付けられたベアリングでは、例えばISO 6010深溝ボールベアリングでは下部約150°の範囲の転動体で荷重を分散支持しているが、ケイドン4点接触型では同じ荷重分布でラジアル荷重を支持しつつ、80%以上の軽量化・省スペース化を実現できる。
半導体分野でのニーズと適用
ケイドン超薄型ベアリングは1960年代のアポロ計画の宇宙服のヘルメットリング向けに採用され、その後も、米国航空宇宙局(NASA)の月面探査車向け等に宇宙空間の厳しい仕様環境に耐えるベアリングとして採用されている。
宇宙環境下では軽量・省スペース化が求められるとともに、真空環境、極低温~高温の幅広い温度領域で精密な動きを求められ、ベアリングにとって非常に過酷な環境での稼働と高い信頼性を求められる。そのため内外輪の材質だけでなく、ボールや保持器の材質、潤滑剤の選定などでケイドン社の長年の経験が活かされている。
こうした宇宙機器での実績からケイドン超薄型ボールベアリングは、同じく真空環境、広い温度領域で作動する半導体製造プロセスにおいて幅広く適用されている。
半導体製造プロセスにおいて軸受には、回転の高精度化を損なうことなく、真空~高真空への対応、電子部品や光学レンズに悪影響を及ぼすアウトガス対策やコンタミネーションの低減、コンタミネーション発生につながる摩擦・摩耗の低減、プロセス中で使用されるガスによる腐食への耐性、ドライエッチングやCVDなどのプロセスに対応した耐熱性などを持たせることが要求される。
これに対しケイドン超薄型ボールベアリングは、独自軸受設計に加えて、長年の経験に基づく内外輪および保持器の材質や潤滑剤の選定・適用によって、潤滑剤が250℃以上の高温下にさらされる条件や10-8~10-12Torrレベルの高真空下での運転を実現しつつ、希薄潤滑条件でのマイクロパーティクル発生の最小化や腐食性雰囲気への耐性、長寿命化を実現している。
ケイドン超薄型ボールベアリングのこうした性能のほか、半導体製造装置の回転機構の小型・軽量・簡素化が図れる省スペース設計によって、半導体製造プロセスにおいてはウェハ搬送ロボットからウェハ研磨装置、フォトリソグラフィー装置、検査装置など、前工程から後工程まで広範な装置に適用されている。
またケイドン社では宇宙分野から続く真空環境で高い信頼性をもって運転できるベアリングの材料技術・潤滑技術に関する豊富な知見とノウハウを備えており、クリーンルーム内でベアリング各部品を洗浄し、組み立てを行い、ユーザーの仕様に最適なグリースを封入して納入する「クリーン・パック」を行うことで清浄度の高いアプリケーションにも使用できる。
電動アクチュエータ
概要と特徴
木村洋行では2020年1月から、EWELLIX(エバリックス)社の直動製品の取扱いを開始している。エバリックス社は、SKFグループだったSKF Motion Technologies社を前身とする直動製品メーカーで、アプリケーションごとのニーズに合わせたカスタマイズのソリューションに定評がある。中でも特徴のあるピラー型電動アクチュエータは、ストローク長や荷重、速度、偏荷重など、アプリケーションごとの仕様条件に合わせた提案が可能で、高荷重という厳しい仕様条件に対応しながらも、低騒音かつ堅牢さが求められる厳しいニーズにも対応できる。
加工分野での適用
加工分野で適用の進む協働ロボットのアクセサリとして、ピラー型アクチュエータを協働ロボット用にカスタマイズし、協働ロボット自体を垂直方向に動作させることにより、作業動作範囲を拡大できる「LIFTKIT」を提案している。LIFTKITの垂直方向の最大ストローク長は500~900mmで、最大許容荷重は1500Nとなっている。
ロボットの基台としてピラー型アクチュエータである「LIFTKIT」を使用することで、設置面積を抑えつつロボットの昇降移動を実現でき、ロボットのアームリーチの有効範囲が立体的に拡大できる。
またLIFTKITと同様に、単軸横置アクチュエータに協働ロボットを接続し、搬送やピック&プレースなどロボットの水平方向の動作範囲を拡大でき、作業効率を飛躍的に向上できる「SLIDEKIT2.0」も提案している。ボールねじ駆動のSLIDEKIT2.0の水平方向のスライド長は100~1800mmで、最大許容荷重は10900N(動的)と12100N(静的)、最大動的モーメント荷重は2400 Nm(Mx)、1800 Nm(Mz)となっている。
直近ではベルト駆動のタイプが開発・追加され、水平方向のスライド長3000mmを可能としており、長い同一の生産ライン上にある、複数のセル生産装置の間でのワークの受け渡しや複数の加工工具の段取り替えといった作業の効率を高めることで、加工の生産性を向上できる。
ニーズに応じてSLIDEKIT上にLIFTKITを載せて併用することも可能であり、その場合協働ロボットの垂直方向と水平方向の動作範囲を大幅かつ同時に拡大できる。
SLIDEKITおよびLIFTKITは当初、ユニバーサルロボット(UR)社とのコラボによる6軸協働ロボットのアクセサリとしてカスタマイズされたが、現時点でUR社、オムロン、ABB社、台湾テックマン(TM)社の4社の協働ロボットへの適用が可能となっており、それぞれの協働ロボットのティーチングペンダントによって、協働ロボットとSLIDEKITおよびLIFTKITの動作制御が可能となっている。
遊星型ローラースクリュー
概要と特徴
エバリックス社の直動製品の一つとしてローラースクリューがあるが、実はローラースクリューはもともと、エバリックス社の前身の会社(SKF傘下となる前の創業会社)が世界に先駆けて開発・製品化しており、そうした意味でエバリックス社はローラースクリューのパイオニアといえる。
特に遊星型ローラースクリューに特徴があり、ねじとねじとのしゅう動という構造によって高剛性化を実現している。同サイズのボールねじよりも高荷重を受けられ、動定格荷重3994kNまで対応できるため、コンパクト化と耐久性の向上(長寿命化)が図れる。
エバリックス社ではローラースクリュー単体での提案だけでなく、エバリックス社製電動アクチュエータ内部のボールスクリュ―をローラースクリューにすることでさらなる性能向上を図り、以下のような用途でも適用されている。
加工分野での適用例
射出成形機やブロー成型機などの樹脂成形の装置では、油圧駆動アクチュエータが用いられてきたが、遊星型ローラースクリューを用いた電動アクチュエータに替えることで、制御性や分解能を向上でき、必要とされるエネルギーを大幅に削減できるほか、油圧作動油の管理といったメンテナンスコストが削減できるなど、生産コストの低減と生産効率の向上に寄与できる。
また、高圧付加の動作が必要とされるサーボプレス機などの金属成形の装置では従来、油圧アクチュエータが用いられてきたが、エネルギー消費量が多いことや制御性に劣ることなどが問題となっていたが、ローラースクリューを使用した電動アクチュエータに置き換えることで、高精度で再現性の高い位置決めと制御性の良好な荷重付加を実現、プロセスの品質と再現性を改善することで成形加工の生産性を向上させている。
今後の展開
ケイドン超薄型ベアリングは、軽くて安定した起動トルクと回転トルク、高い回転精度を実現できるといった利点から注目されてきているが、木村洋行ではさらに、上述した半導体分野での適用のように、軽量・コンパクトで厳しい条件で使えるベアリングであることを引き続き訴求していく考えだ。
超薄型ベアリングのパイオニアであるケイドン社は2013年に世界第一位のベアリングメーカーであるSKFのグループとなり、以来、SKFのノウハウ・知見を注入した基礎研究や生産技術を利用したものづくりを進めてきている。現在では「超薄型」を謳う後発のメーカーも出てきているが、SKF協力のもとでケイドンが実施した寿命試験結果を見ると、他社製との耐久性の差は明らかである。
ケイドン超薄型ベアリングは長年にわたる品質向上のための技術や製造上の工夫などの蓄積によって超薄型ながら高い負荷容量、長寿命化を実現している。ベアリングは各種機械を安定稼働させるための主要な機械要素であるため、木村洋行では、ベアリングの突然の故障に伴う機械・ラインの突発停止などがない、生産効率向上につながる信頼性の高いベアリングを選定してもらう取組みを強化していく。
一方、木村洋行では、2020年から取り扱いを開始しているエバリックス社の製品についての性能や利点に関する知見や適用の可能性についてもかなり把握できている。実績の豊富な医療分野での電動アクチュエータやローラースクリューの各種のメリットを加工分野などほかの産業分野にアピールし採用を促していく。
木村洋行では以前より、機械を正常に稼働させるための技術的サポートを重視している。ケイドン社、エバリックス社の各種製品の特質を活かして、量産時に本来の機能を発揮できる正しい使い方をユーザーに伝達・提案していくことで、現場の様々な課題の解決に努めていく。
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