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SEMICON Japan 2024

 

鉄道総研、2024年度技術フォーラムを開催

 鉄道総合技術研究所は8月29日と30日の両日、鉄道総研の研究成果や事業活動を周知させる目的で「2024年度鉄道総研フォーラム」を開催し、研究成果展示および試験設備公開を行った。

鉄道総研技術フォーラム 正門 bmt ベアリング&モーション・テック

 

 トライボロジー関連では、以下などの研究成果が紹介された。

A電気ゾーン

A1「光切断式電車線摩耗計測装置」…電車線の保守管理の効率化・高度化を目的として、トロリ線や剛体電車線の摩耗をその形状によらず非接触かつ連続的に計測可能な、光切断式摩耗計測装置を開発した。トロリ線摩耗計測装置は、最高速度360km/h、計測間隔50mm、摩耗計測精度±0.3mm(残存直径換算で計測可能)。

A2「集電材料の摩耗メカニズム解明」…トロリ線やすり板の摩耗形態を機械的な4種類、電気的な3種類に分類、各摩耗形態の発現メカニズムや、電気鉄道の摩耗現象を説明するために必要な要因を解明した。硬銅トロリ線と鉄系焼結合金すり板の組み合わせでは、機械的な摩擦熱や電気的なジュール熱に起因する接点の温度上昇によって、7種類の摩耗形態が存在することを明らかにした。接点温度に加え、すり板に蓄積される熱や、摩耗面の履歴を考慮することで、時々刻々と変化するしゅう動条件に対応した摩耗形態を推定できる。

鉄道総研技術フォーラム 光切断式電車線摩耗計測装置 bmt ベアリング&モーション・テック
光切断式トロリ線摩耗計測装置

B車両ゾーン

B6「ブレーキ摩擦材のSAICASによる材料強度分析」…表面・界面物性解析装置(SAICAS)を用いて測定した切削力の水平成分と切り込み深さから算出される「みなしせん断強度」を用いることで摩擦材の深さ方向の材料強度分布が得られた。500℃に加熱後の新幹線用ブレーキ摩擦材では材料強度の低下は表面から20μmの極表層にとどまったが、900度に加熱後の摩擦材では材料強度の低下が表面から200μm以上の深さに及び、200μmにおける材料強度は非加熱試料の60%程度まで低下していた。熱負荷が摩擦材の材料強度に与える影響をSAICASで定量化できた。

B11「車載型潤滑油状態監視装置」…鉄粉濃度センサと、センサからの出力をWi-Fiによりタブレット端末等に転送する無線機器で構成される状態監視システムを製作し、実物の気動車エンジンに設置できることを確認した。実物のエンジンを使用した台上試験により、状態監視システムが正常に動作し、エンジン油に異物を混入させた際の鉄粉濃度の上昇を検知できることを確認した。営業車両を使用した構内走行試験により、出区点検、仕業検査および駅停車時などにおける異常診断に対応できることを確認した。

B19「せん断ひずみを活用した車輪・レール間接触力・位置測定法」…車輪板部に生じる「せん断ひずみ」を横圧の尺度とすることで、接触位置が変化することに起因する測定誤差が小さくなることを見いだし、これを応用した横圧測定法を開発した。静荷重試験と輪軸回転試験を通じて、走行安全性評価の指標である脱線係数(横圧を輪重で割った値)の誤差を、現行法と比較して最大18%低減できることを明らかにした。現行の横圧測定法と提案した横圧測定法における接触位置変化の影響の受けやすさの違いを応用した、車輪・レール接触位置測定法を開発した。

 試験設備公開ツアーでは、走行中の台車に作用する荷重を模擬しながら最高速500km/hまでの車軸や輪軸の試験を行える「高速輪軸試験装置」や、実際のパンタフラフを使用して最高速度500km/hまでのしゅう動試験を行える「高速パンタグラフ試験装置」など五つの大型試験設備の見学がなされた。
 

鉄道総研技術フォーラム 研究成果展示会場のようす bmt ベアリング&モーション・テック
研究成果展示会場のようす