日本トライボロジー学会(JAST)は11月7日~9日、三重県伊勢市のシンフォニア テクノロジー 響ホール 伊勢(伊勢市観光文化会館)で「トライボロジー会議 2018 秋 伊勢」を開催した。
今回は、機械要素や潤滑剤、表面処理・コーティング、分析・評価・試験などに関わる研究221件が、一般セッションとシンポジウムセッション、国際セッションで発表された。
本大会でもまた、参加者がどのセッションで必要な情報が得られるかを分かりやすく提示するとともに、研究発表者に実学としてのトライボロジーの応用を考えさせる目的から、一般セッションの分類を「産業機械」、「輸送機器」といった応用分野を中心に変更。応用分野に分類が難しい研究などについては「学術」のセッションで発表がなされた。
また、シンポジウムセッションは、「潤滑油の超低粘度化を実現する添加剤・基油・配合技術」、「固体潤滑~故きを温ねて新しきを知る~」、「シールにおけるトライボロジー技術」、「エロージョンとその応用及びその周辺技術」の4テーマで開催された。
8日には特別講演会が開かれ、佐藤理史氏(名古屋大学)が「コンピューターが小説を書く日」と題して、櫻井治男氏(皇學館大学)が「伊勢神宮~森と祭りの2000年~」と題して、講演を行った。
9日にはまた、伊勢夫婦岩ふれあい水族館 伊勢シーパラダイスを会場に、懇親会が開催され、大会実行委員長の梅原徳次氏(名古屋大学)が挨拶に立ち、「トライボロジー会議の東海地区での開催は、2008年秋に名古屋で開催されて以来10年ぶりとなる。東海地区での開催ではこれまで、名古屋市内で行われてきたが、今回は世界的にも有名な伊勢神宮のお膝元である伊勢市で開催することとなった。しかしながら、伊勢市は観光都市で、大きな学会の講演会開催に適した会場はない。そのため、東海地区を中心としたトライボロジー関連企業・大学の実行委員の方々の知恵を集めて、今回は伊勢市で最も大きな文化振興・交流の場である本会館の隅から隅まで利用し、大ホール、展示室、舞台、大会議室等を、複数の講演室とし何とか大会開催が可能となった。会議のスローガンは、“古の 時を感じて トライボの 未来がミエる この伊勢で”で、実行委員会内で公募し、古林副実行委員長の案を採択した。参加者には伊勢神宮を参拝いただき、古を感じながら、最先端のトライボロジーを議論いただきたい」と述べた。
会期中は、メイン会場のシンフォニアテクノロジー響ホール伊勢に「企業技術・製品展示コーナー」が併設され、最新の製品・技術が多数紹介された。主な展示は以下のとおり。
アルテックは、Biolin Scientific社製の水晶振動子マイクロバランス応用・ソフトマター相互作用解析システム「QSenseシリーズ」を紹介した。従来のQCM(水晶振動子マイクロバランス)法と違ってΔfだけでなくΔDの値を計測、質量の変化に加えて最大7種の周波数(オーバートーン)によりリアルタイムでの分子構造の変化をとらえ、界面における膨潤プロセスや粘弾性特性・膜厚といった、特にソフトマターの解析に必要なパラメータが得られることをアピールした。
ジェイテクトは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で進めている宇宙用転がり軸受の長寿命化を目指した研究の一例として、人工衛星など宇宙機器の長寿命化をサポートするセラミック玉軸受を紹介。高速回転でも安定した低摩擦トルクを維持できることや優れた耐摩耗性を示すことなどの利点を謳った。関連して世界最大級のセラミックボール(直径4インチの試作品)を展示した。
島貿易は、英国PCS Instruments社製の「MTM2 トラクション計測器」を展示した。潤滑油、グリース、そのほかの流体の幅広い転がり、滑り条件でのトラクション係数を、ソフトウェアで作成したプロファイルによって全自動で測定できるシステムで、豊富なアクセサリーによりクラッチ、ブレーキ、ソフトコンタクトなどの試験にも応用できることを示した。
トリニティーラボは、精度・耐久性を向上し、機能をより充実させたトライボロジー・ハプティクス向け静・動摩擦測定機「TL201Tt」を展示した。直線しゅう動部にボールねじ仕様の高精度アクチュエータを採用することで、長時間の耐摩耗試験、低摩擦測定、激しいスティック&スリップ測定にも精度良い測定結果が得られることなどをアピールした。
堀場製作所は、組込み・設置型の非接触放射温度計「IT-480シリーズ」を展示した。測定温度範囲が-50℃〜500℃と広範で、業界最高水準の高精度(±1℃)、少ない温度ドリフト、繰返し性(再現性)0.5℃以内を実現でき、回転運動や直線運動など状態を選ばす測定できることなどから、ベアリングや直動案内などの転動面の温度管理に適用できることを紹介。トリニティーラボとのコラボで、上記「TL201Tt」で摩擦測定中の往復しゅう動面の温度を計測するデモを行った。
ダイセルは、爆轟法で得られる一次粒子(結晶)径4~5nmのナノダイヤモンド粒子を主成分とする「ナノダイヤモンド摩耗防止剤」を紹介した。同摩耗防止剤は過酷な摩擦条件(境界潤滑条件下)で顕著な摩耗防止効果を発揮、一般的な摩耗防止剤では充分に機能しないとされる高負荷しゅう動部品でも、摩耗防止効果が期待できると謳った。
MORESCOは、シリコーン油を主成分とし潤滑油およびグリース基油などに適用できる新しいタイプの潤滑剤「モレスコ ハイルーブ CTシリーズ」を紹介した。耐熱性(引火点240℃以上)、低温流動性(CT-32で流動点-60℃)、せん断安定性に優れるため、幅広い温度域で長期間安定に使用できることや、希望の粘度グレードに合わせてカスタマイズが可能であることをアピールした。