空スペース( http://www.coo-space.com/ )は、軸受で保持器を使用せずにボール同士を自律的に分散させる技術「ADB(Autonomous Decentralized Bearing )」に、直径が1/10万~1/100万mmのナノダイヤをコーティングした自律分散式転がり軸受「708ADB+ND」の販売を開始する。価格は15000円で1年後に1億円の売上を目指す。
同社は2007年に保持器を排除しつつ潤滑剤に頼らずに摩擦摩耗を減少させる転がり軸受ADBを開発した。新製品は、ADBの摩擦をさらに低減するナノダイヤ潤滑を組み合わせ、また、セラミックボールと内外輪の防錆処理によってオイルフリーを実現した。製品は軸径8mmのアンギュラ軸受のみだが、市販ベアリングからの改造も承るという。
ADB技術の概要 ADB技術は、保持器を使用せずに外輪軌道に凹部(分散起点)を形成することで負荷領域に侵入するボールを分散させる技術。凹部はボールが接触しないために、その回転半径が縮小する。これにより侵入したボールは、僅かに自転エネルギーが増加、代わりに公転エネルギーが減り減速する。逆に分散起点を脱出するボールは回転半径が増大することにより、自転エネルギーの一部が公転エネルギーに代って加速、後継ボールの間に隙間を作る。分散起点内のボールが減速する際に後継ボールが接触するが、凹部のボールは無負荷領域であるため、そのダメージは無視できる。
従来の軸受は、ボールと軌道の転がり接触面で公転方向に正逆方向の微小なすべりが生じる(図の黒矢印)。新製品は、ここに新開発のナノダイヤ技術を適用することで、すべりが転がりに変わるとともに、ナノダイヤの濃度を均等化する循環流(図の赤矢印)が生じ、領域外への流出を減らす。従来の軸受では、ナノダイヤが保持器とのすべりによって軌道から排除されやすく、これを循環利用するために油やグリースに混ぜる使い方は、高温や真空環境に強い固体潤滑剤の特徴を生かすことが出来なかったという。
同社のナノダイヤ技術はADBとの組合わせにより、転がり接触面の潤滑に特化、固体潤滑剤の特徴を引き出すとともに長い潤滑寿命を可能にした。同社が行った評価試験結果では、新製品がオイルフリー環境で、保持器付きグリース潤滑の軸受と比較してトルクが約50%低下した。また、摩擦係数は0.0015(トルク0.48 N・mm)以下を3000時間維持するという。