SKFは、電気自動車(EV)が2024年までに全自動車販売のうち10%を占めることになると予想(Deloitte社による予測)される一方で、内燃機関(ICE)を搭載した乗用車が依然としてこの先何年もの間市場に残ると見て、両者で求められる円すいころ軸受の一層の低摩擦化に取り組んでいる。
自動車分野では、燃料効率の改善と二酸化炭素(CO2)排出に対する世界的な規則を満たすために、ICEとトランスミッションのしゅう動部における摩擦損失低減が課題となっている。特にICEとEV車両のパワートレインにおける軸受への要求が強まってきている。
摩擦による動力損失は、従来型およびハイブリッドタイプのパワートレインのCO2排出を増大し、バッテリー式電気自動車(BEV)の1回の充電で達成可能な走行可能距離を短くする結果となる。そのため自動車メーカーではギヤボックス、減速機および差動装置に標準設計の円すいころ軸受ではなく、低摩擦タイプの円すいころ軸受を採用する傾向にある。
こうした中、SKFでは、特定のアプリケーションにおいて従来の円すいころ軸受と比べて動力損失を最大50%低減する低摩擦円すいころ軸受の開発に取り組んでいる。同社では、どんなアプリケーション向けにも特注製品を作ることのできる「ツールボックス」アプローチがあり、高度なシミュレーション技術を用いて各アプリケーションのニーズを特定した後、同社の技術者が接触角、転動体の数および寸法、さらに保持器の設計などのパラメーターを修正することで、高度に摩擦特性が最適化された円すいころ軸受を製作できる。
EVが効率的に動作するには、車を動かすモータが超高速で回転する必要があり、使用する軸受に大きな負担がかかる。SKFでは、モータによる高速回転、加速度、温度に対する耐性を確保する軸受や樹脂製保持器、潤滑剤を開発している。
自動車パワートレインの進化によって、軸受の性能要件の変更だけでなく、潤滑剤のフォーミュレーションの変更も余儀なくされる。パワートレインにおいて動力損失を低減するために、潤滑剤メーカーは低粘度オイルと特殊な添加剤を開発している。
SKFでは、これら新しい潤滑剤が軸受に与える影響については調査を進めており、例えば、一部の潤滑剤では摩耗あるいは軸受軌道面と転動体間の表面疲労を充分に防止できないかもしれないとしている。それに対するソリューションの一つとして同社では、軸受部品の浸炭窒化処理技術が有用として、汚染された環境や潤滑不良にさらされている軸受の実用寿命の向上に取り組んでいる。