NTNは、保持器とグリースの見直しにより、低トルクで耐グリース漏れ性と耐久性を大幅に向上させたフィルム延伸機テンタークリップ用軸受を開発した。プラスチックフィルムの生産性向上に寄与できる。延伸機メーカー、クリップメーカー、プラスチックフィルムメーカーなどに提案を進め、プラスチックフィルムの生産性向上とフィルム延伸機のランニングコストの低減に貢献していく。2023年度に5億円の販売を目指す。
プラスチックフィルム市場は、包装用途を中心に堅調に推移しており、近年は社会的関心の高まりを背景にバイオプラスチック、リサイクル原料を使用した環境対応フィルムのほか、食品ロスの削減に貢献するバリアフィルムなどの需要が拡大してきている。また、エレクトロニクス分野では、スマートフォンや液晶ディスプレイに欠かせないプリント基板にも耐熱性に優れるプラスチックフィルムが使用されている。
フィルム延伸機はプラスチックフィルムを加熱・搬送しながら薄く引き伸ばす装置で、テンタークリップは同装置上でフィルムの両端をつかんでレールを走行するため、ガイドローラとして複数の軸受が使用される。
テンタークリップには、延伸機の全長に応じて1 台あたり数千から数万個の軸受が使用されていることから、摩擦損失や交換によるランニングコストを抑える必要があり、軸受には低トルクと優れた耐久性が求められる。
また、テンタークリップの走行速度は生産性向上のために高速化する傾向にあるが、一般的に軸受内部のグリースは高速・高温では漏れやすくなり、その結果、フィルムの汚染や不測のメンテナンスの必要性が生じる。このことから、軸受グリースには、耐漏れ性に優れることが要求される。
今回開発したテンタークリップ用軸受は、「非接触シール」、内径を拡大しグリースの保持性を向上させた「新開発保持器」、および耐熱性に優れる「長寿命グリース」の適用により、低トルク化、グリース漏れの抑制、耐焼付き性の向上をすべて実現した商品となっている。
具体的な性能として、同社従来品(非接触シール形軸受)の低トルク性能を損なうことなく(軸受回転トルクが接触シール形軸受の1/4)、グリース漏れ量を70%低減、耐焼付き性を40%向上させている。
開発品は、軸受温度が230℃まで使用可能な中温仕様と、300℃まで使用可能な高温仕様をラインアップし、汎用プラスチックフィルムからエンジニアリングプラスチックフィルムまでの幅広い延伸温度に対応が可能となっている。