フェローテックホールディングス(https://www.ferrotec.co.jp/)は、2001年に上海において、半導体・FPD向け高純度プロセスツールパーツの洗浄サービス事業(以下、洗浄サービス事業)に参入して以来、銅陵、上海、天津、大連、四川と5拠点7工場に拠点を拡大し、現在では中国における洗浄サービス業界を牽引する主導的なポジションを獲得している。また、洗浄サービス事業を同社グループのストックビジネスの中核事業にするべく、さらなる成長戦略として拠点の増設、関連新規事業等を検討している。
ここでは、精密部品に対応する同社の洗浄技術および体制強化の状況について紹介する。
洗浄技術の概要:保有設備と技術
フェローテックホールディングスでは、長年培った経験を基に、半導体デバイスメーカーや液晶・有機ELといったFPD パネルメーカーの製造装置部品の洗浄サービスを行っている。半導体やFPD製造過程での不良デバイス発生を抑制させるために、ガスの処理などで製造装置部品に付着したコンタミネーションを除去する必要がある。コンタミネーションとは、半導体やFPD 製造過程で発生するガス状および粒子状の汚染物質のことで、不良デバイス発生の原因になる。
これに対しフェローテックでは、化学洗浄(図1)や超音波洗浄(図2)などによって、コンタミネーションの除去を行っている。
また、顧客の仕様に合わせてサンドブラスト処理(図3)やプラズマアーク溶射(図4)、セラミックコーティング(図5)など最適な表面処理を行い、部品の再生洗浄処理を行っている。プラズマアーク溶射は、プラズマジェットに粉末材を溶融させ、基材に吹き付けて皮膜を生成させる処理で、これにより耐摩耗性・耐熱性・耐食性・耐絶縁性などの機能が付加される。
また、高純度の半導体やプロセスパーツを最新の微細化対応設備で洗浄している。クラス100のクリーンルームも完備しており、ナノレベルの繊細で精度の高い洗浄が可能となっている。
さらに装置部品以外では、たとえば、製造装置向け治具・消耗材である「石英」「セラミック」製品などの再生洗浄などの依頼にも対応している。
フェローテックホールディングスの洗浄サービスは中国の半導体およびパネル製造の有力企業のほとんどに採用されており、中国での精密再生洗浄市場でシェアNo.1(60%)を占める。また、部品洗浄は定期的に行われるため、ストック型ビジネスとして、安定した受注、収益が見込まれる、同社の経営基盤を支える重要な事業となっている。
精密洗浄ビジネスの増強状況や今後の展開
部品洗浄の2021年3月期売上高は前年比35.2%の増収(図6)で、中国国内に特化した事業であり、半導体、およびFPD(有機EL、液晶)顧客の生産拡大に連動して毎年順調に事業規模を拡大している。半導体マテリアル製品と同様に、顧客の生産稼働に連動する「ストック型」事業のため、安定した売り上げの確保がしやすい(今後も事業拡大が堅調に続く見通し)。5拠点7工場を整備し、増産対応を継続していることから、中国国内でのシェアは60%に迫る。
上述の成長戦略の下で、成長をより一層加速させるために、中国子会社の安徽富楽徳科技発展股份(FTSA)を中国のハイテク企業向け市場である科創板市場(スター・ マーケット)へ上場させることが、フェローテックホールディングスグループの企業価値向上に資すると判断、上場準備に入ることが決議されている。
中国の半導体企業や有機ELなどのパネル企業向けに行う装置部品洗浄サービスはストック型ビジネスとして事業が拡大している。戦略製品である「部品洗浄」は、安徽省銅陵を中心に事業拡大の方針で、安徽省銅陵の政府系ファンドも出資先に加わり、今後事業拡大のプロジェクトを目指す。中国半導体、FPD顧客の新規プロジェクトが相次ぐ環境のため、5拠点7工場体制のうち銅陵第2工場での増産が予定されているほか、華南地区での工場建設も予定されている。このように引き続き顧客の近くできめ細かいサービスを提供し、積極的に洗浄ビジネスの拡大を進めていく計画だ。
装置部品洗浄の拠点自体は中国であり、同事業は中国市場のみで特化したビジネスだが、日本メーカーが自社装置を中国顧客(半導体など)に販売(導入)し、洗浄等の定期メンテナンスをフェローテックホールディングスに委託するといったケースも少なくない。なお、本事業に関する日本の読者などからの問い合わせについては、フェローテックマテリアルテクノロジーズ(https://ft-mt.co.jp/)が対応する。
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