DLC工業会が解散
DLC工業会( https://dlck.org/ )は5月23日に「2025年定時社員総会」を開催、同工業会の解散が決議された。この決議により、同日付でDLC工業会は正式に解散となった。
DLC工業会は2016年6月に設立され、DLC関連産業の発展を目指してDLCの国際標準化活動や関連講演会を開催するなどの活動を行ってきた。しかし、諸活動を担う人材を確保することが困難となり、今後の活動継続が難しいと判断したという。
admin 2025年6月10日 (火曜日)DLC工業会( https://dlck.org/ )は5月23日に「2025年定時社員総会」を開催、同工業会の解散が決議された。この決議により、同日付でDLC工業会は正式に解散となった。
DLC工業会は2016年6月に設立され、DLC関連産業の発展を目指してDLCの国際標準化活動や関連講演会を開催するなどの活動を行ってきた。しかし、諸活動を担う人材を確保することが困難となり、今後の活動継続が難しいと判断したという。
admin 2025年6月10日 (火曜日)未来生産科学研究所(Future Production Scientific research institute、FPS)は、2025 年度 第18 回の「岩木トライボコーティングネットワークアワード(岩木賞)」の募集を開始した。締切は9 月30 日。今回から新たに、環境に配慮し、省エネルギー化、省資源化、代替資源化や地球温暖化防止につながるトライボコーティング技術を表彰対象とする「環境賞」を新設する。当会ではまた、岩木賞表彰費用の賛助を呼びかけている。
岩木賞は、表面改質、トライボコーティング分野で多大な業績を上げた故 岩木正哉博士(理化学研究所 元主任研究員、トライボコーティング技術研究会 前会長)の偉業を讃えて、当該技術分野と関連分野での著しい業績を顕彰するもの。募集対象は表面加工、表面改質、表面分析、トライボロジー、コーティングに関わる研究・開発・技術・支援・交流・事業化などで著しい成果、業績(製品、サービス、学会発表や特許申請/登録されたものを含む)を上げた個人、法人、団体で、表彰対象は受賞業績が公表できること、FPS に参加できること、と定めている。
新設の環境賞を含む各賞の審査基準は以下のとおり。
【大賞】
・開発技術が世界的に高い水準にあり新規独創性に優れ、また実用化されており、経済的・社会的貢献が認められるもの
【優秀賞】
・開発技術が日本国内において高い水準にあり新規独創性に優れ、開発技術が実用化されており社会的貢献が認められるもの
【特別賞】
・開発技術が当該業界において高い水準にあり、新規/独創性に優れ、また実用化されているか、実用化の途上にあり、社会的貢献が認められるもの
【奨励賞】
・開発技術が当該業界において優れており新規/独創性に優れ、また開発技術が実用化の途上にあり実用化の努力が認められるもの
【事業賞】
・事業化技術または事業/ビジネスモデル、サービスなどが当該業界で影響力を有し、当該業界の知名度を上げる、インフラの構築を行う、社会生活に恩恵をもたらすなどの効果を通して、活性化、発展に貢献をなし、波及効果を生むなどの活動の成果、努力が認められるもの
【国際賞】
・開発技術または事業化技術または事業/ビジネスモデル、サービスなどが当該業界で影響力を有し、当該業界の我が国との関係において協力、連携、協調関係を育み、または当該業界の知名度を上げ、活性化、発展に貢献をなし、波及効果を生むなどの活動の成果、努力が認められるもの
【功績賞】
・大賞、優秀賞、特別賞、奨励賞の評価尺度と、事業賞、国際賞の評価尺度のいずれの面でも極めて顕著な業績が認められるもの
【環境賞】
・開発技術が環境に配慮したもので、省エネルギー化、省資源化、代替資源化や地球温暖化防止につながるものであり、技術的、社会的観点から優れ、他分野との連携関係を育み、当該業界の活性化、発展とSDGs につながり、波及効果を生む、等の活動の成果、努力が認められるもの
岩木賞受賞業績については、2026 年2 月20 日に開催予定のシンポジウム「トライボコーティングの現状と将来」で、表彰および受賞業績の記念講演がなされる。岩木賞に関する問い合わせ、申請様式の請求は、FPS 表彰顕彰部門岩木賞表彰事業部内 事務局まで(E-mail:award@e-shg.net)。
トライボコーティング技術研究会ではまた、岩木賞表彰費用の賛助を呼びかけている。
問い合わせ・申し込みは、岩木賞表彰事務局まで(E-Mail:award@tribocoati.st)。
当社編集部は9月26日、東京都丸の内で講演会「DLC・ダイヤモンドコーティングの技術と産業応用」を開催します。
本講演会では、耐摩耗性や潤滑性など基材表面にさまざまな機能を付与できるダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングおよびダイヤモンドコーティングの技術と、それら薄膜の各種特長を活用した自動車、切削工具、再生可能エネルギー・地熱発電での適用について、第一線でご活躍の講師の方々にご講演をいただきます。DLCおよびダイヤモンドコーティングの新しい適用を模索すべく、交流会を含めて、皆さまのご参加をお待ちしております。
主催:株式会社メカニカル・テック社 『メカニカル・サーフェス・テック』編集部
開催日時:2025年9月26日(金)
講演会:13時~17時(開場:12時30分)
交流会:17時~19時
会場:TKPガーデンシティPREMIUM東京駅丸の内中央 (東京都千代田区丸の内1-9-1 丸の内中央ビル 12階)ホール12D
参加費用:34,600円(税込み、資料代、交流会参加費含む)
プログラム(予定) ※各講演後に質疑応答の時間を設けております
※※都合により講師の方が変更になる場合があります。ご了承ください
・13:00~13:45 「自動車におけるDLCなどカーボン系薄膜の適用」デンソー株式会社 材料技術部 電気化学材料開発室 機能表面材料課(講師は人選中)
・13:55~14:40 「切削工具におけるダイヤモンドコーティングの適用」オーエスジー株式会社 R&Dセンター 技術開発グループ 製造技術開発チーム 村澤功基 氏
・14:50~15:05 表面改質関連の計測評価メーカーによるショートプレゼン①
・15:10~15:40 休憩
・15:40~15:55 表面改質関連の計測評価メーカーによるショートプレゼン②
・16:00~16:45 「地熱発電システムにおけるDLCコーティングの技術と適用」富士電機株式会社 先端技術研究所 中島 悠也 氏
・17:00~19:00 交流会
【お申し込み方法】
以下の受付フォームよりお申し込みください。
問い合わせ先
株式会社メカニカル・テック社 TEL:03-5829-6597 E-Mail:info@mechanical-tech.jp
表面技術協会 高機能トライボ表面プロセス部会は5月9日、岐阜市の岐阜大学 OKB岐阜大学プラザ(TOIC棟)で、第26回例会を開催した。今回は、CVD研究会および岐阜大学 工学部附属プラズマ応用研究センターとの共催となった。
開催のようす
当日は、CVD研究会会長の京都大学 河 元明氏による開会挨拶の後、以下のとおり講演がなされた。
「スーパーコンピュータを活用したダイヤモンドライクカーボンによる超低摩擦・超低摩耗実現のための計算科学シミュレーション 」久保百司氏(東北大学)…自動車において摺動部品界面の急激な摩擦係数の変動は、人命を脅かす事故につながる可能性がある。そこで、安定した低摩擦特性を実現できるダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜の最適設計を図るべく、原子レベルでの量子化学計算に基づくシミュレーションを実施、荷重の増加に伴うトライボ化学反応の解明を試み、なじみや焼付きといった泥臭い科学を量子科学計算で実現できることを示した。さらに同大学の保有するスーパーコンピュータを活用した反応分子動力学(MD)の超大規模計算により、摩擦現象に加えて摩耗現象の解明も可能と総括した。
講演する久保氏
「高活性原料を利用した原子層堆積法による薄膜形成技術の検討・開発」清水秀治氏(大陽日酸)…原子層堆積法(ALD)におけるプリカーサの吸着や、吸着種と反応膜の反応をモデル化することは、反応機構を考える上で重要で、プリカーサや反応剤の開発にあたっては、化学現象・物理現象を理解して進める必要がある。近年、半導体デバイスの微細化・高集積化およびそのための使用材料の拡大に伴い、反応性の高いプリカーサや反応剤が求められている。同社では特に、吸着種の反応が進みやすい高反応性ガスとして過酸化水素やヒドラジンに着目、これらの高反応性ガスを用いることで、反応温度の低温化だけでなく、薄膜に取り込まれる不純物の低減などの効果も期待できるとした。
講演する清水氏
「サムコのプラズマ技術によるALD装置・プロセス開発~未来を拓く薄膜技術~」古谷直大氏(サムコ)…同社のALD装置の特徴と、代表的な手法である高アスペクトのサンプルへの成膜が可能なサーマルALDと80℃の低温成膜が可能なプラズマ援用ALD(PEALD)の特徴について説明した後、サーマルALDによってアスペクト比40以上のトレンチにカバレージ性良くアルミナを成膜した事例や、PEALDによってアルミナを成膜し面内均一性と膜厚制御性を実現した事例などを紹介。ALDはナノレベルの膜厚制御性やピンホールフリーでコンフォーマルな成膜が可能なため、電子デバイスのゲート絶縁膜や半導体・有機ELのパッシベーション膜などに応用できるほか、光学関連にも適用できるとした。
講演する古谷氏
「被削材との凝着現象に着目した工具用CVD被膜開発」奥出正樹氏(三菱マテリアル)…切削加工時の凝着摩耗を低減するために工具用CVD被膜と被削材との親和性に着目。合金鋼に含まれるFeと従来材料系(Ti系化合物、Al系化合物)の親和性に着目すると、ぬれ性の大きい材料では異常摩耗が進行し、静的な高温接触角測定でも低い値を示した。Feとのぬれ性が悪いZr化合物では高温接触角の値が大きい傾向であった。被膜厚さとFeに対する非親和性を両立したTiZrCN被膜を作製し、工具用CVD被膜として極めて耐摩耗性に優れるMT-TiCN系に比べ、1.5倍の耐摩耗性を示す結果が得られた。被削材の金属成分とセラミックス被膜間の親和性に着目することで、さまざまな被削材に対して凝着摩耗抑制材料開発の指針が得られるだろうと総括した。
講演する奥出氏
最後に高機能トライボ表面プロセス部会 代表幹事の岐阜大学 上坂裕之氏による閉会挨拶で、例会は終了した。
kat 2025年5月19日 (月曜日)コニカミノルタジャパン(https://www.konicaminolta.jp/instruments/)は、コニカミノルタの光学技術を結集した分光測色計の最上位モデル「CM-3700A Plus」の販売を開始する。新製品は、高精度・高信頼性が認められ、さまざまな業界において基準器として採用されている「CM-3700A」と互換(※SCI/LAVの時)を保ちつつ、さらに繰返し性、器差の性能を向上した測色計としている。
分光測色計の最上位モデル「CM-3700A Plus」
同社ではすでに、分光測色計 CM-3700A Plusを用いたデモや同製品の見積り、製品の詳細説明などについて、対応を行っている。
分光測色計 CM-3700A Plusの主な特長は以下のとおり。
・高精度/高信頼性:⾼精度・⾼信頼性を追求することにより、器差と繰返し性が⼤幅に向上し、反射率が低いサンプルをより高い精度で測定できるようになり、黒色の繰返し性は、従来機種の半分以下と大幅に向上
・測定作業の効率化を実現:SCI/SCEを同時に測定し、測定時間が従来機種の約半分に短縮したことで、測定作業の効率化を実現。また、電⼦ビューファインダー機能でPCから測定位置を確認でき、位置合わせが容易になった。さらに、測定データと併せて画像を保存できるため、測定位置を画像で確認することが可能
・高い安定性を実現する波⻑補正機能:「ゼロ校正」、「白色校正」さらに「波長補正」により 、高い安定性、測定精度の維持を実現。同社独自の⾃動波⻑診断・補正機能「WAA(Wavelength Analysis & Adjustment)」により、測定器の波⻑ずれを⾃動で検出して補正
・透過色の測定が可能:拡散照明・0°受光(di:0°、de:0°)方式で透過色の測定が可能。ガラス、フィルターなどシートや板状の試料から食品、化粧品など液体試料まで幅広く対応できる
・A4サイズサンプル中心部の測定が可能:A4サイズサンプルの中心部を測定できるほか、従来のダンパー採用による衝撃緩和をそのままに、サンプルホルダーが全開保持も可能になっている
・環境温湿度計とサンプル温度計:環境温湿度計とサンプル温度計を備え、測定環境の温湿度やサンプル表面温度を確認・記録できる。彩度が高い色は特に温度の影響を受けるため、厳密な色管理にはサンプルの表面温度や環境温湿度の管理が重要だが、色測定と同時に測定環境の温湿度やサンプル表面温度を測定し、記録することで、より厳密な色管理を実現(サンプルの温湿度測定は反射測定時のみ)
kat 2025年5月12日 (月曜日)日本トライボロジー学会(JAST)の機能性コーティングの最適設計技術研究会(主査:岐阜大学・上坂裕之氏)と固体潤滑研究会(主査:東京科学大学・平田 敦氏)は4月18日に、名古屋市天白区の名城大学 天白キャンパス 新校友会館で、合同研究会を開催した。
開催のようす
当日は両研究会から開会挨拶がなされた後、以下のとおり、固体潤滑研究会から2件、続いて、機能性コーティングの最適設計技術研究会から2件の講演が、それぞれなされた。
話題提供1「特異なCore-Rim微細構造を有する超高温用耐熱工具材料およびその工具の開発」村上 敬氏(産業技術総合研究所)…粒径1μm程度かそれ以下のTiC0.5N0.5、W、Re混合粉末を加圧焼結するとCore(芯)-Rim(縁)微細構造を持ち、高温強度や靭性に優れるTi(C,N)-(Ti,W)(C,N)-W系サーメットが得られる。鋼板の摩擦撹拌点接合(FSSW)では接合温度が1000℃以上になるため従来工具材料での長寿命は難しかったが、開発したサーメットを用いた工具は、低炭素鋼板のFSSWで従来工具よりも長寿命を示した。同サーメットを用いた切削工具ではまた、100~200m/minの低速切削が強いられていたスーパーステンレス鋼について、800m/minでの高速ドライ切削で従来工具よりも長寿命を示した。インコネル718合金の恒温鍛造に必要な温度は約1000℃以上で従来工具では対応しにくいが、BN離型剤を塗った同サーメット製金型を用いると1000~1100℃でのインコネル718の真空恒温鍛造が可能となった。
講演する村上氏
話題提供2「スズ基薄膜の自己潤滑性」宇佐美初彦氏(名城大学)…スズ(Sn)基薄膜の実験的検証によって、Snの成膜により摩擦係数が低減・安定化し耐摩耗性が大幅に向上すること、Snの融点以上で熱処理を施すことで摩擦係数の低減・安定化に寄与することが分かった。また、ショットによる成膜ではSnは素地層に選択的に付着するため被膜は不均質で、これが摩擦に伴う凝着部の成長を抑制し、摩擦摩耗の低減に寄与している可能性が示された。偏析黒鉛が微細なねずみ鋳鉄ではより有効な手段となる可能性が高い。また、機械的に成膜した不均質構造の軟質金属薄膜の摩擦特性を評価したところ、青銅上のハイブリッドコーティング、セグメント構造薄膜はSn-Zn単層膜に比べ初期なじみ性に優れ、摩擦係数も低減。Sn-Zn基ハイブリッドコーティングが最も摩擦係数が低く摩耗も少ない結果となった。また、不均質膜では単層膜に比べ機械的性質にばらつきがあり、最表面の機械的性質の差異が微細な凹凸を形成し油膜を保持、低摩擦に寄与した可能性が示唆された。さらに、SnとZnがまばらに分散していることで凝着成長が抑制され、摺動を阻害しなかったために摩擦係数が低減したと考察した。
講演する宇佐美氏
話題提供3「Chemical Mechanical Polishing(CMP)の原理とその見える化が切り拓くイノベーション」畝田道雄氏(岐阜大学)…先端半導体を牽引する超精密研磨CMPプロセスの重要な副資材であるスラリーとパッドの要件について解説した後、CMPプロセスの見える化手法を用いた高機能副資材開発の取り組みについて紹介した。独自開発の研磨パッド表面性状定量評価手法「接触画像解析法」(マイクロスコープにより接触画像を取得、4種類の評価パラメータから評価)を用いて、研磨パッド表面性状が研磨レートに及ぼす影響について実験、連続バッチ研磨およびコンディショニング後の同一箇所による接触画像とパラメータの変化をモニタリングし、研磨レートが高まるパッド(とウェーハ)の最適接触条件を見いだした。また、ハイスピードカメラによりスラリー速度をモニタリングした結果、基板に対する砥粒の動きを最大化し研磨レートを上げるために、スラリーは砥粒が研磨パッドにしっかりと追従すること、研磨パッドは砥粒をしっかりと保持すること、との設計指針が示された。また、低い加工能率が課題の高効率パワーデバイスSiC基板を対象に、オゾンガスナノバブル援用の次世代CMP装置を開発、汎用スラリーを用いてSiC専用スラリーよりも高能率の加工を実現した。SiC基板表面のナノインデンテーション試験およびXPS分析の結果から、オゾンガスナノバブルによって基板表面に母材より低硬度の反応生成物が生成、それにより研磨(除去)が促進されたと推察した。
講演する畝田氏
話題提供4「表面プラズモン共鳴顕微鏡を用いた接触面観察」前川 覚氏(名古屋工業大学)…表面プラズモン共鳴を利用した手法は、高い界面選択性と感度(表面近傍のみの誘電率変化を感度よく計測することが可能)を利用して、潤滑膜の膜厚や密度の空間分布をin-situに可視化できる。接触面からの反射光強度の変化を捉え潤滑油密度の変化量を捉えることで、油膜圧力も測れることから、ここでは流体潤滑場のEHL油膜圧力分布の計測事例を紹介した。また、粗面の摺動による脂肪酸吸着膜のその場計測の事例を紹介、真実接触部の抽出と摩擦係数の同時計測が可能とした。さらに時間応答性がμsレベルと良好なため高時間分解能計測が可能で、摺動面の表面形状変化(表面テクスチャあり/なし)に対する圧力応答測定ができ、混合潤滑状態の圧力・油膜厚さの同時計測ができることを報告した。
講演する前川氏kat 2025年5月2日 (金曜日)
表面改質&表面試験・評価技術の情報誌「メカニカル・サーフェス・テック」の2025年4月号 特集「金型・工具の表面改質」、キーテク特集「熱処理」が当社より4月25日に発行される。
今回の特集「金型・工具の表面改質」では、炭素系材料であるグラッシーカーボンを用いたロール状モスアイ金型の開発について、インパクトスライド試験機を用いて膜種別寿命評価および各種下地処理がPVD膜寿命に及ぼす影響について、PVDコーティングを用いた焼入鋼加工用CBN工具による生産効率の向上について、受託加工において金型・工具に適用されるドライコーティングについて紹介する。
また、キーテク特集「熱処理」では、金属・工業加熱装置向けカーボンニュートラルレトロフィットサービスについて、表面設計コンソーシアムが開発を目指すオーステナイト系ステンレス鋼の耐食性・疲労強度向上技術について紹介する。
特集:金型・工具の表面改質◇グラッシーカーボンを用いたロール状モスアイ金型の開発・・・東京理科大学 谷口 淳、ジオマテック 菅原 浩幸
◇インパクトスライド試験によるコーティング下地処理(窒化、ピーニング、磨き)の研究・・・オーエスジー 南 裕太、鳥山 直之、福井 茂雄、石田 公哉、服部 貴大
◇焼入鋼加工用CBN工具による生産効率の向上・・・住友電工ハードメタル 佐近 亮輔
◇切削工具・金型におけるドライコーティングの展開・・・東研サーモテック 髙橋 顕 氏に聞く
キーテク特集:熱処理◇金属・工業加熱装置向けCNレトロフィットサービス・・・ジェイテクトサーモシステム 松原 周
◇オーステナイト系ステンレス鋼の耐食性・疲労強度向上を目的に複合処理開発を目指す表面設計コンソーシアム・・・編集部
クローズアップ「ペロブスカイト太陽電池の開発と評価」◇ペロブスカイト太陽電池の安定製造を可能にする自動スピンコーターの開発と変換効率向上に向けた測定評価支援・・・桐蔭横浜大学 池上 和志 氏、神奈川県立産業技術総合研究所 戸邉 智之 氏に聞く
◇ペロブスカイト太陽電池の性能向上と用途開拓に援用できるセンシングソリューション・・・コニカミノルタジャパン 西本 昌弘 氏×編集部
連載酒飲み世界紀行:第8回 ドイツビール編:「好きですKarlsruhe」・・・横浜国立大学 梅澤 修
トピックストライボコーティング技術研究会、第17回岩木賞贈呈式、第27回シンポジウムを開催
表面技術協会、第76回通常総会・協会賞など各賞授与式を開催
雑誌ご購入 admin 2025年4月23日 (水曜日)日本トライボロジー学会(JAST)自動車のトライボロジー研究会(主査:豊田中央研究所・遠山 護氏)とJAST日本海トライボロジー研究会(主査:小松大学・粕谷素洋氏)、JAST機能性コーティングの最適設計技術研究会(主査:岐阜大学・上坂裕之氏)、東海トライボロジー研究会(会長:岐阜大学・上坂裕之氏)は3月14日、石川県加賀市の大同工業 本社工場/致遠館で「トライボロジー合同研究会 in 加賀温泉」を開催した。
開催のようす当日はまず、大同工業・新家啓史社長が開会の挨拶に立ち、「当社は1933年の創業以来90年以上にわたってトライボロジーを実践してきた会社で、〝大いなる目的のため、一致団結して高遠なる理想実現に努力すべし”という創業からの「大同致遠」の精神を実践しつつ、チェーンなど自社製品の摩擦を制御し耐久性や効率を高める技術を追求し、ユーザーの製品の省エネや環境負荷低減に寄与してきた。しかし一社でできることには限りがあるため、皆様といろいろな方面で意見交換をしながら、新しい価値の創造や理想の追求に愚直に取り組んでいきたい。本研究会を通じて、新たな知見や技術がさらに発展することを願う」と述べた。
挨拶する新家社長続いて、同社 総務部 広報チームの前田恭子氏が、同社のフィロソフィー(DID MUGENDAI)など会社の概要から、山中漆器の木地挽きろくろの技術から木製リム製造へと転換し、チェーン製造を手掛けていった事業の沿革について、さらには二輪・四輪チェーンなどモビリティ関連製品から、産業機械用チェーン・コンベヤシステム・バキューム搬送コンベヤなどの産業機械関連製品、いす式階段昇降機など福祉機器までの幅広い事業概要について紹介した。
会社紹介を行う前田氏その後、同社福田工場の塑性加工工場と四輪エンジンチェーン工場を見学した。塑性加工工場では、スプロケットなどの複雑・高精度な三次元形状をネットシェイプ化する「三次元プレス成形」とキー溝加工を高い面粗度・寸法精度で打ち抜きできる「精密せん断」を組み合わせた独自「ファインプレスフォーミング技術」を用いたプレス機などを見学。また、四輪エンジンチェーン工場では、エンジンタイミングチェーンのピン・ブッシュ・ローラー・内外プレートなど構成部品の成形、接合、研磨、熱処理から、組み立て、目視検査までの工程の見学がなされた。
福田工場での参加者の集合写真塑性加工工場の見学風景
工場見学後は、本社工場/致遠館に戻り、以下のとおり講演会が行われた。
まずは、日本海トライボロジー研究会を代表して、新潟大学・月山陽介氏が「往復しゅう動試験機によるチェーングリースの潤滑特性評価」をテーマに話題提供を行った。往復しゅう動試験機を用いてピンとブッシュの摩擦挙動を再現し、グリース潤滑面におけるディンプルの影響を調査した結果、ディンプルによってサイクル初期の摩擦挙動が安定・低減する効果が得られ、その効果はグリースの粘度が高いときに顕著に見られた。ディンプル加工は、ピン・ブッシュ間のなじみ完了に時間を要しかつ高粘度グリースを使用したチェーンにおいて、高い効果を発揮する可能性があると結言した。
講演する月山氏また、東海トライボロジー研究会を代表して、大同工業・関 秀明氏が「チェーンとトライボロジー:幅広い産業を支える摩擦と摩耗技術」と題して、話題提供を行った。電動化の進展によって、モビリティ用チェーンにおいては、高速回転かつ給油条件が厳しい環境が想定され、また、速度の増加に伴うしゅう動発熱が大きくなるため潤滑不足や高温化、それらに伴う摩耗促進が懸念される。これに対し、発熱・摩耗抑制のための潤滑方法(潤滑位置の違いによる評価)や表面硬化処理の検討を行った。潤滑方法によって発熱低減や摩耗低減につながることを実験で確認したほか、同社独自開発のVCN(バナジウム炭窒化物)被膜が高速しゅう動時の発熱に対して十分な耐性を有することを確認した。
講演する関氏さらに、機能性コーティングの最適設計技術研究会を代表して、東京都市大学・崔 埈豪氏が「摩擦発電機のトライボロジー分野への応用」と題して、話題提供を行った。電子機器の普及に伴い多くのセンサとそれらを駆動するための電源が必要とされている。これに対してバッテリー不要のセンサを作製できる手法として、優れたトライボロジー特性を有するダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜を四フッ化エチレン樹脂(PTFE)とともに帯電材として用いた、高耐久性・高効率の摩擦帯電型ナノ発電機(TENG)を開発した。DLCベースの滑り型TENGを用いた滑り軸受の状態監視システムの事例を紹介し、滑り速度やミスアライメント、潤滑油の欠乏、潤滑油の挙動などが観察できるとした。
講演する崔氏最後に、自動車のトライボロジー研究会を代表して、名古屋工業大学・糸魚川文広氏が「表面プラズモン共鳴を利用した油膜圧力計測と添加剤吸着挙動観察」と題して、話題提供を行った。表面プラズモン共鳴を利用した手法は、高い界面選択性と感度(表面近傍のみの誘電率変化を感度よく計測することが可能)を利用して、潤滑膜の膜厚や密度の空間分布をin-situに可視化できる。接触面からの反射光強度の変化を捉え潤滑油密度の変化量を捉えることで、油膜圧力も測れるほか、高時間分解能計測が可能なため、しゅう動面の表面形状変化に対する圧力応答測定ができ、混合潤滑状態の圧力・油膜厚さの同時計測ができる。さらに、粗面のしゅう動による添加剤吸着膜の状態計測事例を紹介、真実接触部の抽出と摩擦係数の同時計測が可能とした。
講演する糸魚川氏講演会終了後は、アパホテル加賀大聖寺駅前内「瑠璃」に移動し、技術交流会が和やかに行われた。
kat 2025年3月21日 (金曜日)表面技術協会( https://www.sfj.or.jp/ )は2月28日、東京都新宿区の工学院大学で「第76回通常総会および各賞授与式」を開催した。
当日は第75期事業報告、会計報告が行われた後、第76期事業計画、収支予算について審議、満場一致で可決された。事業報告では、第149回講演大会(2024年3月5日~6日)は工学院大学八王子キャンパスで開催したこと、第150回講演大会(2024年9月12日~13日)は北見工業大学で開催したこと、同協会が開催したセミナーの合計参加者が276名であったこと、ISO/TC107第36回総会を11月19日~22日に島津製作所で開催し、本分野新規国際規格提案などについて活発な議論が行われたことなどを報告した。事業計画では、第151回講演大会を東京都市大学世田谷キャンパスで、第152回講演大会を福岡工業大学で開催すること、ISO/TC107からの提案事項の審議、温度環境制御下での樹脂めっきの密着力測定方法に関する国際標準化、女性の協会活動への参画促進を図ることなどを確認した。
役員改選では、前期に引き続いて会長に平藤哲司氏(京都大学 名誉教授)、副会長に蒲生西谷美香氏(東洋大学 理工学部 教授)、辻 克之氏(太洋工作所 代表取締役社長)が再任。今期より新たに菅原博好氏(デンソー 材料技術部)、八重真治氏(兵庫県立大学 大学院工学研究科 教授)が副会長に選任された。
理事を代表して挨拶に立った平藤会長は「現在、当協会は会員の減少と事務体制の課題について、協会のサステナビリティに対して心配になるような大きな課題を抱えている。これは我々に限らずだが、どなたも変わらないとならない時代になっている。当然、当協会も変わらないとならないため、その努力はしていくつもりだ。一方、当協会の果たすべき役割はこれまでと変わらない。産学官の非常に良い交流の場を提供することが一つの大きな使命であろうと思っている。そのためには活動のブラッシュアップが大切だ。委員会や部会の活動などをより良いものにしていく。そうした価値のあるものを提供していれば需要はあるだろう。今後とも当協会の価値を高めるような活動を理事一同で行っていくので皆様のご協力をお願いしたい」と述べた。
挨拶する平藤会長 当日の席上では、「2025年度 表面技術協会 各賞授与式」が行われ、伊崎昌伸氏(豊橋技術科学大学 名誉教授)が業績「酸化物半導体層の電気化学的形成と太陽光エネルギー変換への応用に関する研究」で協会賞を受賞した。伊﨑氏は、酸化物半導体層の電気化学的形成と太陽光エネルギー変換に関し独創的および先駆的研究を展開し、優れた業績を挙げている。水溶液から酸化亜鉛層の電気化学的直接形成に世界で初めて成功した後、銅酸化物、銀酸化物、鉄酸化物、希土類酸化物層などの直接形成にも成功した。酸化物の電気化学形成反応機構を熱力学的に明らかにするとともに、異種酸化物の積層体やナノコンポジット半導体層の形成、電気化学不純物ドーピングへと展開し、酸化物形成のための電気化学反応機構を明らかにし、電気化学的製造技術を確立した。
また、電気化学的に酸化物太陽電池を構築し、最高変換効率(当時)を達成するとともに、ナノ構造やバッファ層の導入により高効率化を図るとともに、複数の異種酸化物層を組み込んだインタースタック光電変換層を提案し、その有効性を実証した。さらに、Ni-Al合金めっき膜、マルテンサイトFe-C合金(鋼)めっき膜、ガラス基板上化学的Cu層形成技術、鉄添加酸化亜鉛透明磁性半導体層、硫化物/ZnOナノワイヤシンチレータの電気化学的形成技術の開発へと展開している。
また技術賞では、東新邦彦氏(日本製鉄 技術開発本部 鉄鋼研究所 表面処理研究部)ら5名が「接着性、耐食性に優れるクロメートフリー化成処理鋼板の開発」で受賞。研究グループは、インフラ分野の新補強工法であるコンクリート補強工法を代表する鋼板接着技術に適した接着性に優れた化成処理皮膜の開発を進めた。長期耐食性に優れるZn-11%Al-3%Mg-0.2%Si合金めっき鋼板を母材とし、この表面に接着剤を用いた鋼板接着工法に適したクロメートフリー皮膜を開発した。開発した皮膜は、造膜成分としてジルコニウムイオン、防錆成分としてバナジウムイオン、密着性を実現する成分としてりん酸イオンから構成される無機成分処理液に、表面自由エネルギー変化を伴う水系エマルジョン樹脂を混合することで化成処理皮膜表層に樹脂粒子を濃化させ、従来難しかった接着性と耐食性がともに優れた化成処理皮膜である。
本技術は、高耐食性めっきと組み合わせることでより高い耐食性を有しメンテナンスフリーのニーズに応えており、後のさらなる展開に期待ができることから技術賞としてふさわしい内容であると判断された。
同じく技術賞で野崎匡文氏(奥野製薬工業 総合技術研究部)ら2名は「薄膜高耐食性Zn-Ni-SiO2複合めっきとシリカ系薄膜コーティングハイブリッド技術の開発と実用化」で受賞。本技術は塩化浴Zn-Ni合金めっきに着目し、SiO2ナノ粒子を添加したZn-Ni-SiO2 複合めっき浴を開発するとともに、さらなる耐食性向上を実現するためゾル・ゲル法を用いたシリカ系薄膜コーティングを適用したものである。Zn-Ni-SiO2複合めっき皮膜は従来のZn-Ni合金めっき皮膜の半分の膜厚で同等以上の耐食性を発揮するが、6価クロムなどの有害物を使用しないシリカ系薄膜コーティングと併用することでさらなる耐食性付与を実現した。
現在、自転車部品や釣り針等のレジャー部材に適用され部材の軽量化およびコスト削減に大きく貢献しており、今後より一層の適用拡大が期待できることから、技術賞としてふさわしい内容であると判断された。
受賞者、業績などの一覧は以下のとおり。
協会賞・伊﨑昌伸氏(豊橋技術科学大学 名誉教授)
業績「酸化物半導体層の電気化学的形成と太陽光エネルギー変換への応用に関する研究」
・林 秀考氏(元岡山大学)
・佐藤 讓氏(東北大学 名誉教授)
・莊司浩雅氏・東新邦彦氏・森下敦司氏・植田浩平氏(日本製鉄 技術開発本部)
「接着性に優れたクロメートフリー化成処理皮膜の開発」
(表面技術 第74巻 第11号 584~588ページ)
・東新邦彦氏・莊司浩雅氏・森下敦司氏・植田浩平氏(日本製鉄 技術開発本部)、中村文彰氏(同 薄板営業部)
「接着性、耐食性に優れるクロメートフリー化成処理鋼板の開発」
・野崎匡文氏 (奥野製薬工業)、日野 実氏 (広島工業大学)
「薄膜高耐食性Zn-Ni-SiO2複合めっきとシリカ系薄膜コーティングハイブリッド技術の開発と実用化」
・岩井 愛氏(北海道大学 大学院工学研究院)
業績「塩基性電解質を用いたアルミニウムのアノード酸化に関する研究」
(第143回講演大会要旨集 24~25ページ ほか)
・中島大希氏(UACJ R&Dセンター)
業績「アノード酸化を利用したアルミニウム表面の機能化に関する研究開発」
(表面技術 第75巻 第7号 339~345ページ ほか)
・目黒篤志氏(日鉄テクノロジー 研究試験事業所(富津) TSセンター)
会員増強協力者・石﨑貴裕氏(芝浦工業大学 工学部)
・伊藤麻美氏(日本電鍍工業 代表取締役社長)
・柳下宙士氏(三進製作所 代表取締役社長)
admin 2025年3月6日 (木曜日)
トライボコーティング技術研究会(会長:大森 整 理化学研究所 主任研究員)と理化学研究所 大森素形材工学研究室は2月21日、埼玉県和光市の理化学研究所 鈴木梅太郎記念ホールで、「第17回岩木賞贈呈式」および「第27回トライボシンポジウム『トライボコーティングの現状と将来』―モスアイ構造創成、液中プラズマ応用、トライボコーティング研究支援・加工現象解析―(通算第155回研究会)」をハイブリッド形式で開催した。
第17回となる今回の岩木賞では、東京理科大学/ジオマテックが業績名「グラッシーカーボンを用いたロール状モスアイ金型の開発」により大賞に輝いた。また、愛媛大学の豊田洋通氏と山口大学の白石僚也氏が業績名「液中プラズマCVD法を基盤技術とした鋼表面へのダイヤモンド直接蒸着法の開発」により優秀賞を、PCS Instruments/島貿易が業績名「DLC膜などに有用なトライボロジー試験機の普及によるトライボコーティング研究支援」により事業賞を受賞した。さらに、芝浦工業大学の澤 武一氏と西山和樹氏が業績名「TiAlNコーティングエンドミルを用いた純ニッケルの工具摩耗機構に及ぼす切削点近傍環境の影響」により奨励賞を受賞した。
第17回岩木賞受賞者と関係者第17回岩木賞受賞者と関係者 ディスプレイやレンズなどの表面反射を防止する手法として真空蒸着での多層膜コーティング法が使用されているが、蛾の目を模倣した反射防止効果のあるモスアイ構造フィルムがディスプレイ表面に搭載されて以来、モスアイ構造フィルムによる反射防止の手法も広まりつつある。多層膜コーティングに比べ広い波長帯と広い入射角に対して反射防止機能を持つほか、金型による樹脂の転写のみで作製できるため、生産のスループットが向上できる。大賞の業績は、グラッシーカーボン(GC)と酸素イオンビーム照射によってロール状モスアイ金型を作製、材料を準備して酸素イオンビームを照射するだけの単純な工程で、従来のポーラスアルミナロールに比べて、大面積化(長さ1560mmまで)と高い歩留まりを実現している。GCモスアイ金型によるモスアイ構造フィルムは、車載用モニタ反射防止やサイネージ反射防止(カバー)、船舶用反射防止・水滴付着防止、車載ドアミラー水滴付着防止などの用途においてすでに多数の量産実績がある上、今後も需要が伸び用途が広がると見られており、その技術の新規性と市場性などが評価されての受賞となった。
受賞の挨拶に立った東京理科大学 谷口 淳氏は、「この研究は、初めは樹脂に転写したときに樹脂が金型に付着してしまい剥がれないという問題があった。接着で言うアンカー効果が働いてしまい非常に離型が難しかった。それを離型剤の工夫などによってクリアし、その後にジオマテック様のご努力により大面積への量産まで可能となった。今後はロール状モスアイ金型の離型性をさらに向上し、金型の転写耐久性を向上させることを考えている」と述べた。
鋼をダイヤモンドコートする方法では、ろう材を用いる方法が実用化され、また、炭素拡散バリア機能と応力緩和効果の両方を有する中間層の研究が行われているが、いずれもダイヤモンド本来の長所を発揮できないなどの課題がある。一方、直接蒸着に関する研究は少なく、どの例も低品質かつ1μmレベルの小さな結晶粒を持つ多結晶ダイヤモンドしか合成されていない。これに対し優秀賞の業績では、液中プラズマCVD法をベースに、ステンレス鋼表面にドリルで溝を付けるというシンプルな手法で、高品質かつ粒径10μmの多結晶ダイヤモンド膜を蒸着することに成功した。直接蒸着のメカニズムとして、ステンレス鋼に含まれるCr・Ni成分による炭素の拡散抑制、溝によるダイヤモンドのはく離抑制について検証。これまでの液中CVD法の実績と、鋼表面へのダイヤモンド直接蒸着の実用化局面での、高性能・低価格のダイヤモンド工具の流通による加工産業の発展や、鋼からダイヤモンドへの直接熱伝達によるヒートシンクの放熱特性向上によるパソコンやスマートフォン等のパワー半導体デバイスの小型化など、産業応用への期待が評価されての受賞となった。
受賞の挨拶に立った豊田氏は、「液中プラズマという技術は私が共同研究者の白石と同じ年齢の37歳の頃(2002年)に発明した技術である。その後、2008年にダイヤモンドの合成に成功し、その後はなかなかうまくいかず、装置を自作するなど恵まれない環境の中で粘り強くやってきた。今回の受賞で報われた思いだ」と述べた。
英国PCS Instruments社(PCS 社)は、Imperial College London のHugh Spikes教授が率いるトライボロジー研究グループが開発した潤滑油などの各種特性を分析するための試験評価技術を基盤技術として設立、以降トライボロジー試験機のグローバルリーダーの一つとして、自動車や潤滑油をはじめとする産業分野や大学・公共機関などの研究分野に試験機を提供している。島貿易は、日本国内ではまだPCS社の知名度がない2004年に同社と日本国内でのトライボロジー試験機の総代理店契約を締結、試験機の輸入・販売・設置・技術サポートを一貫して行い、同試験機の利点を生かした試験アプリケーションを拡大、表面改質から潤滑まで、幅広いトライボロジー研究支援に寄与している。事業賞の業績は、トライボロジー研究の500以上の文献で採用されているPCS社製トライボロジー試験機の優秀性と、同試験機の利点を最大限に引き出して国内での販売実績とアプリケーション拡大に努めてきた島貿易の取り組み、特に販売台数が多く、潤滑油介在下でのDLCコーティングなど硬質薄膜の摩擦摩耗特性評価で適用実績が多いトラクション試験機「MTM」の普及によるトライボコーティング研究支援が評価され受賞したもの。
受賞の挨拶に立った島貿易 桝野智晴氏は、「弊社は今年120周年ということで記念すべき年となっている。また、PCS Instruments社と代理店契約をして20年と節目の年となる。今までコツコツと取り組んできたことが評価されて大変嬉しく思う。今後も20年、30年と日本市場で貢献できるように取り組んでいきたい」と述べた。
燃料電池や半導体の需要の高まりから近年、苛性ソーダ製造装置に使われる純ニッケルの構造材としての加工需要も増加している。一方で、純ニッケルの切削特性に関しては材料物性に基づいた知見やデータベースがないため、生産現場では勘や経験則による試行錯誤を繰り返して切削加工が行われている。こうした背景のもと、奨励賞の業績では、純ニッケルの切削特性と工具摩耗特性を明らかにし、生産現場で活用できる知見とデータベースを作成することを目的として、切削点近傍環境が工具摩耗機構に及ぼす影響について考究した。①純ニッケルは乾式切削に比べ水道水を供給するとTiAlN膜の酸化で摩耗が増大すること、②不水溶性切削油を供給するとTiAlN膜の酸化が抑制され摩耗が進行しないこと、③強アルカリ水を供給するとTiAlN膜の腐食で摩耗が増大すること、④工具刃先へのニッケルの付着(凝着)で切削抵抗が増加することを検証し、TiAlNコーティングエンドミルを用いた純ニッケルのミーリングでは、工具摩耗を抑制するため、酸化と腐食を抑制する切削点近傍環境の維持が肝要であることを究明。今後の研究の進展が期待されての受賞となった。
オンラインで受賞の挨拶を行った西山氏は、「本研究は純ニッケルの切削特性などを明らかにして生産現場で活用できる知見やデータベースの作成を目的として調査したものである。この研究は私が研究室に配属された時から続けているもので、失敗や苦労も多かったが澤教授をはじめとして研究室メンバーのさまざまな協力があったからこそ今回の受賞に至ったと考えいてる。この場を借りて感謝申し上げたい」と述べた。
贈呈式の後はシンポジウムに移行。岩木賞の記念講演として大賞に輝いた東京理科大学谷口氏が、優秀賞に輝いた愛媛大学 白石氏が、事業賞に輝いたPCS Instruments Tom Welham氏がそれぞれ講演を行った。なお、奨励賞の芝浦工業大学 澤氏、西山氏の記念講演は、6月に行われるトライボコーティング技術研究会の令和7年度第1回研究会で行われる。
admin 2025年2月27日 (木曜日)