NTNは、センサ、発電ユニットと無線デバイスを軸受に内蔵し、温度・振動・回転速度の情報を無線送信する「しゃべる軸受®」を開発した。センサを軸受に内蔵しているため、装置の外側にセンサを取り付けて状態を検出する場合に比べて、より高感度で高度な状態監視と早期の異常検知を実現できる。
製造現場においては、生産効率の向上に向けて設備の稼働状態を監視し、そのデータに基づいて的確かつ計画的にメンテナンスや部品交換を行うことで、設備のダウンタイム(稼働停止時間)をできるだけ抑えたいとの強い要求がある。さらに、近年ではDXやIoT技術の進展に伴って、場所や時間の制約を受けない装置の遠隔監視や自動モニタリング、入手した状態監視情報の活用による製造品質の安定化や向上へのニーズも高まっている。
同社では、こうした状態監視のニーズに対し、軸受のセンシングなどに取り組んできており、特に風力発電分野においては、2014年には大型風力発電用軸受の状態監視、データ解析に関してNEDOプロジェクトにも参画し、現在、状態監視システム(Condition Monitoring System、CMS)については多くのユーザーが契約している。ほかにも、工作機械主軸用「センサ内蔵軸受ユニット」、「産業用IoTプラットフォーム向け軸受診断アプリ」、「NTNポータブル異常検知装置」などを開発し、軸受の状態監視に必要なセンサの選択、解析ソフトの開発など、先行して技術を高めてきた。
同社が今回開発した、しゃべる軸受は、寸法と負荷容量を変更することなく、標準軸受(主要寸法・形式が国際的に標準化された転がり軸受)にセンサ、発電ユニット、無線デバイスを内蔵。回転に伴って発電する電力により、センサや無線デバイスを動作させ、センサ情報を自動で無線送信する。センサを軸受に内蔵しているため、センサを設備に外付けする場合よりも感度良く軸受の状態を検出し、早期に異常を診断することが可能となっている。また、寸法と負荷容量が標準軸受と同一であるため、既存設備に使用されている軸受からの置き換えも可能な上、電源供給やデータ送信のためのケーブルも不要で、容易に軸受の状態監視を実現できる。
同社では今後、本開発品のテストマーケティングを開始し、具体的なニーズの探索と市場への提案を進めていく。まずは、生産設備で多く使用されている深溝玉軸受の商品化を進めた後、適用する軸受の種類や品番などを段階的に拡大していく予定だ。
同社は、中期経営計画「DRIVE NTN100」Phase 2において、「モノ」から「コト」への業態の変革に向け、サービス・ソリューション事業の強化に取り組んでいる。本開発品により高度な状態監視の実現に貢献し、適切な交換時期を通知するなどの状態監視サービスの提供を通じてサービス・ソリューション事業の展開、それに連動した補修軸受の販売拡大にも取り組んでいく。