日本機械学会・関東支部は3 月16 日、17 日の両日、東京都葛飾区の東京理科大学葛飾キャンパスで、「第23 期 総会・講演会」(大会委員長:東京理科大学・山本 誠氏、実行委員長:同・佐々木信也氏)を開催、948名が参加した。「トライボロジーの基礎と応用」や「機能性コーティングによる表面改質技術」などオーガナイズドセッション15テーマとワークショップ「熱流体工学研究の最前線」1テーマの計16テーマで約300件の発表が行われた。関東学生会第56回学生員卒業研究発表講演会を含めた発表件数は約630件となった。
オーガナイズドセッション「トライボロジーの基礎と応用」では、「MoDTCの潤滑効果に及ぼす無灰摩擦調整剤添加の影響に関する研究」(東京理科大学 礒金マリコ氏・大久保 光氏・平田祐樹氏・佐々木信也氏ら)や「微細周期構造による円すいころ軸受の低トルク化」(東京理科大学 堀田智哉氏・野口昭治氏、不二WPC 下平英二氏・矢追和之氏)、「AE法によるDLC膜のはく離過程の検討」(産業技術総合研究所 間野大樹氏・大花継頼氏・是永 敦氏)など、19件の発表がなされた。また、「機能性コーティングによる表面改質技術」では、「水潤滑下での境界潤滑におけるCVDダイヤモンド膜の摩擦・摩耗特性に関する研究」(東京理科大学 伊藤慧竜氏・平田祐樹氏・佐々木信也氏、東京都産業技術研究センター 長坂浩志氏、埼玉大学 田所千治氏)や「DLC膜の摩擦摩耗特性」(東京都立産業技術研究センター 川口雅弘氏・徳田祐樹氏)、「フラーレン薄膜のトライボロジー特性」(東京高等専門学校 原田明成氏・福田勝己氏、工学院大学 小林光男氏・鈴木健司氏、名古屋大学 尾上 順氏)など、12件の発表があった。
オーガナイズドセッション風景
併設の機器展示・カタログ展示コーナーでは、日本精工がハイブリッド車(HEV)/電気自動車(EV)向け電動型制御ブレーキのカットモデルを展示、同ブレーキで採用された「低フリクション ボールねじの技術などを紹介した。
日本精工ブース
また、オイレス工業は、水中での適用や耐高温、食品衛生法適合、高速用途、耐薬品性、耐衝撃、ボールベアリング代替など、樹脂系から金属系、複層系に至るオイレスベアリングの幅広いラインナップを紹介した。
オイレス工業ブース
協和界面科学は、不要な力の検出を排除する「2軸天秤」のメリットとしゅう動方向に左右されないデータの信頼性を実現する「クランク形状天秤」のメリットを兼ね備えた自動摩擦摩耗解析装置「Triboster」を展示した。
協和界面科学ブース
ヒキフネは各種精密装飾めっきや高機能・精密めっきの処理サンプルを多数展示。すべり性・撥水性を表面に付与するPTFE複合めっきや、ケミカル・バイオ関連用途などに適用可能なナノフォーミング(電鋳技術による微細パターン形状の転写)などを紹介した。
ヒキフネのブース
16日には懇親会が開かれ、冒頭の挨拶に立った第23期関東支部支部長の埼玉大学・綿貫啓一氏が、「東京理科大学の先生方の尽力もあり、充実した大会となった。今回は、関東支部8ブロックからまんべんなく、それぞれの地域の特性を反映した非常に興味深い研究や、産学連携による研究の成果などが発表された。機器展示も多くの企業に参加いただいており、学生たちにとっても産業界で開発された多様な製品技術を目にする、格好の機会と思う。部門講演会とは違う、支部独自の講演会が開催できて、うれしい」と述べた。
綿貫恵一・関東支部支部長
続いて佐々木信也・実行委員長が、「トライボロジーや表面改質など全16のテーマからなるセッションで約300件の発表があり、参加人数は900人を超えるまでの盛況となった。企業展示でも、約30社の企業から最先端の製品技術が発信されている。セッションでの活発な質疑応答はもとより、展示企業の方々とも積極的に対話していただき、各自の仕事の発展に役立てていただきたい」と挨拶した。
佐々木信也・実行委員長
さらに日本機械学会会長の東京工業大学・岸本喜久雄氏が挨拶に立ち、「日本機械学会は1897年に設立され、本年で120周年を迎える。会員数35000人と我が国で最大級の学会としての地位を占めているものの、”2度目の還暦”を迎えて、さらに若々しく活動していく必要がある。そのためにも、今回参加し研究発表している学生の方々に引き続き、会員として本会の発展を支えていただきたい」と述べた。
岸本喜久雄・日本機械学会会長
最後に山本 誠・大会委員長が「日本機械学会ならびに機械の分野を支える産業界の力は大きく、それゆえに産業界には常に好況であっていただきたい。そのためには次の社会を支える若い人材の育成が不可欠だ。若い力と産業界の力を効果的に融合させていくことで、我が国の発展に寄与していきたい」と力強く挨拶し、懇親会に移った。
山本 誠・大会委員長