EMGルブリカンツは、9月13日~15日に東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された「TEST 2017[第14回総合試験機器展]」に出展、試験機器を長期にわたり安定稼働させるためのMobilTMの油圧作動油の独自技術を紹介した。
引張や圧縮、曲げ、せん断、加振などによって材料を試験する各種試験機器においては、サーボモータとボールねじの組合わせで駆動させ荷重を付与する電動式の採用が進む一方で、コンクリートや建材の評価など数十kN以上の荷重を付与するアプリケーションを中心に、油圧作動油を動力源とする油圧駆動式の採用は依然として多い。
Mobilでは、この油圧作動油について、劣化しにくく安定性が高く、劣化した場合には汚れはフィルタでとる、あるいは部分的に交換して使用する設計思想の「タービンオイル型」と、油自体は汚れてもよいが機械は汚さないように、汚れが出てきたら汚れを抱え込んで細かく分散させる設計思想の「エンジンオイル型」に分類。他社製品の多くはタービンオイル型の設計思想をとる一方で、Mobil製品は「キープクリーン性能」を謳ったエンジンオイル型に非常に近い設計思想をとっているため、作動不良を引き起こさない、試験機器に最適な作動油であることをアピールした。
下の写真は、Aがタービンオイル型設計思想の一般的な作動油で、CはMobilの代表的な油圧作動油「Mobil DTETM 25」のそれぞれ3000時間、5000時間使用したもの。Aは外観がきれいでまだまだ使用できるように見え、Cは、エンジンオイルであればSSで交換を勧められるレベルの汚れた外観を呈している。ところが、フィルタを通した結果を見ると、Aでは目詰まりを起こす程度に油中の劣化物が放出されているのに対し、Cでは油中に劣化物が細かく分散されているため、フィルタはいずれも、きれいな状態を呈している。つまり、油は汚れていても機械はクリーンに保持できることを示している。
Aの油が系統内での循環・停止を繰り返しているうちに、ミクロンオーダーの精密クリアランスを持つサーボバルブにバーニッシュが付着し、侵入した固体物質を吸着し(フライペーパー効果:蠅取り紙効果)スプールが固着し、油圧回路が作動しなくなる。バルブを損傷させて油圧ユニットごとの交換を強いられる状態に陥ることも少なくない。
サンプリングした作動油の外観がきれいで油に起因する問題がないように思える油圧システムにおいて、バルブが閉塞し、試験機器が作動不良を引き起こすケースが少なくないことから、こうした油圧作動油の問題点を周知させるとともに、そうした問題へのMobilのソリューションを紹介する狙いから、EMGルブリカンツでは今回、TEST展への出展を決めたもの。
同社では試験機の作動不良は、作動油の劣化に伴い発生した「バーニッシュ」に起因すると言う。バーニッシュはスラッジの一種で、添加剤の酸化・熱劣化によって生成された酸化生成物が重合し高分子体となり、ニスのようにラッカー状に金属面に吸着したもの。スラッジと違いタンクなどの側面にも非常に硬い皮膜を形成し、スクレーパなどでは容易に除去できない。
これに対しMobil の油圧作動油はエンジンオイル型設計思想に基づいた、優れたキープクリーン性能を付与した耐摩耗性タイプで、油が劣化して発生する「スラッジ・バーニッシュ」を発生しにくくするだけでなく、発生しても油圧機器に影響が出ないようにスラッジ・バーニッシュを油の中に細かく分散させて取り込み、油圧系統内での蓄積を防ぐため、各種バルブやフィルタの閉塞を引き起こしにくいという。
EMGルブリカンツでは、市場における標準的な耐摩耗性作動油「Mobil DTETM 20シリーズ」から、非亜鉛系ロングライフ耐摩耗性作動油「Mobil DTETM XLシリーズ」、省エネタイプの非亜鉛系高粘度指数ロングライフ耐摩耗性作動油「Mobil DTE 10 ExcelTM(DTE 10 エクセル)シリーズ」、省エネタイプの合成系耐摩耗性作動油「Mobil SHCTM 500シリーズ」をラインナップし、ユーザーの使用条件に応じて最適な作動油を提案していく。
さらに、納入した作動油の劣化・コンタミや機器系統内の摩擦状態をチェックすることによって、機器の寿命延長やメンテナンスコスト削減につなげる予知保全のための次世代使用油分析プログラム「Mobil ServSM (モービルサーブ)Lubricant Analysis」をグローバルで展開し、油圧機器の円滑な稼働をサポートできる体制を構築、提供できることをアピールした。