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SEMICON Japan 2024

 

関西潤滑懇談会、3月例会を開催

 関西潤滑懇談会(理事長:多川則男・関西大学教授)は3月9日、大阪市の大阪産業大学 梅田サテライトキャンパスで「3月例会」を開催、約80名の参加のもと、理事であるMORESCO・松本浩之氏の企画と同社・田中真人氏の進行で、以下のとおり講演がなされた。 
18031601関西潤滑懇談会

・「消音グリースについて」原田真一氏(ニッペコ)…従来からのグリースに対する各種要求に加えて、自動車のEV・PHV化などの加速に伴い要求が高まってきている「消音性」を実現するグリース技術を紹介。実機から発生する衝撃音や摺動音、異物音など音の発生原因に対して、ラボ評価などをまじえて、有効なグリース処方としては基油粘度(高粘度)や付着性の寄与が大きいと結言した。一方で消音対応のための基油粘度上昇に伴う低温性の悪化には、特殊なポリマーを用いることで対応が可能とした。また、基油粘度に依存しない消音事例としては、適切な固体添加剤の配合によってガタつき音や異物音の抑制が可能であることを示した。

原田真一氏原田真一氏

・「MoDTC の潤滑効果に対する温度の影響」清水隆史氏(協同油脂)…エンジン油の低粘度化で境界・混合潤滑条件が増えつつあり、また、ハイブリッド化などでエンジン油の温度上昇が抑制される環境下で、MoDTCの摩擦低減効果をより低温から発揮させるための基礎検討を行った。摩擦係数の温度依存性に関する考察では、油温が高い(80℃)ほどMoDTCが良く分解しMoS2の割合が多い膜を生成することで、摩擦急減までの誘導時間が短く低摩擦を示したとした。温度変化に対する摩擦係数挙動の考察では、雰囲気温度に依存してMoDTC由来の潤滑膜が生成され、その膜組成・構造は温度変化に応じてダイナミックな変化を示したが、これは粘性抵抗ではなく、生成する境界潤滑膜が温度によって変化したものと考察した。

清水隆史氏清水隆史氏

・「生分解性グリースの技術動向」土井理史氏(日本グリース)…リチウム石けん+植物油基油の第1世代から、リチウム石けん+エステル油基油の第2世代、さらにはジウレア化合物増ちょう剤+エステル油基油の第3世代へと、酸化安定性向上や使用温度の高領域化など生分解性グリースの潤滑性能が向上し、徐々に適用が拡大している状況を報告した。また、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)で公共工事における環境対応の新技術として登録可能なことや、米国の船舶入港規制(VGP)では環境配慮型潤滑剤(EAL)が今後必須となる動向を紹介、同社では後者に関し高防錆性の生分解性ワイヤーロープグリースを開発(特許出願)し、今春発売することを報告した。今後は一層の性能向上が要求されることから、メーカーとしては生分解性を有しつつさらに高性能な増ちょう剤や基油、添加剤の研究開発を進める必要があると述べた。

土井理史氏土井理史氏

・「Applications of modern Tribotesting with SRV®5 for industry」Ameneh Schneider氏(Optimol Instruments Prueftechnik)…ユーザーの実部品を実使用に近い環境で試験でき、正確で再現性の高い試験結果が得られる振動摩擦摩耗試験機の最新機種「SRV®5」について、摺動部にトライボフィルムが存在し金属接触になっていないことやトライボフィルムの形成時点を確認できる「電気接触抵抗測定」オプションや、試験条件などのキーワードで試験データをフィルタリングし評価の効率化が図れる解析評価システム「Tribo Profiling®」などの新技術を紹介。同試験機と新機能を用いた各種工業用潤滑油剤や添加剤などの評価事例を挙げて、油圧作動油の評価におけるV104Cビッカースポンプ試験や、ギヤ油の評価におけるFZG試験、グリースの評価におけるFE8・FE9など、試験時間が長くコストのかかる各種試験法の試験時間を短縮し開発コストを削減できる「スクリーニング試験」としてのSRV試験の有用性を示し、活用を提案した。

Ameneh Schneider氏Ameneh Schneider氏

 講演終了後に挨拶に立った多川則男会長は「今回は潤滑油、グリース、それらの試験評価をテーマに、松本理事の尽力もあってグローバルなディスカッションができ、また約80名が参加し盛況裡に開催できた。今後もグローバルな観点から話題提供のある会として活動を続けていきたい」と述べ、現在企画中の工場見学会やポスター展示など各種企画を予定していることを発表し、閉会した。

多川則男氏多川則男氏