「2018年国際航空宇宙展(ジャパン エアロスペース2018/JA2018)」が11月28日~30日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された。主催は日本航空宇宙工業会(SJAC)。
今回も三菱重工業グループが開発を進める国産ジェット旅客機「MRJ」や本田技研工業が手掛ける「ホンダジェット」など国産旅客機に注目が集まる中、米ボーイングや英ロールスロイス、仏エアバスなどの航空機や小惑星探査機「はやぶさ」などの宇宙機器に搭載されている日本の要素技術が多数展示された。
各種の要素技術のうち、軸受関連の出展は以下のとおり。
NTNでは今回、航空機用軸受の信頼性を支える加工技術や表面改質技術を紹介した。高速回転する主軸で生じる振動を吸収するため、外輪はばね性を有する振動吸収部品に組み込まれ、オイルダンパで支持されていたが、同社では軽量化と部品点数削減を目的に、振動吸収部品と外輪が一体となった軸受(一体軸受)の製作を可能にする複雑形状加工技術を紹介した。また、保持器案内面では保持器とランドの間でのすべり摩擦が避けられず、良好な摩擦特性と耐摩耗性が要求される。良好な摩擦特性を得るためには保持器案内面への確実な潤滑油の供給が行われたうえで、同種金属同士の接触を避けるよう、保持器表面には銀めっきが施されている。また、軌道輪側のランド面には、耐摩耗性向上のため、TiN(窒化チタン)コーティングが施される場合がある。しかし、飛行状態によっては、潤滑油の供給が遮断される「ドライラン」状態で高速回転するように使用される場合があり、ドライラン状態で保持器と軌道輪の保持器案内面間での焼付きを防止するため、保持器表面に自己潤滑性被膜であるリン酸塩被膜を形成する場合もある。
一方、宇宙機器用軸受では、小惑星探査機「はやぶさ」の太陽電池パドル用球面すべり軸受で採用されている二硫化モリブデン焼成膜による固体潤滑技術を披露した。
NTN「振動吸収部品と外輪が一体となった軸受の製作を可能にする複雑形状加工技術」
NTN「保持器の摩擦摩耗特性を改善する表面処理技術」
ジェイテクトは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で進めている宇宙用転がり軸受の長寿命化を目指した研究の一例として、人工衛星など宇宙機器の長寿命化をサポートするセラミック玉軸受を紹介。高速回転でも安定した低摩擦トルクを維持できることや優れた耐摩耗性を示すことなどの利点を謳った。
また、-40~85℃に対応しつつ冷却システム不要でエネルギーロスなく使用できる独自開発のリチウムイオンキャパシタを展示した。①数十秒のチャージで急速充放電が可能、②リチウムイオン電池の10倍以上の高い出力密度、③繰り返し放充電が10万回以上可能な長寿命性、④発火が生じにくい高い安全性、などの特徴から、宇宙空間の低温から高温までの温度環境下で長期にわたる稼働が求められる人工衛星などの宇宙機器への、高信頼で安定的な電力供給を実現できることをアピールした。
ジェイテクト「宇宙機器用セラミック玉軸受」
ジェイテクト「リチウムイオンキャパシタ」