NTNは、自動車用自動変速機(AT)などに使用される遊星ギヤ向けに、ころクラウニングと保持器材料を見直し、高速回転対応と長寿命化、静音化を実現した保持器付き針状ころを開発した。AT・無段変速機(CVT)用遊星ギヤや電気自動車(EV)用減速機などへの展開を進めていく。
近年、自動車の低燃費化を背景にATの多段化が進んでいる。ATの多段化に伴い、一部の遊星ギヤの回転数が高くなることがあり、遊星ギヤ用軸受には高速回転への対応が求められているほか、多段化により装置内の部品点数が増える一方で、重量を抑えるために軸受を含む各部品は小型・軽量化が図られる。その結果、従来と同等のトルクを出力するために、軸受には高い負荷がかかる上、AT内の各部品の回転抵抗を抑えて省エネ化を図るため、装置内のオイルは低粘度化する傾向にあり、軸受の使用条件はますます過酷になっている。
本開発品は、「浸炭鋼溶接保持器」と「高負荷条件用新クラウニングころ」の開発により、こうした過酷な使用環境への対応を可能とした。
保持器は、これまで使用していた特殊低炭素鋼よりも高強度な浸炭鋼(浸炭熱処理を施した肌焼き鋼)を採用し、疲労強度を向上させることで、高速回転性能を従来品比で約10%向上させることに成功した。
ころについては、ころの面取りと転動面のつなぎ目に発生するエッジ応力を抑える目的で転動面から面取りにかけて数μmの傾斜をつける「クラウニング」部の真円度の向上により回転時のころの挙動を安定させることで、従来品よりも約8%の静音化を達成しており、より静粛性が求められる電動車両のニーズにも対応する。また、クラウニング形状を最適化することにより、傾き条件下においても、接触応力やエッジ応力の増加を抑制し、厳しい潤滑条件での表面起点型剝離寿命を改善する。
同社では、本商品の提供を通じてATの多段化や小型・軽量化に寄与することで、車両の低電費化・燃費化に貢献していく考えだ。