日本精工は、電動車駆動モータ用高速回転玉軸受を開発した。開発品は、駆動モータの大幅な高速化を実現可能とし、電動車の燃費・電費の向上、航続距離延長、快適性向上に貢献する。同社は、本製品の売上として2030年に100億円を目指す。
温室効果ガス排出等による環境問題が深刻化する中、環境負荷が小さい電動車の普及が期待されているが、電動車普及に向けた重要課題の一つが航続距離の延長で、より大きな電池を搭載できるスペースが求められている。
近年、電動車用駆動システムの小型・軽量化と駆動モータの高出力化ニーズを背景に、モータ支持用の玉軸受には、これまで以上に高速回転性が要求されている。玉軸受を高速で回転させた場合、発熱の影響による潤滑不良に起因する焼付きの発生、また遠心力の影響による保持器変形に起因する破損が課題だった。
これに対し開発品では、耐焼付き性に優れる独自開発のグリースを使用することで、発熱による潤滑不良を抑制し、従来品に比べ寿命の延長を可能にした。
また、新形状の保持器を開発。保持器先端部を薄くすることで軽量化し、遠心力の影響を低減すると共に、保持器根元部の剛性を高めることで、高速回転時における保持器の変形抑制に貢献。本形状の採用により、高速回転時の保持器変形が大幅に低減する。
さらに、高速回転時の保持器変形を抑制する、耐熱性と剛性に優れた樹脂材料を開発。本樹脂材料は、高速回転時に遠心力の影響による保持器の変形を大幅に低減する。
独自開発のグリースと新たに開発した樹脂保持器の効果により、開発品では、dmN(軸受のピッチ円径dm×回転数n)= 140万(内径35mmの軸受で30000rpm)の高速回転を可能にする。
開発した軸受では電動車駆動モータの大幅な高速回転化が可能となるほか、駆動モータの高出力化を実現するとともに、モータユニットの小型・軽量化をはじめ、電動車の燃費・電費の向上、航続距離延長や快適性向上にも貢献する。同社では、2020年末に、さらなる高速回転に対応する軸受(160万dmN)のプレスリリースを予定している。