NTNは、「NTNポータブル異常検知装置」の販売を拡大している。本商品は設備の振動測定、ベアリング(軸受)の異常検知や損傷部位の推定が可能なコンパクトサイズのデバイス。設備の安定稼働に向けた予知保全の重要性が高まる中、高速・高精度な測定性能と、設置の簡便性や高い実用性などが評価され、幅広い業種で導入が進んでいる。同社は、本商品と関連するサービスの提供を通じて、製造現場における保全業務の効率化や突発的な故障に伴うダウンタイムの削減に貢献していく。

同社は、電動機械(電動機、ポンプ、送風機、搬送機械)、プラント設備、工作機械、一般産業機械の設備保全、出荷検査などへの本商品および関連サービス、またこれらに起因する補修用軸受の適用を進め、2028年度に3億円/年の販売を目指す。
近年、製造業やインフラ分野では、設備のダウンタイムの最小化に向けて、計画的な保全活動の強化や補修部品の早期確保など故障リスクを低減する取り組みが進められている。加えて、労働人口の減少を背景に、熟練者の経験に依存している設備の異常確認手段をデータ解析などのデジタル技術によって非専門的な方法に置き換えたいというニーズも高まっている。
NTN ポータブル異常検知装置はこれらのニーズに対応する商品として、2020年に販売を開始した。製鉄や食品、製紙、化学、繊維などの製造業や機械加工分野に加えて、電力・ガス・水道やプラントを含むインフラ分野などの幅広い業種で、電動機、ポンプ、工作機械などの測定に活用されている。
本商品を用いることで設備の軸受の損傷を早期に発見し、補修用の軸受に迅速に交換したことで設備の突発的な停止を防止できたなど、高い評価を得ている。
2022年からは海外での販売も開始、特に経済成長が著しいアジア地域で販売を伸ばしている。
NTNポータブル異常検知装置によるソリューション事例としては、以下などが挙げられる。
工作機械(内面研削盤 高周波スピンドル)の事例
・加工精度が低下した内面研削盤の高周波スピンドルをNTN ポータブル異常検知装置を用いて測定
・測定結果より軸受転動体の損傷の疑いが検出されたため、軸受交換を提案
・同社の補修軸受に交換後、再度測定した結果、振動値が大幅に低下したことを確認
・軸受交換の効果と、軸受交換作業が正常に行われたことをデータで確認
インフラ分野(上下水道 ポンプ設備)の事例
・軸受部の温度異常が発生したため、NTN ポータブル異常検知装置を用いて測定
・測定結果より、軸受そのものには異常がないため、別の原因があることを指摘
・同社にて設備図面を確認した結果、使用軸受が不適切であり、軸受以外の他の部品が摺動して発熱し、その熱が軸受に伝わった可能性を指摘
・異常の要因を切り分け、真の原因究明や設備の構造上の課題を突き詰め改善
NTNでは、本商品の販売に加えて、設備保全業務におけるユーザーの困りごとを解決する各種サービスの拡充にも取り組んでいる。2023年には、これまで培ってきた軸受に関するノウハウ・専門知見を活用し、ユーザーの測定データの詳細分析と状態診断、それに加えて推定原因や推奨事項を提案する診断レポートサービスを開始した。さらに、本商品のレンタルサービスや、軸受および本商品の取り扱いや測定結果の診断方法を学べる講習会の開催、当社従業員による出張測定など、多彩なサポートサービスも提供している。
NTNは中期経営計画「DRIVE NTN100」Finalの重要施策の一つとして、アフターマーケット・ビジネスの拡大を掲げており、2035年度には全売上高に占めるアフターマーケット・ビジネスの比率40%を目指している。この目標の実現に向け、NTNでは商品の選定から納入、使用、監視、分析、交換、保守管理に至るまで、軸受の運用全体を支援する軸受ライフサイクルマネジメントの強化に注力している。
同社は今後も、NTNポータブル異常検知装置の販売や関連サービスの拡充に加え、軸受の状態監視を可能にする各種商品・サービスの開発、軸受の不具合原因の調査を含む分析サービスの提供などを通じて、軸受に関するあらゆる課題の解決に取り組み、NTNのブランド価値のさらなる向上と、アフターマーケット・ビジネスの一層の拡大を図っていく。

