ジェイテクトは、転動体となるボールに、従来の窒化ケイ素よりも熱膨張の割合が内外輪材の軸受鋼に近い新しいセラミック材料を採用した、モータ用「新セラミック玉軸受」を開発した。
これにより、特にインバータ制御式モータの需要拡大に伴い電食対策の必要性が増しつつあるモータ用軸受において、従来材の窒化ケイ素製ボールと同等の絶縁性を有しながらも、温度変化による内外輪とボールのすきま変化をより小さくし、幅広い温度環境への対応を可能にした。
この新セラミック材を使用した軸受の量産は国内初で、本年6月の量産開始を予定。 産業機械用モータメーカーに提案を進め、年20万個の販売を目指す。
電動モータの特性上、動作中に高周波電流による有害な電圧が発生し、一定量を超えると、転がり接触部分の非常に薄い油膜を通じて、軸受内でスパーク(放電)を起こす。このときに軸受の転動面などが局部的に融解する「電食」という現象が起こり、異音を生じさせ、軸受寿命を低下させる原因となる。
これに対しモータ用軸受の信頼性の高い絶縁対策の一つはボールの材質をセラミック化することで、通常は窒化ケイ素製のボールが使用されている。
今回開発品に採用された新セラミック材は、窒化ケイ素と同等の絶縁性を持つことに加え、線膨張係数(温度をセ氏1度上げたときの物質の長さの増加量)が内外輪材として使用される軸受鋼(SUJ2)に近いという特性を持つ。この特性により、温度変化による内外輪と玉のすきま変化を従来よりも小さく抑え、より幅広い温度環境への適応を可能にした。
転がり疲れ寿命の評価では計算寿命の3倍以上を、音響値測定では一般軸受と同等の音響値という結果を示した。