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SEMICON Japan 2024

 

振動摩擦摩耗試験機「SRV」のユーザーズミーティング開催

 「トライボロジー特性のデファクト標準に関する研究会」(主査:東京理科大学・佐々木 信也教授、副主査:産業技術総合研究所・間野大樹氏、幹事:パーカー熱処理工業・設備営業部)は2月15日、東京都葛飾区の東京理科大学で「SRVラウンドロビン試験報告会」と「第7回SRVユーザーズミーティング」を開催した。
挨拶する佐々木 信也主査(右)と間野大樹副主査(左)挨拶する佐々木 信也主査(右)と間野大樹副主査(左)

 振動摩擦摩耗試験機「SRV」はドイツなど欧州、日本、中国などにおいて、潤滑剤や自動車向けトライボロジー試験機のデファクトスタンダードとなっているが、各ユーザーでの試験データのばらつきを検証すると同時に、信頼性の高い評価データを得るための試験方法を決める際の重要な判断材料として「ラウンドロビン試験」が実施・活用されている。近年ではさらに、新しい材料や潤滑剤、あるいは特殊な摺動条件など、産業界の要請に応じたASTM(米国試験材料協会)、ISO(国際標準化機構)などの標準試験方法を策定することも視野に入れ、その試験内容が検討されている。

 当日は午前中に、SRV試験機の製造元Optimol Instruments Prüftechnik社(Optimol社)とドイツ連邦材料試験研究所(BAM)が立ち上げた、SRV試験機を用いた国際ラウンドロビン試験に関する報告会が行われた。

 午後にはまた、本年Optimol社CEOに就任したGregor Patzer氏から、大型化したチャンバーや、2個のピエゾセンサの最適配置による正確な信号の発信や機械的振動の排除などにより、潤滑剤からバルク、薄膜など広範な試験対象を容易に評価できる構成とした最新機種「SRV®5」の紹介がなされた。また、SRV®5を中心に、「アプリケーション指向の試験機」を掲げてユーザーの実部品を実使用に近い環境で試験できるシステムを構築していくOptimol社の今後の方針が述べられた。一例として、実際のピストンヘッドとピストンピンを取り付けるなどコンポーネントとして試験評価できる「Combi-Drive」が紹介された。また、試験の自動化による作業の効率化として、最大16種の試験片を自動でセットし試験を行いデータを蓄積、自動で試験片を輩出する「A-POS」システムや、そうして構築された試験データの解析評価について、試験条件などのキーワードで試験データをフィルタリングし評価の効率化が図れる「Tribo Profiling®」が提案された。そうしたSRV試験機の新システムを構築していく一方で、焼付きなど基本的な事象の定義づけにも取り組んでいることを報告した。
講演を行うOptimol社Gregor Patzer氏(左)と通訳を務めるパーカー熱処理工業・越智直行氏(右)講演を行うOptimol社Gregor Patzer氏(左)と通訳を務めるパーカー熱処理工業・越智直行氏(右)

 続いて、「トライボロジー特性のデファクト標準に関する研究会」主査の佐々木氏が「トライボロジー特性評価方法とSRV試験機の活用」と題して話題提供を行った。摩擦摩耗試験機は荷重条件や速度条件が同じでも試験片の表面粗さや熱処理条件、洗浄条件、取付け条件、湿度など様々なファクターがあり、データがばらつくためデジタル化や知見としての蓄積が難しいことに言及。そうした中でもすでに自動車部品の評価を中心にデファクトスタンダード試験機となっており、日本国内でも90基以上普及しているSRV試験機について、佐々木氏は「国際ラウンドロビン試験はボリュームがあり数週間から数ヵ月と時間を要するため参入が難しいが、国内だけでも統一できる条件は統一して試験データの信頼性が高められるよう、情報交換を活発化してSRV試験機を有用に使えるようにしたい」と述べた。「このミーティングの機会をユーザー同士の情報交換の場、ユーザーとOptimol社との議論の場としてほしい」との佐々木氏の提案どおり、続く懇親会ではSRV試験機ユーザー同士の、ユーザーと佐々木氏、Patzer氏、パーカー熱処理工業との情報交換・意見交換が活発に行われた。
話題提供を行う佐々木信也氏話題提供を行う佐々木信也氏

 当日はまた、佐々木氏がセンター長を務める東京理科大学 トライボロジーセンターの見学会が行われ、SRV試験機など、同センターに設置してある多数の試験設備・製造設備が披露された。
トライボロジーセンターに設置されたSRV試験機などを見学トライボロジーセンターに設置されたSRV試験機などを見学