「第11回オートモーティブワールド」が1月16日~18日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された。機械要素・材料関連では以下のような新技術が展示された。
出光興産は、従来のガラス繊維強化シンジオタクティックポリスチレン(GF-SPS)では達成できない高耐熱性(荷重たわみ温度265℃、クリープ変形歪み0.3%)とこう耐衝撃性(シャルピー衝撃値22kj/cm2)を兼ね備えた低密度射出成形用複合材料「ザレック™低密度・高耐熱・高衝撃GF-SPS複合材料」を紹介した。また、低コストのガラス短繊維樹脂複合強化技術を用いてGF強化樹脂の高強度・高剛性を透明な状態で実現する高加工性・軽量のガラス繊維強化ポリカーボネート複合材料「タフロン高強度・高透明GF-PC複合材料」を展示した。
出光興産 「ザレック™低密度・高耐熱・高衝撃GF-SPS複合材料」
木村洋行は、個別ニーズに応じた高精度のカスタム設計と自己潤滑機能により無給油化、軽量化、製品寿命の延長を実現するレックスノード社の自己潤滑フィラメントブッシングを紹介した。また、バッテリーやモータ、コンバーター、制御装置、パワーエレクトロニクス機器といった電気自動車・ハイブリッド車用部品の接合やシーリング、封入などにおいて、高い熱伝導性や機械的特性を実現するPolytec社の熱伝導性接着剤・ポッティング材・ペーストなどを展示した。さらに、エッジワインディング加工により金型不要・納期短縮を実現するスモーリー社のウェーブスプリングとリテイニングリングを紹介した。
木村洋行 「自己潤滑フィラメントブッシング」
東京大学・伊藤耕三教授をプログラムマネージャーとする革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「超薄膜化・強靭化『しなやかなタフポリマー』の実現」は、新素材「しなやかタフポリマー」を構造材や構成部品に適用することで軽量性・機能性・安全性・信頼性を飛躍的に向上させる可能性を検証することを目的に、それら材料を活用し適用の効果を具現化した電気自動車(EV)のコンセプトカー「I toP(Iron to Polymer、アイトップ)」を展示した。同コンセプトカーは、革新的な一体成形モノコック構造ボディ・フレームによって強度・剛性にも優れた衝突安全構造を実現。さらに、サスペンション・スプリング・ホイールなど足回り部品にもCFRPを適用したことで、大幅な軽量化を達成。その結果、製造工程も含めた10万㎞走行時点での温室効果ガス(GHG)排出量が、従来素材の鉄、ガラス、タイヤなどで作った場合と比べて11%低減できる可能性を示した。
ImPACT超薄膜化・強靭化『しなやかなタフポリマー』の実現 「I toP」
日本ピストンリングは、軟磁性粉末をプレス成形して製作するモータコアである圧粉コア、3D形状圧粉コアを採用した扁平形状の高トルクモータであるアキシャルギャップ型インホイールモータ、アキシャルギャップ型インホイールモータ開発品を後輪に搭載した「電動ミニカー」を展示した。同モータは、アキシャルギャップ構造、3D形状圧粉コアによる高トルク化によってインホイールモータとして使用することでダイレクト駆動を可能にする。ギヤレス化による機械損失の低減とギヤ音の削減を実現するほか、Air Gap可変によるモータ特性のチューニングが可能。
日本ピストンリング アキシャルギャップ型インホイールモータ開発品を後輪に搭載した「電動ミニカー」
フェローテックは、自動車向けのペルチェ素子(サーモモジュール)および磁性流体の新技術について、動態展示を含めて紹介した。ペルチェ素子ヒートポンプによる熱移動を利用したヒーターでは、抵抗式ヒーターに比べて小さな電気で大きな加熱ができ、EV用バッテリーの電力消費を大きく削減でき、EVの航続距離延長に寄与することが可能となることをアピール。また、温度に反応して磁化が大きく変化する「感温性磁性流体」を用いたループ状の流路を持つ熱輸送システムのデモ機を展示し機械的な動力なしに流体の自己循環が可能となる。実験では、全長6mの長い流路を電力なしで自己循環できることを謳った。また、磁気応答性や印加磁場によるせん断力(粘性)変化、分散性、潤滑・摩耗特性などで優位性のある「MCF(Magnetic Compound Fluid:磁気混合流体)」を封入したアクティブダンパーを紹介した。
フェローテック 「ペルチェ素子を用いたキャビンヒーターのモックアップ」