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人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMAが開催

 自動車技術会は5月21日~23日、横浜市のパシフィコ横浜で「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」を開催した。617社/約1470小間の規模で開かれ、3日間で7万9808名が来場した。ベアリング&モーション技術(bmt)関連では以下のような出展があった。

人とくるまのテクノロジー展2025 開催のようす bmt ベアリング&モーション・テック
開催のようす

 

 出光興産は、オイルによる冷却対象をモータだけでなく、バッテリー、PCUなどその他電子機器に広げ、オイルで直接冷却する「E-AXLE and Electric Parts Cooling Oil」を披露した。特長は①e-Axle、電子機器およびバッテリーの冷却、潤滑を担う液体を1液化することで、冷却システム簡素化を実現、②e-Axleに必要とされるギヤ・ベアリングの潤滑性と高い冷却特性による省電費性を高次元で両立、③モータ、バッテリーなど電子機器を直接冷却することが可能、など。

人とくるまのテクノロジー展2025 出光興産「E-AXLE and Electric Parts Cooling Oil」 bmt ベアリング&モーション・テック
出光興産「E-AXLE and Electric Parts Cooling Oil」

 

 イグスは、「潤滑剤ゼロ」のPFAS対策として、同社のすべての固体潤滑を含有した標準すべり軸受材料イグリデュールを変更し、PTFEフリーの材料を披露した。すでにすべり軸受、リニアガイド、旋回ベアリング(ロータリーテーブルベアリング)、貼るだけですべりを改善する「トライボテープライナー」など全製品の92%でPTFEフリーおよびPFASテスト済みの代替品を提供開始。PTFEを含む基準材料に比べ性能が大幅に優れていることが確認されている。

人とくるまのテクノロジー展2025 イグス「PTFEフリーベアリング」 bmt ベアリング&モーション・テック
イグス「PTFEフリーベアリング」

 

 NTNは、独自開発した特殊熱処理技術「HA-C」を深溝玉軸受に適用した「HA-C軸受」を披露した。従来品と同等の寿命を確保しながら、軸受の外径を約15%小型化、幅寸法を約30%小型化、質量を約55%軽量化することが可能となり、燃費・電費向上を目的としたe-Axleやトランスミッションなど各種自動車の駆動装置に使用される軸受の小型・軽量化ニーズに対応する。また、燃費・電費向上に向けて、駆動装置に使用される潤滑油では摩擦抵抗を抑えるため低粘度化する傾向にあるが、潤滑油が低粘度化した環境下では、軸受の各部品同士が直接接触しやすくなるために、軸受の寿命低下や摩耗が起こりやすくなる。さらに、駆動装置内の異物が軸受に侵入して軸受を損傷させる可能性もあるが、HA-C軸受は長寿命化に加えて耐異物性と耐摩耗性も高水準で実現、これらの苛酷な使用環境にも対応できる。

人とくるまのテクノロジー展2025 NTN「HA-C軸受」 bmt ベアリング&モーション・テック
NTN「HA-C軸受」

 

 三洋貿易は、多機能摩擦試験機「MFT5000」を展示した。モジュールを交換することで、1台で多様なしゅう動試験と環境チャンバーによる高温、低温、塩水噴霧、不活性ガス中などの特殊環境試験に対応。研究開発だけでなく、さまざまな産業のニーズに対応しており、フロアスタンド型を採用し高荷重(5000N)、高回転領域(8000rpm)まで対応可能なほか、各種ASTM試験法にも準拠。インラインで白色干渉計も搭載でき、試験中、試験後の表面状態を試験直後にそのまま測定できる。

人とくるまのテクノロジー展2025 三洋貿易「MFT-5000」 bmt ベアリング&モーション・テック
三洋貿易「MFT-5000」

 

 ジェイテクトは、自動車・産業機械等において、従来、機能要件が異なることから別々の部品として組み込まれていたギヤとベアリング(軌道輪)を一体化した軸受一体歯車「JIGB®」を披露した。シャフトにベアリングを圧入している現行品のギヤシャフトは、シャフト径の制約により、ベアリングや減速機のサイズダウンが難しく、トルク損失の低減に課題があったが、「内輪一体タイプ」では、ギヤシャフトの外径に軸受軌道を追加しベアリングと一体化することでベアリングの内輪(軌道輪)が省略、ベアリング外径とユニット(軸間距離)のサイズダウン、トルク損失の低減を実現。また、ベアリングの圧入工程の省略により、顧客の生産性も向上する。一方、ギヤの内部にベアリングを組み付ける場合、組み付け時のガタにより、ギヤ全体の強度が低下する可能性があるが、「外輪一体タイプ」では、ギヤ内径をベアリングの外輪とすることにより、ギヤの傾きを低減し、ギヤサイズおよび搭載されるユニットのサイズダウンを実現。また、ギヤ内径へのベアリング圧入工程の省略による部品点数の削減も見込める。

人とくるまのテクノロジー展2025 ジェイテクト「JIGB」 bmt ベアリング&モーション・テック
ジェイテクト「JIGB」

 

 大同メタル工業は、低摩擦材料として使用されてきたPTFEと同等の低摩擦性・耐摩耗性を有し従来軸受と互換性を有するPFAS規制対応の「PFAS(有機フッ素化合物)フリー軸受」のほか、耐食性・耐酸化性に優れる水素エンジン用すべり軸受、転がり軸受と比較して、重量を93%削減、3万回転時のフリクションを77%低減できるという超高速回転e-Axle用駆動モータ向けすべり軸受などを披露した。PFASフリー軸受では、PFAS(PTFE)が付与してきた耐久性や耐熱性、耐薬品性、耐候性、非粘着性、撥水・撥油性、潤滑性、難燃性といった諸特性を、同社のコア技術である複合化技術(バイメタル化技術)とコンパウンド技術(材料設計)、トライボロジー技術(表面形状制御技術)によって実現している。

人とくるまのテクノロジー展2025 大同メタル工業「PFASフリー軸受」 bmt ベアリング&モーション・テック
大同メタル工業「PFASフリー軸受」

 

 大豊工業は、「独自のトライボロジー技術を活かした製品・製法を電動車(xEV)対応製品に応用」をテーマに、主力製品の滑り軸受やダイキャスト製品で培った基盤技術を活用して、コンパクト鍛造ラインによる「鍛造品のコスト削減」や抄造CFRPによる「軽量化に向けたCFRPの活用」、すべり軸受による「しゅう動部の摩擦・潤滑」、ヒートシンクによる「高温になる部品の冷却」、端子・バスバーによる「電気部品の接続(通電/接続)」などの現場の悩み事へのソリューションを提示した。すべり軸受による「しゅう動部の摩擦・潤滑」のソリューションとしては、転がり軸受のすべり軸受化による省スペース化や流体潤滑によるNV低減、しゅう動面へのテクスチャ追加による油量の制御、CAE解析や実機評価によるユーザーの開発サポートなどについて訴求した。

人とくるまのテクノロジー展2025 開催のようす bmt ベアリング&モーション・テック
大豊工業「しゅう動部の摩擦・潤滑のソリューション」

 

 TPRグループブースではファルテックが樹脂基材への加飾技術を紹介。「アルミの質感を持つ金属調塗装」は、基材をアルミから樹脂化して50%以上軽量化しつつ、サテンプラチナめっきからの工法変更でコスト低減を実現できる。塗装表面のアルミフレークを整列化し金属膜を生成、アルミの質感と色つやを軽量な樹脂素材で実現している。また、裏面にレーザー加工した意匠が光の透過で塗装表面に浮かび上がる「塗装表面に光意匠が浮かび上がる新加飾技術」や、超軟質Pad印刷で3D形状に追従した繊細な意匠を実現しつつ塗装レスにより30%以上のCO2削減に寄与できる「塗装レス3Dグラデーション加飾技術」を披露した。

人とくるまのテクノロジー展2025 ファルテック「塗装レス3Dグラデーション加飾技術」 bmt ベアリング&モーション・テック
ファルテック「塗装レス3Dグラデーション加飾技術」

 

 東陽テクニカは、自社開発したコンパクトサイズの油中粒子計測器「PI-1000」を展示した。潤滑油中の摩耗紛の大きさと量を高精度に捉えることで、軸受やギヤなどの摩耗状態を把握し、その交換時期を最適化できる。細かな粒子や非磁性の粒子でも測定可能な「レーザー遮光法」を採用、演算処理機能の内臓により、常時オイル粘度によって変化する流速を計算しつつ、摩耗粉の油中の落下時間によって摩耗粉の粒径をその場で演算する。振動や熱、濁りといった外的要因に左右されず、μmレベルで粒子の大きさ、数を測定できる(計測粒子範囲:5~150μm)。さらに、独自の減圧による脱泡手法で摩耗粉と誤認される可能性のある油中の泡(~40μm程度)の誤検知をなくし、数μm単位の高い精度で測定が可能。

人とくるまのテクノロジー展2025 東陽テクニカ「PI-1000」 bmt ベアリング&モーション・テック
東陽テクニカ「PI-1000」

 

 日本精工は、自動車のホイールおよびブレーキディスクに取り付けられるハブユニット軸受の端面加締め部にスプラインを適用することにより、大きなトルクを伝達することを可能とする「Face spline式HUB3軸受」を参考出展した。CVJと軸受の接触面で発生するスティックスリップ音の防止に貢献する。

人とくるまのテクノロジー展2025 日本精工「Face spline式HUB3軸受」 bmt ベアリング&モーション・テック
日本精工「Face spline式HUB3軸受」

 

 BASFジャパンは、ブレーキ液やクーラント、ポリイソブテン、潤滑油用添加剤、合成基油など電動化にも貢献する自動車向けソリューションを提示した。高性能ブレーキ液およびクーラントは、多くのOEMに採用実績があり、CO2排出量低減に貢献可能な製品も提供。ポリイソブテンOppanol®は、90年以上前に同社が世界で初めて特許を権利化、世界中でさまざまなアプリケーションでの実績を持つ。高機能合成エステルSynative®は、サステナブルで幅広い製品群を提供、自動車用途に求められる特性において優れた性能を発揮する。

人とくるまのテクノロジー展2025 BASFジャパン「潤滑油添加剤、合成基油などの自動車向けソリューション」 bmt ベアリング&モーション・テック
BASFジャパン「潤滑油添加剤、合成基油などの自動車向けソリューション」

 

 不二越は、軸受サイズを変更せずに各タイプのクリープ現象を抑制する「耐クリープ軸受」を展示した。外輪歪みによるクリープへの対策軸受としては軌道溝を多点接触化することで荷重を分散し外輪変形量を抑制する「多点接触玉軸受」を、軸受トルクが大きい場合に発生するつれ回りクリープへの対策軸受としては外輪外径に特殊コーティングを施すことでハウジングの摩耗を抑制する「外径コーティング軸受」などを提示した。

人とくるまのテクノロジー展2025 不二越「耐クリープ軸受」 bmt ベアリング&モーション・テック
不二越「耐クリープ軸受」

 

 ミネベアミツミは、電動コンプレッサーの効率的な回転を支える「電動コンプレッサー用ボールベアリング・リテーナリング」を展示した。電動コンプレッサー用ボールベアリングに求められる高い耐荷重性と低く安定したトルクの両立に対する低トルク化ソリューションを提示。従来の外径35mmを超える中径ボールベアリングは浸炭窒化処理に対応。また、可動スクロールのリテーナリングはボールベアリング部品を転用した専用品で、特殊設計・特殊形状に対応している。

人とくるまのテクノロジー展2025 ミネベアミツミ「電動コンプレッサ―用ボールベアリング・リテーナリング」 bmt ベアリング&モーション・テック
ミネベアミツミ「電動コンプレッサ―用ボールベアリング・リテーナリング」

 

 リケンNPRは、ピストンリングで蓄積した表面改質技術の新分野での適用を提案。DLC膜が耐食性にも優れることから耐食環境で用いられる金属製機械部品を保護できることや、窒化チタン(黒TiN)膜が生体親和性に優れ表面積を増やせ静電容量を約5倍アップできることから生体埋め込み型などのメディカルデバイスへの適用が可能であることなどを示した。ブースではボールねじ循環部品にDLC膜を被覆したサンプルや樹脂部品にTi膜を施したサンプルなどを展示した。

人とくるまのテクノロジー展2025 リケンNPR「DLCおよびTi系コーティング被覆サンプル」 bmt ベアリング&モーション・テック
リケンNPR「DLCおよびTi系コーティング被覆サンプル」