ベッコフオートメーションは本年7月10日、ドイツ・アウクスブルクにて開催された授賞式において、同社の創業者兼マネージングディレクターであるハンス・ベッコフが、欧州で最も歴史ある技術革新賞「ルドルフ・ディーゼル・メダル(Rudolf Diesel Medal)」を受賞したことを発表した。産業オートメーション分野での卓越した技術革新の実績が高く評価され、「最も成功したイノベーション実績(Most Successful Innovation Achievement)」部門での受賞となったもの。
ルドルフ・ディーゼル・メダルは、内燃機関の発明者として知られるルドルフ・ディーゼルの息子、オイゲン・ディーゼルにより1953年に創設された。現在は、ドイツ発明協会(Deutsche Institut für Erfindungswesen, D.I.E. e.V.)によって授与されており、「技術革新」「社会的貢献」「経済的成果」「持続可能性」などの観点から評価される、権威ある賞で、毎年、以下の4部門において表彰が行われる。
・最も成功したイノベーション実績(Most Successful Innovation Achievement)
・最も持続可能なイノベーション実績(Most Sustainable Innovation Achievement)
・最優秀イノベーション促進(Best Innovation Promotion)
・最優秀メディアコミュニケーション(Best Media Communication)
ベッコフ氏はこのうち、最も成功したイノベーション実績部門での受賞となった。
ハンス・ベッコフ氏は、1980年にドイツ・フェアルにてベッコフオートメーションを創立。1985年にPC制御という革新的なコンセプトを発表し、翌1986年に世界初となる産業用PCを市場に投入した。この技術は、産業オートメーションにおける従来の制御概念を根本から覆すパラダイムシフトをもたらした。以降、Lightbus(1989年)、バスターミナル(1995年)、EtherCAT(2003年)など、数多くの革新的な技術を開発し、産業界の技術標準を打ち立ててきた。
これらの絶え間ない革新の歩みにより、ベッコフオートメーションは現在、世界41か国に拠点を展開し、従業員数は約5300名、2024年の年間売上高は11.7億ユーロを達し、グローバル企業としての成長を遂げている。
今回の受賞は、ベッコフ氏が長年にわたりソフトウェア中心の制御技術の確立に尽力してきた背景や、ITとオートメーションの融合、高速かつ高い信頼性を誇る通信技術の開発、さらに近年ではAIを組み込んだ自律型システムの推進など、産業オートメーション分野の進歩に貢献する数々の技術革新を生み出してきたことが高く評価されたもの。また、常に「複雑な技術を、シンプルかつ効率的に」という姿勢を貫き、エンジニアリングを通じて社会に貢献しようとする強い信念も、今回の選考において重要な要素となった。
ハンス・ベッコフ氏は受賞にあたって、「この受賞は、私一人ではなく、ベッコフの全社員を代表して受賞するもの。600名を超える開発者、2000名以上のセールス担当、そして世界中のユーザーの皆さまからの貴重なフィードバックがあってこその成果と言える。“発明は楽しい”というメッセージを次の世代に伝えたい」と述べている。
ハンス・ベッコフ氏は現在、“Automation Brain”と題したプロジェクトに取り組んでおり、機械に知性や人格をもたせる、次世代の自動化技術の実現を目指している。

ハンス・ベッコフ氏(ルドルフ・ディーゼル・メダル受賞者・ベッコフオートメーション)、グンター・ヘル教授(ベルリン・シュタインバイス大学総合ビジネス・イノベーション戦略教授・ディーゼル・メダル評議会科学顧問)
写真提供:©Dominik Wagner, Eichmeister Kreativagentur