日本精工は、自動車の変速機(トランスミッション:T/M)向けに、グローバルでの生産に適した「長寿命転がり軸受」を開発した。転がり軸受の小型・軽量化を可能にし、自動車の燃費・電費向上に貢献する。同社では、本製品の売上として2023年に20億円を目指す。
自動車の燃費・電費向上を目的としたT/Mの小型・軽量化のため、T/M内で使用される転がり軸受にも同様に小型・軽量化が求められている。しかし、軸受を小さくすると耐久性が低下し、損傷が生じやすくなる。
最も多く見られる損傷形態は、潤滑油中に含まれる異物を噛み込むことによって形成された、圧痕を起点としたはく離で、このためT/M用軸受の小型・軽量化を実現するには、圧痕起点型はく離に対する耐久性の向上が重要となる。
同社ではこれまでも圧痕起点型はく離対策仕様の軸受を開発してきたが、これらの軸受は長時間かつ特殊環境での熱処理技術やオリジナル材を必要するため、海外でのT/M生産が増える中、長寿命転がり軸受の現地生産が困難という課題があった。
この課題を克服する開発品の特徴は以下のとおり。
1. グローバルで調達が容易なISO規格(国際標準規格)鋼をベースに材料を開発、現地調達を可能にした。
2.長時間かつ特殊環境での熱処理技術を必要とせず、温度コントロールで必要な寿命を確保した。熱処理効率を向上させる本技術の確立により、生産時の使用エネルギー削減を可能にした。
3. 標準軸受に対し圧痕起点型はく離寿命が1.5倍に延びるため、小型・軽量化を可能にする。標準軸受に比べ開発軸受は、約20%の軽量化を実現できるほか、長寿命軸受のラインナップの拡充により、顧客の要望に応じて最適な軸受の選定が可能になる。さらに、圧痕起点型以外のはく離(材料内部の非金属介在物と、材料内部に侵入した水素の影響によるはく離)に対しても、長寿命化を実現する。